165話 ダンジョンでの大規模戦闘3 -続きがありましたね-
やっと一息つけると思ったんですが…。
突然、大部屋に無機質な女性の声が響き渡った。
「大量魔物クエストをクリアされましたので、チャレンジ部屋に挑戦することが出来ます。挑戦される場合は皿に乗っている金貨か宝石を欲しいだけお持ち下さい。ただし金額に見合った魔物が現れます。今までの最高金額は登録者“アマデオ=サンドストレム”チーム5名での宝石5個と金貨300枚となります。お受けになる場合は階段を降りて下さい。観戦される方は階段横の扉から観覧席にお越しください」
「質問は出来る?」
「質問受付モード開始。ご質問をどうぞ」
無機質な女性が説明を始めたが、詳細がよくわからないので亮二は質問したくなった。
「参加人数は何名まで?金額によって魔物の強さが変わる目安は?それと声が“盤面の森”の時と同じだけど一緒の人?」
「ご質問に回答します。参加人数は5名まで。金額が金貨1000枚でドラゴンが現れます。“盤面の森”とは同時期に作られましたので姉妹と思って下さい」
「“初級探索者ダンジョン”の割には最後が強すぎない?」
「選ばれる金額で強さが変わりますので、“初級探索者ダンジョン”の名称に偽りは御座いません。ただ、それだけでは物足りなくなるとの事で作成者様が特別モードを作られたのです。他にご質問はございますか?なければチャレンジ部屋へ挑戦されるかお決め下さい」
無機質な女性の声に満足した亮二は「5分だけ時間頂戴」と告げると、一同に振り返って話し始めた。
「どうする?俺は別のダンジョンで建国王“アマデオ=サンドストレム”の記録を更新してるんだよ。だから、やっぱり“初級探索者ダンジョン”でも張り合って見たいんだよね。俺としては金貨1000枚くらいを持って入ってドラゴンを倒そうと思うんだけど皆はどうする?」
「え?リョージ君は挑戦するの?しかもドラゴンを相手に?私はやらないよ」
亮二の問い掛けにルシアは拒否すると、マテオ、マイシカ、青の勲章コンビは同じように参加拒否を表明してきた。そんな様子を黙って眺めていたオルランドは笑いながら参加表明を行うと、驚いた一同はオルランドに視線を集めた。オルランドは特に気にする事なくエリーザベトに対して参加の確認を行った。
「僕は参加するよ。エリーザベトさんはどうする?」
「わ、私はどうしましょうか。それは置いといて、オルランドさんは参加されて大丈夫なのですか?失礼ですがドラゴン相手に戦える実力は無さそうですが?」
「本当にはっきり言うね。でも、僕はエリーザベトさんと違って周りを見れるし、自分の実力も把握しているから大丈夫だよ。そうだ、リョージ君が持っている”コージモの剣”を貸してもらっていいかな?」
エリーザベトからの返答にオルランドは苦笑しながら強烈な返事を返すと、亮二に対して”コージモの剣”を貸してくれるように頼んでくるのだった。
◇□◇□◇□
「え?別にいいけど、本当に参加するんだよね?ドラゴンが相手となると俺もサポートに回れないから自己責任で来てくれるよね?」
「もちろん。ただ、今持っている剣じゃ、ドラゴン相手に戦えないから。普段持っている剣だったら大丈夫だったんだけど」
「はい、じゃあ渡しとくね。オルランドはドラゴン相手に戦える剣を持ってるの?」
亮二とオルランドのやり取りを呆然とした表情で聞いていたエリーザベトは、急に我に返るとオルランドに向かって話し始めた。
「ちょっと!オルランドさん!『私と違って』とはどう言う意味ですか!」
「え?そのままの意味だと思うけど?自業自得だと思わない?どれだけ言っても聞く耳持たなかったよね?エリーザベトさんが強力なリーダーでも、1人でなんでも出来ると思っている時点で駄目なんだよ。僕から見たらエリーザベトさんは”単なる世間知らずのお嬢様”でしかないからね」
エリーザベトが顔を真っ赤にしながら文句をオルランドに伝えると、オルランドから強烈な一撃が返ってきた。最初はキョトンとしていたエリーザベトだったが、オルランドに言われた意味を理解すると、徐々に涙目になり観覧席へと走っていった。
エリーザベトが走っていった姿を見たルシア達は、非難の目をオルランドに向けながら観覧席に向かっていった。最終的に大部屋に残ったのは亮二とオルランドだけであり、亮二は“ミスリルの腕輪”を取り出して装着するとオルランドに話しかけた。
「で、エリーザベトさんに言った言葉の本当の意味は?」
「え?別にエリーザベトさんがドラゴン討伐に参加すると、かなりの確率で死ぬと思ったから強めの言葉で諦めさせただけだよ」
「後でちゃんと誤解を解いといてくれよ。エリーザベトさんチームの崩壊なんてゴメンだぞ」
「それは大丈夫。僕は彼女に対して多数の貸しがあるからね」
エリーザベトに対するオルランドの反しの理由が分かった亮二は苦笑すると、皿に乗っている金貨を持って階段を降りていくのだった。
◇□◇□
亮二とオルランドが階段を降りた瞬間に階段は消え去った。チャレンジ部屋の大きさは上階にある大部屋と同じくらいの大きさであった。観覧席は3m程の高さにあって、ガラスがはめ込まれたような外観をしており、防音になっているのか中の声は全く聞こえてこなかった。
「おぉ、闘技場みたいだね」
「リョージ君は見た事あるの?」
亮二の呟きにオルランドが反応すると、亮二は「俺の国で似たようなのを見た事がある」と返事をした。オルランドが何か言おうとした瞬間に奥にある扉が開くと、今まで見たことのないような魔物が姿を表わすのだった。
「おぉ!なにあれ?見た事が無いんだけど?オルランドは見た事ある?」
「いや、僕も見たことはないな。でも、文献では読んだ事がある。あれは”2つ首ドラゴン”だね」
「やっぱり1つ首のドラゴンより強いのかな?」
扉から出て来た“2つ首ドラゴン”の咆哮が終わるのを待って亮二がオルランドに話し掛けると、オルランドから魔物の名前が返ってきたのでインタフェースを起動して検索すると“2つ首ドラゴン”の情報が表示された。
- 2つ首ドラゴン –
主に魔大陸に生息するドラゴンの一種である。ブレスを吐くのは片方だけであるが、俊敏性や防御力は通常のドラゴン種よりも高く、連携して攻撃しているために討伐は困難とされている。肉は上質であり王侯貴族への贈答品として最高級品であると言われている。討伐ランク【A】
「ねぇ、オルランド。“2つ首ドラゴン”の討伐ランクだけど、【A】って事はないよね?」
「よく知ってるね。リョージ君が変に緊張したら駄目だと思って言わなかったんだけど」
「うぉい!システムに質問!なんで高ランクの魔物が出てるんだよ!金貨1000枚ならドラゴンじゃないの?」
亮二の叫び声に無機質な女性から返事が返ってきた。
「質問にお答えします。現プレイヤーが地下に持ってこられた金額は金貨2300枚相当になります。ですので、“2つ首ドラゴン”で問題は有りません」
「ごめん、リョージ君。地下に降りる時に魔石を適当に掴んできたんだ。“ドリュグルの英雄”の力が見たくってね。勝った時にもらえる賞品で僕の分があればリョージ君にあげるから勘弁してくれる?」
無機質な女性からの答えに捕捉するようにオルランドから笑顔で告白された亮二は、オルランドに対してなにかを言おうとしたのを諦めると“ミスリルの剣”に【雷】属性を二重掛けにすると“2つ首ドラゴン”に向かって走っていくのだった。
オルランドのキャラがつかめない…。