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121話 入学式での小騒動 -クラスが決まったみたいですね-

入学式はいつも退屈だと思っていました。

「諸君!入学おめでとう。王立魔術学院に合格して大講堂に集まっている君達が今後の王国を背負っていくと思ってくれたまえ。それと試験に合格した時に渡した勲章が君たちのクラスになるので確認して欲しい。この2年間で学んだ事が君達の人生の指針になってくれる事を願う!」


 学院長である「クリストフェル=エーマン」から開会の挨拶があり、合格者達はクリストフェルの挨拶が終わると同時に渡された箱を開けて勲章の確認を行い、悲喜こもごもな声が挙がった。亮二達のグループもルシアの掛け声にタイミングを合わせてお互いに見せ合うのだった。


「え?全員一緒って事?」


 一同の手には赤色の勲章が握られており、一緒に貰った入学説明書の「勲章の説明」には「特別クラス:紫、青、赤 一般クラス黄、白」と書かれており、また備考には「勲章の色は入学時の色であり、学院生活中の評価で変わるので頑張りましょう」と書かれていた。


「で、リョージ君は何で勲章を見せてくれないのかな?」


「ほら、勲章の色は気にしなくて頑張ろうって書かれてるじゃありませんか」


「でも、隠さなくてもいいじゃない。皆が赤色でリョージ君だけ違うから見せたくないの?」


「そうそう。俺だけ色が違うんだよ。だから皆と違って恥ずかしいじゃありませんか」


 ルシアから勲章の色を聞かれた亮二は真面目な顔で答えた。そんな亮二の様子を訝しげな表情で見ていた一同は顔を見合わせて頷くとロサとマイシカが問いかけてきた。


「リョージ君。やっぱり気になるのよね。君の勲章を見せてくれるかな?」


「気にしちゃ駄目ですよ。勲章の色が人生を決める訳じゃ無いと思われませんか?」


「でもね、やっぱり気になるよ。お父さんも言ってたよ。『学院の勲章は持っているだけで就職に有利になる。また勲章の色は魔術を使う人生で大きな比重を占める』って」


「そんな事を気にしちゃ駄目ですよ。人生は勲章の色ではなく自ら切り開いて行くべきだと思われませんか?」


「ねぇ、さっきから何でそんな微妙な敬語での受け答えなの?」


「ソレハマチガイナクキノセイダトオモワレマスヨ」


 じわじわと近付きながら、「勲章の色を見せろ」と迫るロサとマイシカに対して、徐々に下がりながら答えていた亮二は壁際に追い詰められている事に気付いたと同時に、マテオとオルランドが亮二の両腕を押さえた。


「ふっふっふ。君の勲章が入った箱は私が預かった!」


「しまった!」


 ルシアは亮二から箱を取り上がると中身の確認をして微妙な顔になった。


「なにこれ?」


 一同が亮二の勲章が入っている箱を覗き込むと、そこには黒色の紙の勲章が入っているのだった。


 ◇□◇□◇□


 勲章が入った箱を巡っての攻防が繰り広げられている間もスケジュールは滞りなく行われており、受験生の何名かと試験官をしていた講師たち数名が眉を顰めている中、ルシアが勲章に入っている黒色の勲章の件についての説明が行われていた。


「今年は我々学院側にとっては”当たり年”だと思っております。もちろん在学生も優秀な人材は多いのですが、今年は勲章の【赤】が6名に【青】が2名もいるのです。通常は卒業する間に【青】にたどり着ければ優秀です。ですが、【赤】【青】の勲章を貰われた方についても、自己研鑽を怠らないようにしてください。さらに今年は学院史上初めて【黒】の勲章を持つ人が居ます。余りの規格外の為の特別な勲章ですので、皆さんは最高峰である【紫】を目指して頑張りましょう」


「今の説明って、間違いなくリョージ君の事だよね?」


「だから紙の勲章が入っているのか。学院史上初めてだったら勲章も用意されてないもんね」


「自分が持っている【赤】の勲章が寂しく見えてきたよ」


「皆!暗くなっちゃダメ!リョージ君は”リョージ君だから”で片付けちゃえばいいのよ!私たちは一致団結して【青】、そして【紫】を目指しましょう!打倒!リョージ君!」


「お願いだから倒さないでくれる?【紫】目指すのを手伝うからさ」


 説明を聞きながらルシアが上げた鼓舞の声にゲンナリしながらお願いする亮二だった。


 ◇□◇□◇□


「リョージ君は式典が終わった後は学院長の執務室に来るように」


「ついにリョージ君に神の鉄槌が下るのね」


「単に【黒】の勲章に付いての説明だと思うな」


 職員から呼び出しを受けている亮二を見たルシアが嬉しそうにしているのを見て、マテオが冷静に突っ込んでいた。


「取り敢えず、今日はここでお別れかな?また、日を改めて合格パーティでもしよう!」


「それって、リョージ君の奢り?」


「もちろん!豪勢にするから楽しみにしといて!」


 ルシア達の歓声を背後に確認しながら亮二は職員と一緒に学院長執務室に向かった。学院長の執務室は校舎の奥に設置されており、歴代の学院長の肖像画の他に来客を迎えられる大理石調のテーブルやバーカウンターが設置されているのを見て「どこの成金趣味の部屋だよ」と呟いていると、奥に座っていた男性が立ち上がって声を掛けてきた。


「君が、リョージ・ウチノ君か。様々な試験で本来ならあり得ない成績を収めたそうだな。流石は”ドリュグルの英雄”か」


「お褒めに与り光栄です。ところで私がここに呼ばれた理由をお聞かせ頂けますでしょうか?」


 クリストフェルと直接対面した亮二は何となく彼の事が気に入らなかった。部屋の趣味は歴代の学院長のを引き継いだだけかも知れないが、自分を見る学院長の目が値踏みしかしておらず、どう見ても教育者の顔ではなかったからである。亮二はインタフェースを起動すると久しぶりにスキル取得画面を表示させて”魔力検知 5””聞き耳 5”を取得するのだった。

どうも学院長が気に喰わないんだよな~。

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