129話 パーティーは続くよ -デザートも作りますね-
主賓の挨拶はユーハンにお任せ!
亮二達が向かったテーブルの中央には大きな花瓶に花が飾られており、その周りには様々な料理が置かれ、参加者を待ち続けていた。亮二達が所定の場所に付いたのを確認したユーハンが代表として挨拶を始めた。
「今日はリョージの入学祝いパーティーです。料理や飲み物はリョージが用意しているので私も楽しみにしています。これはリョージだけへの言葉なので、皆さんは気にしないでください。リョージ!これからの2年間で優秀な成績を収めて、辺境領の発展に役立ってくれる技術を身に付けてくる事を願っている。勉強の他にも子爵に叙爵されて貰う予定の”盤面の森”と私が渡している駐屯地の経営もあるから大変だと思う。だが、私も出来る限り人材の面で協力はさせてもらうので頑張って欲しい。それと今日は、特別にエレナ姫とハーロルト公爵にお越しいただいている。2人ともリョージが作ったお菓子が気に入ったとの事で今日も楽しみにされているそうだ。リョージ、食後のお菓子は出るのだろう?」
亮二が笑顔で大きく頷くのを確認すると引き続きユーハンは話し始めた。
「まずは料理を堪能して欲しい。今日の料理はリョージが王都に来た日に出会った屋台の8店舗が集まってくれたそうだ。ここ2日で急激に人気の出て来ている店舗だそうで、何店舗かは屋台から実店舗にするとも聞いている。ぜひ、実店舗が出来上がったら皆も行って欲しい。こんな感じの紹介で良かったか?」
「さすがユーハン伯、完璧です。じゃあ、早速食べるための乾杯をお願いします」
亮二から乾杯の催促をされたユーハンは、苦笑を浮かべながらグラスを掲げて「リョージ達の合格に乾杯!」と声を上げると、「乾杯!」と唱和が返ってきて食事会が始まるのだった。
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「美味しい!何でこんなに味が濃いの?」
「それは秘伝の味だからって教えてくれなかったよ」
「こっちのスープって何が入っているの?この食べた事のない食感の野菜を知りたいんだけど!」
「それは何だったかな?たしかキャベツの芯って聞いた」
「え?キャベツの芯って食べるの?」
「ねえねえ!こっちの料理についても教えてよ!」
女性陣から料理に対しての質問が集中して必死に答えている亮二を眺めながらハーロルトはユーハンに話しかけていた。
「それにしても屋台の料理とはの」
「申し訳ございません。リョージが食事等の準備をすると聞いていましたので確認が出来ておらず。お口に合いませんでしたでしょうか?」
「いや、屋台街には若いころにマルセル王と王宮を抜けだして食べに行ってたからの。その頃を思い出していただけじゃ。エレナ姫も外遊先で村人から郷土料理を出されたりしているから特に問題無いじゃろ。それにしてもこのスープは旨いの。実店舗を構えると言っておったが儂も出資しようかの」
「ハーロルト公が出資されたら物凄い話題になりそうですね」
ハーロルトとユーハンが話しているとエレナが会話に参加してきた。彼女の手には串に刺さった肉が持たれており、串に刺さった肉を頬張ると「本当に美味しい」と嬉しそうにしている光景を見てハーロルトが苦笑交じりに話しかけた。
「エレナ姫の侍女長がみたら卒倒しそうな光景ですな」
「たまには良いじゃないですか。こんな感じで外遊先で村人から出される郷土料理も有りましたよ?」
「まあ、今日はリョージの入学祝いとの事で無礼講ですからな。ただ、余り食べ過ぎるとリョージの”でざあと”を食べる事が出来ませんぞ」
見た目によらず健啖家のエレナに対して、ハーロルトが冗談交じりに注意を行うとエレナは嬉しそうに「”でざあと”を食べる分の余力は残しております」と答えるのだった。
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「そろそろ”でざあと”を頂いてもいいでしょうか?私、もう待ちきれなくて!」
「分かりました、エレナ姫。では早速用意しますのでしばらくお待ち下さいね」
亮二はエレナからの催促に笑顔で応えると、調理場となっている小屋に向かうと扉を開けた。今日のために【土】属性魔法で調理場にレイアウト変更した場所で屋台街からやって来た10数名ほどが寛いでいた。亮二が入って来たことに気付いた一同が挨拶をしてきたので、同じ様に挨拶を返しながら早速デザートの作成に入った。
「リョージさん。何か作るんですか?」
「エレナ姫からの要望でデザートのパフェでも作ろうと思ってね」
「”でざあとのぱふぇ”ですか?聞いたこともない名前ですね?肉料理とかじゃないんですよね?」
「簡単に言ったら食事の後に出すお菓子みたいな物を総称してデザートって言って、パフェはそのお菓子みたいな物の名前の1つだよ。今から作るから見といてよ」
亮二はざっくりとした説明をするとパフェを作り始めた。最初に苺やオレンジなどを混ぜて色とりどりのアイスクリームを作って背の高いグラスに盛っていき、その上にフルーツやナッツをちりばめ、最後に生クリームを乗せていった。
屋台街の店主たちは見た事も無いパフェを感動して見ていると、リョージから残ったアイスクリームを今日の感謝の気持ちを込めて試食するように伝えた。初めて食べるアイスクリームの冷たさに驚きながら未知の味に舌鼓を打っている店主達を見て、「アイスは売れるな」と呟きながらパフェをエレナ姫にご馳走するために持って行くのだった。
パフェもエレナ姫を始めとして女性陣から大絶賛でした。