186話 ネイハムへの個人授業1 -しっかりと教えますね-
ネイハムと1週間の特訓を始めます!
亮二の屋敷についたネイハムはカレナリエンとメルタを紹介され、彼女たちから食事の時間について説明を受けた。
「食事は1日3回で、朝は学院に出発する馬車が出るまでに食べてください。昼食は屋敷で作ったのを持って行きます。嫌いな食べ物は無いですよね?夕食はリョージ様と一緒に食べて頂きます」
「いや!そこまでしてもらわなくても大丈夫です!外で食べるか家に帰って食べますので!」
「駄目です。リョージ様より『1週間はネイハムも一緒に食事をするからよろしく』と言われていますので、ネイハム様には3食きちんと当屋敷で食べて頂きます」
メルタから食事についての説明を受けたネイハムは断ろうとしたが、『リョージ様から一緒と言われていますので』と却下されるのだった。その後、寝泊まりする部屋やトイレや風呂の説明を受けたネイハムは、自分が紹介した時と屋敷の内装が全く変わっている事と、置かれている美術品の一つを売るだけでも一般人が当面は暮らしていける金額になる逸品が置かれているのを見て、亮二が正真正銘の貴族で有ると感じ自分とは違う世界に生きている人だと感じるのだった。ただ、その日の夕方に著名な美術品だと思っていた物が亮二が暇つぶしに作った品であると説明を受けて驚愕の顔になっていたが。
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和やかな雰囲気のまま夕食が終わって、亮二とネイハムは屋敷の離れにある小屋にやってきていた。亮二は魔石をストレージから大量に出すとネイハムに手渡しながら問いかけた。
「じゃあ、さっそく特訓に入ろうか!覚悟は出来てる?」
「はい!頑張りますのでお願いします!」
「本当に俺の特訓にどこまでも付いて来る覚悟は出来たか?」
「はい!もちろんです!」
「本当に?」
ネイハムは亮二からの質問に気合を入れて答えていたが、亮二と目が合った瞬間に硬直してしまった。亮二の雰囲気がいつものおちゃらけた感じと違い、目を合わすだけで涙が溢れて来そうになっていた。二つ名で語られているドリュグルの英雄が魔物と対峙している時の目であると説明されたら10人が10人とも納得する威圧感だった。
「ネイハム」
「は、はい!」
「俺が言うことは『はい』か『Yes』か『分かりました』以外は認めない。そして、言葉の最後には『サー』と付けろ。分かったな?」
「え?それって…「分かりました」、いや…「分かりました」。あの…「分かりました」。リ「分かりました」。わ、分かりました!サー!」
「よし!それでいい。これから忘れないようにしろ!俺の事は軍曹と呼べ!」
「え?ぐんそう?それって…「分かりました」。わ、分かりました!ぐんそうと呼ばせて頂きます!サー!」
ネイハムが違う言葉を紡ぎ出そうとするたびに、亮二から「分かりました」「はい」「Yes」と会話の途中でかぶせられ、強制的に「分かりました」「サー」と言わされている内に、自然と背筋も伸びて大声を出すようになるのだった。亮二はネイハムがスムーズに自分の言葉に対して「分かりました!サー!」と反応する事を確認すると威圧感はそのままで個人授業に入るのだった。
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「よし!では授業を始める!今日の授業は先ほど渡した大量の魔石に魔力を注ぎ込んでみろ!」
「Yes!サー!」
亮二の言葉に大声で反応したネイハムを見ながら大きく頷くと、亮二は続きの説明を始めた。
「今、手に取った魔石はキノコのお化けの魔石である!お前は属性も無ければ、魔力もキノコのお化けの魔石よりも小さい事を自覚しろ!自覚した上で、魔力を魔石に注ぎ込め!」
「分かりました!サー!」
「魔力が無くなれば、ここにあるマナポーションを飲んで回復させろ!そして体力が無くなってきたと思ったら、こっちのポーションを飲め!両方とも俺が作ったポーションで、冒険者ギルドでは取り合いになるほどの逸品だ。決して遠慮はするな!遠慮する暇があるなら1個でも多くの魔石に魔力を注げ!分かったな!」
「Yes!サー!」
ネイハムは亮二から教えられた敬礼をすると、机に座って置かれている大量の魔石を手に取って魔力を注ぎ始めた。亮二はネイハムの魔力の流れを感じながらインタフェースを起動させると、ネイハムのステータスが魔力枯渇注意状態である事を確認し、鋭くネイハムに向かって注意を飛ばした。
「おい!魔力が枯渇仕掛けたならマナポーションを飲めといっただろ!俺の言った事が聞こえなかったのか!」
「いえ!自分魔力がどのくらいで枯渇するか判断が付かないんです!サー!」
「魔力を放出していて、身体がふらつく事があればそれが枯渇状態だ。今の感覚を忘れるな!マナポーションを飲み終わったらすぐに続きだ!普通にしていてはバカ貴族のバカ息子に追いつけないぞ!悔しさを忘れるな!」
「はい!サー!」
ネイハムが魔力を注ぎ始めて30分が経っていた。魔石の周りには飲み干されたマナポーションが十数本転がっていたが、魔力が注ぎ込まれた魔石の数は3つほどだった。あまりの効率の悪さを見かねた亮二はネイハムの手を取ると自分の魔力をネイハムの手を通して魔石に注ぎ始めた。
「いいか、お前に分かるように魔力を魔石に注いでいる。この感覚を意識しながら同じように魔力を注いでみろ。お前は魔力が少ないのではなくて、魔力の注ぎ方が雑すぎるんだ!魔石を指先で持って、指先だけに魔力を集めるイメージをしろ!」
「あっ!さっきと違って魔力が指先に集まるのが分かる!」
ネイハムは魔力を注ぐ際に体全体から魔力を放出しており、無駄に魔力を拡散している事を確認した亮二は指先に魔力を集めるイメージをするように伝えるのだった。
これで、魔力を出せる事が分かったようです。