136話 属性の授業開始 -誰が先生なんでしょうね-
人が多いです。
学院での授業は3日目を迎えて属性についての授業が行われていたが、シャルロッタの顔は強張っており目に見えて緊張の色が出ていた。亮二達は後ろを振り向いて溜息を吐くと、シャルロッタに同情するのだった。
「今日は属性付与についての授業をします。セーフィリア全体で分かっている属性は【火、水、風、氷、土、雷、光、闇、時空】となっています。その内の【光、闇、時空】については、最近まで遺失属性と言われていました。リョージ君は近々、ライナルト主任教授から連絡が有ると思いますので協力出来るようにしておいて下さい」
「ライナルト主任教授に声を掛けられたら何を手伝えばいいんですか?」
亮二の質問にシャルロッタは教室の後ろに視線を向けると回答を求めた。
「【光、闇】属性については取り敢えず急いでいません。今の研究で【時空】属性が必要になる時が来ればリョージ君には手伝ってもらいたいですね。お願いしてもいいですかね?リョージ君?」
「もちろんです。僕で出来る事が有りましたら何でも言って下さい」
授業を見に来ていたライナルトがリョージに対して軽くお願いすると、亮二も「喜んで」と笑顔で答えるのだった。今日の授業は属性関係になっており、属性見本を亮二が行う予定と聞きつけたライナルトを始めとする講師陣が授業参観に訪れているのだった。
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「では、さっそく属性の種類を実際に皆さんに見てもらいたいので、リョージ君は前に来てもらえますか」
シャルロッタから指名を受けた亮二は教卓の上に置かれている水晶球に手を当てると【火】属性を見せるために魔力を注ぎ込んで赤色に変えた。
「まずは基本属性である【火】属性は赤色ですよね。そして【水】属性は青色になり、【風】属性は緑色で、【氷】属性は白色になります。僕が基本的に属性を使う時はイメージを重要視しています。例えば【土】属性を使う時は、土が目の前に有るようにイメージすると、このように茶色になります」
亮二は説明しながら【回復】属性のピンクと【雷】属性の金色も水晶球に映しだした。生徒だけで無く、シャルロッタやライナルトを中心とした講師陣も息を呑みながら亮二が映し出す水晶球の色の移り変わりを見続けた。
亮二が魔力を注ぐのを止めると水晶球は静かに色褪せていき元の水晶球に戻った。一同は水晶球が元の状態に戻ったのを確認すると、目が覚めたように瞬きをして意識をハッキリさせ亮二に対して質問攻めを行い、亮二もそれに対して真摯に回答をしていくのだった。
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「こんな感じになりますが、如何でしたでしょうか?」
亮二の問い掛けにライナルトが待ち切れないようにお願いを始めた。
「リョージ君、先ほどの属性の移り変わりは本当に素晴らしかったです。ですが、まだ【光、闇、時空】の属性を見ていません。私が研究している内容は【時空】属性が必要でね。出来ればそれを見せてくれないかな?」
「いいですよ。じゃあ【時空】属性をお見せしますね。友人に教えてもらったんですが【時空】属性は【回復】属性以外を同時に映すと聞きましたので、各属性を一斉に水晶球に注ぎ込んでみました。こんな感じですね」
「おぉ!これが【時空】属性ですか。素晴らしい!そして美しい。ぐん…リョージ君が【時空】属性が使えるとなったら今の研究が進むな。リョージ君の都合さえ良ければ週末の休みの日に私の研究室に来てください。お願いしたい事があります」
授業最初にライナルトが亮二を誘った時とは違って、研究室に来るように伝えた瞬間に講師陣から、大きなどよめきが起こった。ライナルトは普段から1人で研究をしており、「手伝ってもらいたいですね」と言いながら結局は1人で全てを完成させていたからである。
亮二はそんな事情を知らないのでライナルトに向かって笑顔で「さっきも言いましたが喜んで!」と答えるのだった。
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「凄いね!リョージ君!あのライナルト主任教授から直接声が掛かるなんて。やっぱり【黒】の勲章を持つだけは有るよね」
授業が終わった瞬間に生徒達が亮二の下に集まってきた。オルランドや他の生徒から賞賛の声を受けた亮二は「ありがとう」と答えていると、オルランドの背後から強い視線を感じた。亮二が視線を感じた方に意識を向けるとハンカチを噛み締めたエリーザベトが亮二を見ていた。
「え?エリーザベトさん?ハンカチを噛み締める程に悔しかったの?」
「ちょっ!オルランド!もうちょっと言葉を選んで!」
オルランドの言葉にルシアが慌てて止めたが、エリーザベトの耳には入ったようで真っ赤な顔でオルランドを睨みつけると、亮二の方を向いて言い放った。
「きぃぃ!く、悔しくなんて無いんですからね!見てなさい!私もリョージさんに負けないんですから!」
亮二がエリーザベトに何か言おうとしたが、「何も仰らなくて結構です!」と言ったと同時に走り去っていくのだった。
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「ちなみに、さっき何か言おうとしたよね?リョージ君?」
「いや別に大した事じゃないんだけど、『エリーザベトさんってオルランドには優しいね』って言おうとしただけだよ」
「それは絶対にエリーザベトさんに言っちゃ駄目よ」
「やっぱり?」
「当然よ。でもオルランドは何でエリーザベトさんに強く言えるんだろうね?」
「それは確かに不思議だよね?今度聞いてみないと」
「軽くオルランドに、はぐらかされるような気がするけどね…」
まさか授業参観をされるとは思いませんでした…。