170話 報酬の使い道 -どう使いましょうね?-
かなりの金額が手に入りました。
亮二達が“2つ首ドラゴンの財貨箱”の中身を確認していると、エリーザベトとオルランドが手を繋ぎながらやってきた。
「僕たち、結婚する事になりました!」
「えぇ!け、け、結婚ですか!結婚の前に、まずはお付き合いからとお願いしたはずですが…?」
オルランドの突然の宣言に驚きの表情をしたエリーザベトだが、オルランドのにやけ顏を見てからかわれている事に気付くと、手を振りほどいてオルランドの背中を叩き始めた。
「まずはお付き合いからってなったけど、絶対に結婚するからね。エリー」
「ま、まずはお付き合いをして!お互いの事をしっかりと理解してからの話ですわ!けっ、結婚をするかどうかを決めるのはそれからですわ!お父様の許可も貰っておりませんし!まずはお父様との話が先ですわよ!分かってますか!オルランドさん!」
「もちろん分かっているよ。それと名前はオルと呼んでって、約束したよね?エリー」
オルランドの結婚宣言に顔を真っ赤にしながらエリーザベトが反論すると、そんな様子を嬉しそうに眺めながらオルランドが「オルだよ」と目線を合わせて伝えるのだった。目線を合わされたエリーザベトは顔だけでなく全身が赤くなったのではと思うほど恥ずかしがりながら、オルランドにだけ聞こえるような小さな声で「はい。オルさん」と応えるのだった。
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「デレた」
「デレたね」
「エリーザベトさんもデレるんだね」
「え?なに?このピンクな空気をいつまで吸い続けたらいいの?」
亮二達のからかい混じりの問いかけで、エリーザベトは自分の呟きが全員に聞こえている事に気付くと、慌ててオルランドの背後に隠れてしまった。オルランドは背後に感じる恋人の暖かさに頬を緩めると、嬉しそうに亮二に話しかけてきた。
「で、どんな感じなの?“2つ首ドラゴンの財貨箱”の中身は?」
「ビックリなくらいに金貨と宝石が入っているよ。みんなで山分けしようと思ったんだけど、『討伐したのはリョージ君とオルランド君だから!』と言って受け取ってくれないんだよ。それで悩んでるんだけど、オルランドは何かいい案を持ってない?」
「当たり前でしょ!“2つ首ドラゴン”なんて、この辺では名前くらいしか出て来ない魔物なのよ!それを簡単に討伐するなんて“ドリュグルの英雄”のリョージ君しかいないじゃない!オルランドの強さの理由は分からないままだけど。そんな強力な魔物の報酬を私達が貰ったら、周りから何を言われるか分からないじゃない!」
亮二とオルランドが話し合っていると、ルシアが間に入ってきた。ルシアのテンションの高い言葉にルシア以外の一同も大きく頷くのだった。
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「で、どうしようか?“2つ首ドラゴンの財貨箱”以外にも、俺とオルランドが上の大部屋から持ってきた金貨2300枚もあるもんな」
「そうだね。2300枚も有れば裕福な市民でも、孫の代まで暮らしていけそうだもんね。それに“ミスリル鉱石”に“ドラゴンの魔石”でしょ。魔道具2つは換金しないから置いといたとしても、“2つ首ドラゴンの財貨箱”にも同じくらい入っているんじゃない?」
「そう言えば、シャルロッタ先生が『“初級探索者ダンジョン”の中で手に入れた物は1割を学院が徴収します』って言ってたよな?全部の価値が金貨5000枚として500枚が学院に徴収されるな。残りの4500枚位をどうやって分けようか?」
「それでしたら貧民対策をされるのはいかがですか?リョージさんは名誉伯爵になられますし、貴族の義務として恵まれない者に対する施策をする必要がありますわ。これだけの金額が有れば大々的な行事として出来るのでは?」
一同が使い道について首をひねりながら考えていると、オルランドの背後からエリーザベトが顔だけを出して提案をしてきた。オルランドは嬉しそうにエリーザベトの頭を撫でながら、亮二に対して「それでいこうよ」と周りに賛同を求めながら提案を薦めて来るのだった。
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「よし!じゃあ、学院に徴収される金額を除いたお金で街道整備とかをしよう!賛同してくれる領地を探して宿場町を発展させるのも良いね。許可はハーロルト公にもらうとして、細かな計画はエリーザベトさんとオルランドに任せていい?」
「任せといて!許可もハーロルトに僕が会う時にもらっとくよ!エリーとの愛の力でリョージ君がびっくりするような計画を立てるから期待しておいて!」
「あ、愛の力って。ま、また、オルランドさんはそんな事を言って!私も公爵令嬢です。喜んで貴族の義務を果たさせて頂きますわ!」
「よし!愛の力に任せた!他のみんなもお願い事をするけど協力してくれるよね?」
「「「もちろん!」」」
オルランドとエリーザベトに作業の7割くらいを押し付け、残り3割をここにいるメンバーにやらせる算段を付けた亮二は、満面の笑みを浮かべながら「他に何をしよう?」と一番楽しい企画立案部分を考えるのだった。
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「お帰りなさい。みなさん一緒に帰ってきたのね。今回のダンジョンアタックはどうでしたか?得るものは沢山ありましたか?」
「はい!エリーと結婚を前提に付き合う事になりました!」
「ちょっと!シャルロッタ先生に何を言ってるんですの!申し訳ありません。無事に“2つ首ドラゴン”を討伐して“初級探索者ダンジョン”をクリアしましたわ!」
「その言い方だと、エリーがクリアしたみたいじゃないか。シャルロッタ先生。クリアしたのはリョージ君と、少しだけ手伝った僕です」
ダンジョンの入口で待っていたシャルロッタは無事に戻ってきた亮二達に成果を問い掛けると、オルランドから「付き合う事になりました!」と返事があった。オルランドの返事に混乱したシャルロッタをみて慌てたエリーザベトが補足説明を行った。エリーザベトから補足説明を受けたシャルロッタは「え?えっ?クリア?」とさらに混乱しているとオルランドが「リョージ君と僕でクリアしました」と伝えるのだった。
そりゃあ、シャルロッタ先生も混乱するよね。