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198話 王都での出来事 -色々とありますね-

新聞屋の嗅覚の鋭さは凄いですね。

 亮二が領地持ちになった記事が書かれた新聞は歴代売り上げ記録を大幅に更新した。王都の住民は亮二の記念すべき偉業の詳細を知る為に、いつものようにお金を出し合って共同で購入するのではなく、自分用として新聞を購入するのだった。


「色々と書かれてるね。“ドリュグルの英雄”が遂に領地持ちの貴族となる!陞爵されてから、わずか3ヶ月で子爵から伯爵、そして領地持ちの伯爵へ!英雄が打ち立てた数々の功績に『むしろ遅い』との声も。王室関係者H公爵から詳細極秘情報を入手!”って!王室関係者H公爵ってハーロルト公爵しかいないじゃん!なんで新聞屋に情報を流してるの!」


「ハーロルト公爵も嬉しいと思いますよ。教皇派からしたら完全勝利ですからね。これまで五分五分と言われていた勢力図が、教皇派6割、貴族派1割になりましたからね」


 亮二が新聞を読みながらツッコんでいると、メルタがお茶を差し出してきた。亮二はお茶を受け取りながら「貴族の事に詳しいね」と尋ねるとメルタは笑いながら答えた。


「全部、クロちゃんからの情報ですよ。ハーロルト公爵経由の情報ですので、信憑性は高いですね」


「ちなみに、合計しても7割にしかならないけど、残りの3割は?」


「中立派や国王派ですね。クロちゃん情報では両方共、教皇派に好意的だそうです」


 メルタの話に亮二は「貴族派は壊滅状態だね。やけになって変な動きをしなければいいけど」と呟きながら、メルタとお茶を楽しむのだった。


 ◇□◇□◇□


「なぜ、このような事態になっているのだ?我等の影響力はどこに行った?500年に渡ってサンドストレム王国を導いてきた我等がなぜこのような肩身の狭い思いをせねばならん!」


「これも、新興貴族のユーハンが教皇派に属するようになってからではないのか?」


「むしろ、リョージなる下賤の者が陞爵されてからマルセル王は変わられたのではないか?」


 高級店とは言えないが、王都で有名な料理店に集まっていた10人程の貴族達は不満気な顔で酒を飲んでいた。貴族派と呼ばれる者達で、本来なら予約が必要な場所で豪勢な食事を堪能しながら高価なワインを傾けていたはずだった。


「今までなら多少の無理を言えばどのような店でも入れたものを!なにが『ご予約のお客様を優先させて頂きます』だ!我等を馬鹿にするのも大概にしろ!」


 現在の王都は亮二の話題で賑わっており、“ドリュグルの英雄”が教皇派と呼ばれるグループに所属している事も、教皇派と貴族派が勢力争いをしている事も、貴族派に所属していた貴族が立て続けに不祥事を起こしている事も、エレナ姫と亮二が婚約間近な事も、婚約によってマルセル王が教皇派を優遇するであろう事も、王都に暮らす人々の話題になっていた。


 教皇派の良い噂が新聞で流されるたびに、今までは報復を恐れて貴族派に従っていた者たちも、貴族派の影響力が激減している事と、これまでの傲慢な態度が重なって目に見えて反抗するようになっていた。


「このような場所では、由緒正しい我等の血筋が汚れてしまうではないか!なんだ!この料理は!酒は!もっと良い物はないのか!」


「申し訳ございません。このような場所ではこれが精一杯でして」


 貴族の1人が料理を地面にぶちまけ、店主を呼んで怒鳴りつけると周りの貴族も当然のように店主に対して糾弾を始めた。店主は平身低頭で頭を下げながら給仕の女性に片付けるように伝え、新しい料理を用意するように指示しようとすると「もうよい!」と再び怒鳴り声が店に響いた。


「こんな店に二度と来るか!もっと、まともな料理や酒をようするようになってから店を開け!我らはもう帰るので馬車を呼べ!」


「あ、あの。お帰りとのことでしたらお代金を…ひぃぃ」


 貴族達が帰ろうとするのを聞いた店主が料金の請求をすると、一人の貴族が剣を抜いて店主の首筋に突きつけて冷酷な声で話し始めた。


「おい。我らに対して、このような不味い酒や料理を出して金まで取る気か?我らがこの場所に来たことを名誉に思って、最低でも人が食べられるものを出せるようになれ。それとも我が剣の錆になるか?名誉なことだぞ?」


「い、いえ。お代は結構です。ご迷惑をお掛けしました」


 店主が青い顔で謝罪すると、貴族は鼻をならして剣を引くと「全く時間の無駄だったな」と大きな声を出しながら、他の貴族達とともに店を出て行くのだった。恐怖で青くなっていた店主の顔が怒りで赤くなったタイミングを見計らったかのように男性が声を掛けてきた。


「店主。大変でしたな。あの人達はいつもあんな狼藉を働いているのですか?」


「いや、あいつらは急にやって来て、『空いてるな!』と団体で酒や料理を頼んだ挙句に『不味い酒や料理を出しおって!』と暴れた挙句に金も払わないで出て行きやがったんだ!誰なんだよ!貴族様かなにか知らねえが偉そうにしやがって!」


「初めてきた店であの狼藉か。ちなみに、あいつらは貴族派らしいぞ。最近、リョージ伯爵やハーロルト公爵に絡んでは墓穴を掘って自滅しているから、ヤケ酒でも飲みに来たんじゃないのか?」


 男性は懐から新聞を出して内容の説明を呆れた顔で話し始めると、店主や周りにいた客達に新聞の内容の説明を始めた。亮二の活躍を説明した男性が、エールを飲んで一息つくと店主や客達から拍手喝采が起こり、気を良くした男性が大きな声で叫んだ。


「よし!俺が今日の支払いを持とう!実はこの記事を書いたのは俺なんだ!リョージ伯爵が王都にやって来てから、俺たちが出す新聞は作れば作るほど売れているからな!店主!今日の事も記事に書いていいか!」


「いや、ちょっとそれは。また、あいつらが怒鳴りこんでくるかもしれないだろ」


「心配するな!俺はハーロルト公爵と知り合いだから安心しろ!もし、嫌がらせを受けたらハーロルト公爵に連絡して対応してもらう!貴族ってだけで威張りくさってる奴らに俺たちが天罰を下してやろうぜ!」


 男性の話に周りの客が大いに盛り上がり、話を聞いている内に店主の目にも闘志が燃え上がったかのように爛々とし「その話乗った!」と大きな声で叫ぶのだった。

3日後に販売された新聞に貴族派の狼藉騒動が載っていました。

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