128話 パーティーの始まり -色々な人がやって来ましたね-
準備は万端!
「こんにちは!本日はお招きに与り光栄です!」
「呼んでくれて有難う!」
マテオとルシアの挨拶を受けた亮二は喜んで2人を屋敷に迎え入れるとリビングに案内した。リビングには所狭しと食べ物や飲み物が置かれており、すでに参加しているメンバーを見てマテオとルシアは自分たち以外のメンバーの多さに驚きの声を上げてしまった。
2人の目の前にはユーハン伯爵やマルコ、カレナリエンとメルタにハーロルト公爵にエレナ姫、ライナルトやネイハム達がすでに食事を始める勢いだったからである。
「ルシア!マテオ!こっち、こっち!」
奥の方から声が聞こえてきたのでそちらを見ると、マイシカ、ロサ、オルランドの3人が手招きで呼んでくれていた。2人はほぼ見た事のない人々に軽く頭を下げると、何故か頭を低くしながら3人の所に向かうと小声で話しかけた。
「ねえ、入口近くに居た人達ってお偉いさんなんでしょ?何か漂ってくる雰囲気が違うんだけど?」
「さっきリョージ君に聞いたら伯爵とか公爵とかお姫様だって」
「なんでそんな人達がここに居るの?リョージ君の友達だからって言わないよね?」
「残念ながらルシアの冗談が正解なのよ。『皆友達!マルコだけはツッコミ担当だからね!』って言っていたけど」
「なにそれ、ツッコミ担当って?」
ルシアの疑問にマイシカが答え、さらに疑問の湧いたルシアにロサが溜息混じりの補足を行った。そんな5名がこそこそと参加者について話していると背後から声がかかった。
「お前達が、リョージの友だちの5人か?」
「そうですよ。昨日リョージ君と友だちになったばかりですけどね。失礼ですがお名前をお伺いしてもいいですか?」
「あぁ、俺の名前はマルコだ。あっちで姫さま達と酒を飲む準備をしている若い男がいるだろ?ユーハン伯爵ってんだが、それに仕えてる門番さんだよ」
「「「「「え?貴方がリョージ君の言っていたツッコミ担当のマルコ?」」」」」
「うぉい!誰がツッコミ担当なんだよ!あいつが勝手に言っているだけだろ!間違っても俺はツッコミ担当じゃないからな!それに何でお前ら綺麗に声を揃えてボケてんだよ!」
声を掛けられてルシアが代表で答えるとマルコが自己紹介を始め、それを聞いた5人が一斉にツッコミ担当である事を確認するとマルコは否定しながら突っ込みを入れていた。そんなマルコが必死に突っ込みを入れているのを嬉しそうに見ながら亮二がルシア達の所にやって来た。
「さすがマルコ!やっぱりマルコが持っているツッコミ技術の高さには脱帽って言葉しかしか出てこないよ」
「相変わらずお前は俺の事をなんだと思ってるんだよ!これから必要なんだからちゃんとした紹介をしておけよ」
「これから必要?」
今まで黙っていたオルランドがマルコの発言に対して疑問に思った事を尋ねるのだった。
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「”これから必要”になるのは俺が学院で派閥みたいなのを作っていくからだよ」
「え?それって、学院の質の低下って言われている原因に私達を巻き込むの?」
「それを何とかしたいと思ってね」
「どう言う事?」
「今の学院って貴族派閥争いの縮小版みたいになってるだろ?派閥争いなんて貴族同士で勝手にやればいいのに、学院に持ち込んでくるなって話だよ。だから2年掛けて俺が改革しようと思ってね。悪いとは思うけど皆には手伝って欲しい。お礼って訳じゃないけど卒業後はかなりの便宜を図らせてもらうよ」
「え?そんな事を突然言われても、答えをすぐに出せないよ。何をしていいのかも分からないし」
亮二から突然のお願いに戸惑っていた5人を代表してマイシカが発言するとオルランドが「答えはすぐに出せない」と言い、ルシアとロサとマテオは「分かった」と答えを返した。
「え?3人は即答するの?」
「もちろん!考えてみてよ。”ドリュグルの英雄”で、最近子爵になったリョージ君に味方する意味を。余りの才能に、学院の試験を最後まで受けさせて貰えなくて合格した学院史上初の『黒』の勲章の持ち主でしょ。それに屋敷を一括で購入したのよ!他にも周りをよく見てみなさいよ。辺境伯に公爵にお姫様まで居るのよ。それに学院の事については、ライナルト主任教授がリョージ君と友達って言うか弟子って感じじゃない。どこに不安要素があるのよ?」
「そっか、そうだよね。ルシアの話を聞いて目が覚めた気分だよ。確かに即答するいい話だね。分かった、私もよく分からないけどリョージ君に協力するよ。オルランドはどうするの?」
マイシカはすぐに「協力するよ」と返事をしたが、最後まで「協力」に対する答えを出さないオルランドに全員の視線が集まった。
「僕はもう少し考えるよ。まだリョージ君の人柄もよく分かってないしね」
「それで良いよ。別に今すぐに答えを出してくれなくてもいいし、協力するって言ってくれてから『やっぱりやめた!』でも問題ないよ。それと協力してくれる4人もだけど『こんな事をしてくれ』なんて言わないから安心して。俺が何かをする時に『いいと思います』って言ってくれるだけでいいから」
「え?そんな事でいいの?」
「もちろん、2年かけて改革するんだから、いつも何かをお願いしていたら疲れちゃうよ。まあ、今日はこれくらいにして食事にしよう。あっちに俺が美味しいって思った店の料理が並んでるから」
亮二は明るくそう言うと、話し込んでいた5人を連れて食事を楽しむためにテーブルに連れて行くのだった。
堅苦しい話は無しにして食べよう!