130話 授業の初日 -色々と説明を受けますね-
パーティーから1週間はあっという間でした。
「今日から皆さんの担任になるシャルロッタ=ハルシュトレームです。このクラスは勲章が【黒】【紫】【青】【赤】の特別クラスで、全員で10名となります。今日から2年間は私が担任となりますのでよろしくお願いしますね」
シャルロッタの挨拶に「「「よろしくお願いします」」」との声が一斉に返ってきた。特別クラスの人数は【紫】1名【青】2名、【赤】6名、【黒】1名の10名であるとの説明があったが、入学式での説明では【青】の勲章者が最高だと聞いていた亮二は確認を行った。
「先生!入学式の説明では【紫】の勲章をもらった人は居ないと聞きましたが。それにここには9名しか居ませんよ?」
「そうですね。彼女は特別な事情で入学試験と入学式に間に合わず、王都への到着も間に合わなかったので、皆さんと会うのは明日になります。【紫】の勲章を持っているからといって特別扱いはしませんので、皆さんも彼女と仲良くしてあげて下さいね」
亮二の質問にシャルロッタが返事をするとクラスがざわざわし始めた。亮二の耳には「遅れて来るって事は彼女の事かな?」「今まで療養されていたと聞いていたぞ?」「コルトレツィスの令嬢か?」などの情報が入ってきた。
事情を知らないのは自分くらいだと気付いた亮二は隣に座っていたルシアに「誰のこと?」と聞くと、ルシアは「知らないの!」と声を上げて説明を始めた。
「エリーザベト=コルトレツィスの事よ!知らないの?コルトレツィス家の3女で魔力の高さと【雷】属性が得意な事から”雷を操る令嬢”って呼ばれてるのよ!」
「”雷を操る令嬢”ってまんまじゃん!そんなに凄い人なの?」
「会ってるからね!お父さんと会ってるからね!ハーロルト公爵の3女よ!エリーザベトは」
「コルトレツィスの家名を覚えてなかったよ。ハーロルト公の娘さんなの?それは仲良くしとかないとね。でも何で遅れて来るんだろう?さっき、誰かが療養って言ってたけど?」
「何の病気かは知らないけど、病気でハーロルト公爵夫人の実家で療養していたって聞いたわよ」
ルシアの説明に納得すると、亮二は引き続きシャルロッタの学院説明を聞くのだった。
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「こちらが修練場です。皆さんなら入学試験場と言った方が分かりやすいですかね?」
シャルロッタが最初に連れて行ったのは亮二達が試験を受けた修練場だった。今は生徒が様々な魔術の練習をしており炎や水溜り等が出来ていた。
「ここで魔術の練習をしても大丈夫なんですか?」
「もちろん大丈夫です。例えば…、ちょうど彼が”ファイアアロー”を撃とうとしているのを見て下さい。威力が殆ど無かったですよね?この修練場は通常の10分の1程度の魔力しか出ないようになっています」
「成る程!全力で魔力を撃っても大丈夫なんですね!」
「「「「「駄目だからね!リョージ君!」」」」」
「えぇ!何で皆からツッコミが?」
「カレナリエンさんとマルコから『リョージ様が全力でやっても良いですか?といった時は全力で阻止して下さい。学院の為にもお願いします』『頼むからリョージが無茶をしないように見といてくれ』って頼まれているのよ!」
「いつの間に!」
シャルロッタの説明に亮二が嬉しそうに質問をするとルシアを含めた5人から一斉にストップが掛かった。亮二が思わず疑問を声に出すとルシアが代表してカレナリエンとマルコからお願いされたと返ってきた。
「先週のパーティー会場で直接カレナリエンさんからお願いされたのよ。何か遠い目をしながら切実に言っていたけど何かやったの?」
「魔力測定器を壊した!」
「遠い目の原因はそれね。どうせだったら入学試験で、魔力測定器を消滅させる前にも教えて欲しかったよ」
ルシアから疲れた声が返ってきたが、亮二からするとハーロルトとユーハンに頼まれたから全力でやったのであって、前回のカレナリエンの時とは事情が違うと言いたかったが、グッと我慢すると「全力で魔力を使わないから安心して」と答えるのだった。
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「こちらが教授棟になります。皆さんも優秀な成績を収めたら、教授から声が掛かると思いますので頑張って下さいね」
「あれ?ぐん…リョージ君じゃないですか?どうしたんです、こんな所にやって来て?」
「あっ!ライナルト主任教授!研究のお邪魔をして申し訳ありません。すぐに移動させますので」
シャルロッタが教授棟の説明をしていると背後からライナルトの声が掛かった。シャルロッタが慌てて頭を下げて、生徒達を端に避ける為に誘導を始めようとしたのを止めると話し始めた。
「別に構わないよ。特別クラスの子供達かな?」
「はい!今日から授業が始まりますので、まずは学院の説明からしていました!ライナルト主任教授はリョージ君と知り合いなのですか?」
「ああ、彼とは”試練の洞窟”で助けてもらった仲なんですよ。彼はうわさ通りの”ドリュグルの英雄”の強さでしたよ。彼は、これから2年間は学院に居るんですよね?私も楽しみにしています。皆さんも私が唸るような研究内容を持ってきてくださいね。ではこれで失礼するよ」
シャルロッタの質問にライナルトは”試練の洞窟”で会った事を話して亮二を含む生徒達を眺めると「期待しているよ」ともう一度言って自分の研究室に向かっていった。
ライナルトが研究室に入った直後に、亮二とライナルトの関係を知っている6名以外は生徒だけでなくシャルロッタから「ライナルト主任教授から声を掛けてもらったぞ!」「期待してるって!」「私に声を掛けて下さったのよね?教授への第一歩に成るのかしら」などの歓声が上がるのだった。
ライナルトって人気あるんだな。