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152話 謁見の間での一コマ -何も決まりませんね-

早く帰って明日のダンジョンアタックに備えたいんですけどね。

「では、陞爵の件に付いてはこれで終わる。王は一時退席されるが、戻られるまではリョージ子爵とライナルトとユーハン伯爵は残るように」


 ハーロルトから告げられた3名は首を傾げながら、その場に残った。微妙な静寂の中で居心地の悪いライナルトは亮二に対して話しかけた。


「軍曹。なぜ私も残る必要が?物凄く居心地が悪いんですが。転移魔法陣の話ならしましたよね。残りは報告書が必要だし。そう言えば、なぜさっきは脛を強打されたんですか?」


「ライナルト。少しは落ち着けよ。脛を強打したのは、ライナルトが完成まで半年を訂正しようとしたからだよ。確かに頑張れば1ヶ月では出来るだろうけど、そんな簡単に出来上がるって分かったら、あちこちから注文が入って研究どころじゃなくなるぞ」


 ライナルトとリョージが話していると、ユーハンとマルコも会話に参加してきた。


「なら私達は何故残っているのか?」


「ユーハン伯は俺の寄親だからじゃないですか?マルコはツッコミ担当でいないと会話が終わらないからでしょう」


「確かにそれは困りますよね」


「おい!誰がツッコミ担当なんだよ!何回も言ってるが、リョージと会うまでは誰からもツッコミ担当なんて言われた事はないからな!ライナルト主任教授も乗っかってきてんじゃねぇ!」


「確かにマルコはリョージが来るまでは、皮肉を言いながら、相手を煙に巻いてニヒルに笑う方が多かったよな。自業自得か」


「こら!ユーハンもしれっと乗っかってんじゃねぇ!誰がニヒルに笑ってたんだよ!俺はそんな事したことねえからな!」


 4人で掛け合い漫才をしていると国を動かす5人が入ってきて、「何やら楽しそうじゃな」と語りかけてくるのだった。


 ◇□◇□◇□


 謁見の間に入ってきた5人、マルセル王にハーロルト、宮廷魔術師ヘルマンに騎士団長のテオバルト、枢機卿ラルフが護衛の騎士も連れずにやって来た。


「またですか。今度はどうされるんですか?魔族の国でも攻めるおつもりですか?」


「はっはっは。確かにリョージが居ればそれも叶いそうだな。だが、今の魔王は人類に対して攻めてこないと通知が来ておる。もちろん、真に受けてはおらんがな」


「亮二達をここに残したのは、転移魔法陣の扱いについてだ。ユーハン伯爵は亮二の寄親だから残ってもらった。マルコについてはツッコミ担当だからだ」


「うぉい!そんな理由で残らされたのか…んですか!」


 亮二の呆れたようなセリフにマルセル王が嬉しそうに答え、ハーロルトが残ってもらった理由の説明をした。マルコについてはツッコミ担当と言われて、思わずツッコもうとしたが相手が教皇派の重鎮である事をギリギリで思い出して途中で敬語に変えていた。


「無理しなくていいんだよ。マルコ。昔の偉い人も言っていたぞ。『我慢は身体に良くない』って」


「うるせえよ!何が悲しくてお偉いさんにツッコミをしないといけないんだよ!そもそも俺はツッコミ担当なんてもんじゃ無いんだよ」


 亮二からフォローにもなっていないフォローが入ったが、マルコからすれば火に油を注がれているようにしか感じないのだった。


 ◇□◇□◇□


「マルコがツッコミ担当かの議論は今度改めて場を設けるとして、今日は転移魔法陣について話をさせてもらおう。謁見の間では半年後に完成と言わせてもらったが、実際の所は1ヶ月と聞いたが真か?」


「そうですね。全体の9割をライナルトが作成するので、ライナルトが今している主任教授としての仕事を放棄して作成に専念すれば1ヶ月となりますね。ただ、彼には無詠唱の研究をしてもらいたいので、転移魔法陣だけに掛かりっきりは遠慮願いたいのですが」


「む、無詠唱じゃと?それは詠唱無しで魔法を唱えるという事か?そんな事が出来るのか?」


 マルセル王の問い掛けに亮二は1ヶ月でも可能だが、無詠唱の研究を始める為に時間の融通を付けて欲しいと願いでると、5人から驚愕の表情が返ってきた。


「リョージ殿!それは簡単に出来るものなのですか?」


「え?」


「その無詠唱についてですよ!無詠唱の凄さを理解しています?歴代の大魔法使いと言われた方達でも出来なかった偉業なんですよ!」


「え?でも俺出来ますよ?」


 宮廷魔術師のヘルマンが代表する形で亮二に質問したが、亮二からは軽い返事が返ってきて「見てみます?」との言葉と同時に目の前に”ウォーターボール”を出して固定するのだった。


 ◇□◇□◇□


 亮二が無詠唱で出した“ウォーターボール”に一同が釘付けになっていると、マルコが亮二の後頭部を叩いた。


「痛っ!なにすんだよ!」


「だから、毎回言っているじゃないか。お前の常識が俺達の国で常識とは限らないって。見てみろ、お偉いさん方の顔を唖然レベルじゃないぞ」


 亮二とマルコがやり取りをしていると、意を決するようにヘルマンが話し掛けてきた。


「その、リョージ子爵。これは?」


「“ウォーターボール”ですよ。威力を最低限に抑えて固定していますので、触っても大丈夫ですよ」


 ヘルマンの質問に亮二が答えると、ヘルマンは恐る恐る“ウォーターボール”に近付いて触ると、「冷たい!」と感想を口ずさみながら急に頭を”ウォーターボール”に突っ込んだ。


「うぇぇ?マイシカみたいな事をした!ちょっと!何しているんですか!ヘルマン様!」


「あぁ、すまない。ちょっと興奮してしまったよ。まさか、“ウォーターボール”の中に頭を突っ込むことが出来るなんて夢にも思ってなかったよ」


「俺も、まさか宮廷魔術師が“ウォーターボール”に頭を突っ込むとは思いもよりませんでしたよ」


 苦笑しながらヘルマンに複合魔法の”ドライヤー”を使って乾かすと、さらにヘルマンから追求される亮二だった。


 ◇□◇□◇□


「ところで、何で今日はミスリル装備で謁見しないと駄目だったんですか?」


「ん?儂はそんな事は言っておらんぞ?ハーロルト?」


「いや、儂もそのような命はしておらんが?」


「ところで、リョージ殿。その装備でちょっと演舞でもしてもらえないですか?“ミスリルの腕輪”を使って呪文を唱えるでも良いのですが」


「「「犯人はお前か!」」」

結局、ミスリル装備を着て謁見の間に来るように仕込んだのはラルフ枢機卿でした。彼のミスリル装備好きは凄いね。

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