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124話 屋敷購入の道半ば -物件は足を使わないとね-

物凄く悪いコトをした気になります……。

「本当に申し訳ありませんでした!”ドリュグルの英雄”である、リョージ・ウチノ子爵に馬鹿息子が失礼を働いてしまうとは!どのようなお詫びをさせて頂ければよろしいでしょうか?」


 不動産屋の店主の低頭平身で地面に頭が付くくらい下げながら謝罪してきた。店主と一緒に真っ青な顔で頭を下げている店員は店主の息子らしく、頬だけが赤く腫れている所を見ると父親である店主に殴られたようであった。


「ごめん、こっちもそれほど怒っている訳じゃないんだよ。店に入った瞬間に絡まれたから理由だけでも教えて欲しい」


「昨日の王立魔術学院入学式に俺も行ってたんすよ。そこであんた達を見かけて、ふざけた奴が入学して来たなと思ったら、全員が【赤】の勲章を持ってるじゃないですか!俺なんかギリギリ【白】で周りにも【白】を持ってる奴も居ないし。俺、塾にも行かして貰ってるのに大した成績じゃなくて…、不貞腐れてたら親父が『店番くらいやれ!』って言われて番をしてたらあんた達が入ってきたじゃん。『何でお前らはヘラヘラ笑いながら【赤】なんだよ!』って思った瞬間に叫んじまったんだよ。本当にごめんな」


 亮二からの問い掛けに途中から嗚咽の入った声になりながら謝罪する店員に、合格して浮かれていた事を思い出した亮二達は顔を見合わせてバツの悪い顔をして謝罪を受け入れると店員に話しかけた。


「そう言えば名前を聞いてなかったよな。さっきも言ったけど俺がリョージで、横に居るのが俺の婚約者のカレナリエンとメルタ、で、こっちに居るのがルシアとマテオだよ」


「俺の名前はネイハム=スターン。本当にさっきは申し訳ありませんでした!」


 ネイハムはもう一度、頭を下げると真摯に謝罪をするのだった。亮二達はネイハムから謝罪を改めて受け取った後にやって来た理由を伝えると、探している物件の情報を伝えた。


「王立魔術学院から”近くて””新しくて””広くて””綺麗で””庭が広くて””市場にも近い”所!」


「リョージ様の戯言は放っといて、出来れば近さと庭の広さを優先してくれませんか?」


 亮二の脳天気な希望をカレナリエンが被せて希望を伝えると、店主は手元のファイルから3枚取り出すと、ネイハムに亮二達を屋敷の場所に案内するように伝えるのだった。


 ◇□◇□◇□


 -1軒目-

「こちらが1軒目です。王立魔術学院まで徒歩5分で料金も安いです。でも庭が無いんですけどね」


「駄目じゃん!庭に小屋を作りたいし、外で食事とかしたんだよ!それに、ここは屋敷じゃなくて5階建ての1室じゃん!屋敷って言っているのに何で5階までやって来たんだよ!」


 息を切らしながら5階に到着したネイハムの説明に亮二は律儀にツッコみながら「ここはない!」と断言するのだった。


 -2軒目-

「こちらはどうですかね?庭はかなり広くて、小屋についても好きなだけ建てて良いそうです。王立魔術学院まで徒歩で1時間半掛かりますが」


「惜しい!歩いて1時間半じゃなかったら買ってた!それにしても1時間半も歩いてここまでよく来たな俺達!」


 郊外まで来てから「遠い!」と叫んだ亮二にカレナリエンやルシアは「「もっと早く言ってくださいよ」」と疲れた顔で溜息を吐くのだった。


 -3軒目-

「実はここが本命でして、最後がこちらになります。1軒目より距離は遠くて歩いて30分ですが、庭の広さもそこそこあって小屋を設置するのも要相談で可能です。そしてなにより築浅で屋敷自体は広くて綺麗です。それに何と言っても市場に近い!どうですかリョージ子爵!」


「よし買った!いつから住める?」


「手続きさえ完了すればすぐに住めますので2日もあれば大丈夫です」


「でも、何でこんな物件が残っているんですか?値段が法外なんですか?」


 首を傾げながらメルタに質問されたネイハムは明るい顔で理由の説明を行った。


「適正金額ですよ。良物件なのに不思議でしょ?実はここは委託物件でして『貸主と面談をする』との条件が有りますが、リョージ子爵なら問題ないと思われますよ」


「じゃあ、早速面談をしようよ。ちなみにその面談主って誰なの?」


「さすがのリョージ子爵も驚かれると思いますよ!なんせ王立魔術学院の主任教授で発表した魔術論文は10本以上!魔法陣の造詣も深くて王都に出回っている家庭用の魔法陣の多くは彼が開発した!王立魔術学院の主任教授就任最年少記録保持者!その名も…「ライナルトじゃん!あいつもそんな良物件を持っていたら教えてくれてもいいのに!」」


 ネイハムが亮二からの質問に勢い良く格好を付けながら答えてる途中で亮二に遮られた為に「やっぱり俺は何をやっても中途半端なんだよ…」と落ち込みながらも何とか立ち直ると「では、ライナルト主任教授に連絡を取りますのでしばらくお待ちください」と伝えるのだった。


 ◇□◇□◇□


 ライナルトに面談した亮二達は曰く付きでない物件であることに安堵したが、なぜライナルトが良物件なのに賃貸に出しているのか気になったので質問してみた。


「なんなのあの物件?」


「王立魔術学院で主任教授に就任した際と魔術論文を10本投稿した功績を認めて学院から貰った屋敷なんですけど、独身ですし研究室に篭もりっきりの時も有るので日常生活に必要な物は全部ここに有るんですよ。結局、使わないから貸し出そうと思ったんですが、変な人に借りられたくないから面談するって条件でお願いしてました。それがまさか軍曹とはね」


「じゃあ、俺に貸してくれよ!」


「いいですよ。それよりも買い取ってくれませんかね?」


 賃貸より購入して欲しいとお願いされた亮二はライナルトから値段を聞くと「金貨500枚で良いですよ」と答えてネイハムを慌てさせると、さすがに酷いと感じた亮二から「そこは専門家に任した方が良いだろうと」と助け舟を出すのだった。

ライナルトなら「頂戴!」って言ったらくれそうだな。

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