156話 初日の成績発表 -評価は気になりますね-
異世界に来ても評価は気になります。
教室に戻ったシャルロッタは亮二達に暫く待つようにと伝えると、カレナリエンとマルコを連れて教室から退室した。教室にいても特にする事が無く、暇になった生徒達は初めてのダンジョンへのアタックでテンションが高いままに、戦闘の内容や部屋についての話を始めた。
「ところで、リョージ君の所は何で進みが遅かったの?リョージ君が居るから地下2階まで進んでると思ってたんだけど?」
「あぁ、それは俺が戦ってないからな。4人で戦闘してたから、あんまり進めてないんだよ」
「え?リョージ君は戦っていないの?何でまた…「分かりましたわ!私に負けた時の言い訳として戦ってないのですね!」ちょっと、エリーザベトさん。僕が話している時に割り込んで邪魔をしないでくれる?聞いてよ!リョージ君。今日の進み具合なんだけど、エリーザベトさん1人で敵を全部倒しちゃったんだよ。結局、僕達は何もしてないから疲れてすらいないんだよね」
オルランドが亮二と話していると、エリーザベトが横槍を入れてきた。途中で会話を遮られたオルランドは眉をしかめて窘めると、エリーザベトが1人でダンジョンを攻略した事を亮二に告げて不満を告げるのだった。
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「当たり前じゃないですか!私が前面に出ることで皆さんは楽が出来たんですから良いじゃありませんか!」
「え?本当にエリーザベトさんが1人で攻略しちゃったの?さらに下層になって敵が強くなったらどうするの?やっぱり1人で頑張るの?」
エリーザベトの強気な発言に亮二が呆れたような顔で問い掛けると、エリーザベトはムキになったように反論をしてきた。
「何か問題が有るんですか?先に進むのが駄目だと仰るんですか?ご自分が進めなかったからといって、そんな事を言わないで欲しいですわ!」
「いや、そうじゃなくてね。俺が言いたいのは…「はい!皆さん!結果が出ましたよ」」
亮二に「1人でやって、この先は大丈夫?」と言われたエリーザベトは亮二に向かって激高すると、食って掛かるように反論を行った。あまりの勢いに辟易しながら亮二が答えようとしたタイミングで、シャルロッタがマルコとカレナリエンを連れて教室に戻ってきたので遠巻きに亮二とエリーザベトを眺めていた生徒達は慌てて着席し、エリーザベトも亮二を睨みつけた後で着席をするのだった。
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「何か揉め事があったんですか?」
「いえ、大丈夫ですよ。特に問題ないよね。リョージ君」
シャルロッタがざわついていた事について教室に残っていた生徒達に質問したが、オルランドから特に問題がないとの返事が返ってきた。釈然としなかったシャルロッタはさらに質問をしようとしたが、亮二からも「大丈夫ですよ。ちょっと、ダンジョンでの話に盛り上がっただけですから」と言われたため無理矢理納得すると、ダンジョンでの成績を伝えるために教壇に立って「じゃあ、発表しますね」と伝えるのだった。
「今回は初めてのアタックで皆さん緊張していたと思いますが、無事に戻ってこられたので先生としてはホッとしています。次回からはマルコさんやカレナリエンさんのサポートは無いので、皆さんは今日以上に注意をする事を忘れないで下さいね。では、今回の最優秀生徒さんを発表します」
シャルロッタの言葉にエリーザベトは自分が呼ばれるものと思って胸を張っており、亮二は誰になるかによって“お願い事”が変わるので戦々恐々としていた。そんな亮二の様子をマルコはニヤニヤと笑いながら、カレナリエンは微妙な顔をして眺めていた。
「今日の優秀生徒さんはロサさんです!おめでとうございます!来週も優秀生徒さんを決めますので頑張って下さいね。マルコさんとの約束なのでロサさんはリョージ君にする“お願い事”を考えておいて下さい。あまり無茶な事を言ったら駄目ですよ」
「有り難うございます。冒険者をしていたので優秀生徒として表彰されるのは心苦しいですが」
「そんな事は無いですよ。魔物との戦闘を評価しての結果では有りませんので安心して下さい。ロサさんの評価は“詠唱短縮”と“魔法を2連で撃ったこと”です。どのように短縮が出来たのか、どうやって2連で魔法を撃つのかを後日で結構ですので、他の生徒さんに教えてあげて下さいね」
「分かりました。ただ、このやり方を教えてくれたのはリョージ君ですので、彼にやり方を聞いたほうが良いのでは?」
シャルロッタから表彰されたロサは嬉しそうにしながらも、教育については自分でなく亮二がするようにと推薦するのだった。
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「先生! 詠唱短縮が出来るなんて聞いた事も有りませんわ。本当にそんな事が出来ると仰られますの? それと、私達が記録した1階の最深部までの成績は評価されなかったのでしょうか?」
シャルロッタに説明を求めるようにエリーザベトが発言したのを、マルコが苦笑しながら話し始めた。
「評価出来ると思うか?お嬢ちゃんは単に最短記録を更新したってだけで、仲間と一緒に行動した訳じゃなかったろ?あれは『私がどれだけ凄いか見ていなさい!』としか見えなかったぞ」
「貴方は何も言わなかったじゃないですか!」
「当たり前だろ。俺はサポートしながら試験官もしてたんだぞ?何も見ていないシャルロッタ先生がどうやって評価をつけるんだよ。俺達が両方の様子を見て、評価を決めたんだよ。ちなみに、お嬢ちゃんの評価は真ん中くらいだぞ?次は頑張れよ」
マルコの言葉にエリーザベトは真っ赤な顔で反論したが軽くあしらわれて、愕然とした表情のままで着席するのだった。
エリーザベトさんが次でも無茶をしないといいんだけど。