126話 小屋の作り方 -【土】属性魔法の見せ場ですね-
早速小屋を作っていきます!
ネイハムやルシアとマテオを玄関まで見送った亮二はライナルトを連れて裏庭にやって来た。亮二はドリュグルの街で作った小屋のように納戸がある部屋をイメージして【土】属性魔法を使い始めると、地面が盛り上がり始め徐々に小屋として形を作っていった。
亮二にとってはいつも見ている楽しい光景だったが、ライナルトからすれば天変地異に匹敵する程の驚愕的な出来事だったようで口を開けたまま小屋が完成するまでの5分間を何も言わずにずっと眺めているだけだった。
「よし、完成!じゃあ中も見てみようか?」
「え?あっ、はい。それではお邪魔します」
完成した小屋の中に元気良く入った亮二の後を追って恐る恐る中に入ったライナルトは、意外と明るい小屋の中を見渡しながら興奮に包まれていた。小屋の大きさは20畳程で壁面には様々な物を置くのに適した棚が作られ、中央には4人が食事ができる程の大きさの机と椅子が出来上がっていた。
ポーションを作る為に必要な釜や瓶、瓶ビールを入れるようなケースなどは亮二が次々と設置を行っており、最初は恐る恐る小屋に入っていたライナルトだったが、亮二が小屋を作り終えた頃にはブツブツと呟きながら瓶を手に持ったり椅子をひっくり返したりしていた。
「どうだった?俺の小屋の作り方は?」
亮二の問い掛けにライナルトは勢い良く亮二の方を振り向くと、キラキラした目で熱く語りだしてきた。
「軍曹!これは【土】属性魔法だけで作られたんですよね?【土】属性魔法だけで?【土】属性魔法だけでですよ!」
「落ち着いて、ライナルト。さっきから【土】属性魔法しか言ってないからね」
「これが落ち着いていられますか!私は今まで魔法陣だけでなく、様々な魔法、魔術の研究をしてきたんですが、こんな【土】属性魔法だけで小屋を建てるなんて見た事も聞いた事も有りません!しかも軍曹は小屋を造る時に詠唱をされてませんでしたよね?」
「じゃあライナルトに聞くけど、詠唱って何で必要か考えた事ある?俺からすれば詠唱が何故必須となっているかが分からないけどね」
「どう言う事ですか?」
興奮した状態で質問してくるライナルトに対して亮二は逆に質問を行った。
「俺の個人的な見解だけど、詠唱が必要な理由について話して良い?」
「もちろんです!ぜひ軍曹のお考えを聞かせて頂けますか?」
「再確認だけど、魔力があるだけでは火は出せなくて、属性が必要って聞いてるけど間違いないよね?」
「そうですね。神から与えられた祝福と言われている属性が必要ですね」
「何で神の祝福と言われている属性なのに詠唱が必要なのかって考えた事ある?」
亮二の質問にライナルトは首を傾げながら考えると、属性については”神からの贈り物”として意識しており、詠唱についても特に考えて無い事に気が付いた。ライナルトの表情を見ていた亮二は「考えた事も無かったみたいだね」と言いながら続きを話し始めるのだった。
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「で、話の続きだけど魔法を使う時に詠唱が必要な理由は”想像”だと思っている」
「想像ですか?」
「そう。人間は神からの祝福で有る属性が有っても火を出す様に身体が出来て無いから火を出すことが出来ない。だから詠唱する事で自分が使いたい現象”火を起こす”事を魔法として実現していると考えたんだ」
「なるほど”想像”ですか。魔法陣を書いているのと同じ理屈ですね。魔法陣も魔力を流す事で”出来ない事を実現”出来ますからね。ありがとうございます!ちょっと今考えている件が片付いたら、さっそく詠唱と属性について研究を始めます。考えれば簡単に気付けた筈なのに何で今まで気付かなかったのか」
「それはライナルトが”属性は神からの祝福””詠唱を唱えないと魔法は使えない”と言われて育って来たんだから仕方が無い事だと思うよ。俺の国では起こった現象には全て”神の奇跡以外の何かが有るかも知れない”と教えられているからね。だから詠唱に付いてライナルトが研究してくれるんだったら協力するし、魔法の世界での大革命になるんじゃないかな?」
「間違いなくひっくり返るでしょうね。それにしても軍曹の国の考え方は物凄いですね。一度行ってみたいものです」
ライナルトの溜息と共に出た感想に苦笑いしながら「俺も戻れるのなら戻りたいかな」と答える亮二だった。
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「今日は有り難うございました。まさか屋敷を売っただけで、生涯を賭けて研究するに値する題材を頂けるとは思いませんでした。誰にも屋敷を貸さずにいたのを神に感謝しますよ。これから色々と詠唱や属性、それ以外のお話を聞いたり、実験の協力をお願いしますがよろしくお願いします」
「こっちこそ今日は有難う。ほんとにいい物件を買う事が出来たよ。研究題材をこっちから提供するだけで知らない振りは出来ないからな。主任教授が行われる実験への協力だったら喜んで参加させて頂きますよ。もちろん協力した学院生への評価も忘れずにして頂けるんですよね?ライナルト主任教授」
ライナルトの協力要請に対して、学生である事を強調して参加を表明する亮二に「もちろん、実験内容の結果で高い評価を付けさせてもらうよ、リョージ君」と笑顔で答えると王立魔術学院の自室に戻っていくのだった。
自分はスキルで無詠唱を取っているのでライナルトに研究してもらったら誰でも無詠唱が出来る様になるはず!