95話 森に突入4 -ラスボスを倒しますね-
ドラゴンはやっぱり強いです
突撃を行った亮二に対して前足で踏みつぶそうとしたドラゴンの脚が地面に着いたタイミングを見ながら急停止すると【雷】属性を付与した”ミスリルの剣”をその足に思いっきり突き刺した。不思議な感触とともに強固だった鱗に”ミスリルの剣”は何とか突き刺さるとドラゴンの脚から鮮血が舞った。
「よし!剣での攻撃は効いた。でもさっきの変な感触は何だったんだろう?」
亮二は一旦間合いを取って、今度は十分にブレスを警戒しながらドラゴンに対して”ファイアボール”を撃つと、別の場所に移動を開始しながら回りこむような感じで連続で”ファイアボール”を撃ち続けた。ドラゴンを中心として炎のドームが出来上がったのを確認すると”ウィンドアロー”と撃ってドームに穴を開けて様子を見た亮二は疑惑が確信に変わった。
「やっぱり!あのドラゴンには魔法が効いてないぞ!あれって魔法障壁なのか?」
ドラゴンを包み込むように”ファイアボール”の炎が襲いかかっていたが、鱗まで届いていたのは”ウィンドアロー”の先端だけのようだった。ドラゴンは炎が収まるのを待ち、亮二を確認するとブレスを放ちながら距離を詰めてきた。
- どうする?魔法が効かないなら剣での攻撃をするしか無いか?ん、ひょっとしてあの方法なら効果があるのかも -
距離を詰めてきている亮二に対して、前足を攻撃された痛みと”ファイアボール”を連続で撃ち続けた亮二の危険性に気付いたドラゴンは、一気に勝負を決める為に咆哮を放つと攻撃された前足で思い切り振り払った。
だが、その場所に亮二はすでにおらず反時計回りで回り込んでおり左足に対して”ミスリルの剣”を突き刺して剣を鍔の辺りまで減り込ませると「もういっちょ!」と叫んで【雷】属性を纏わせた。ドラゴンが弾けるように身体を揺すった事にダメージが通ったと確信した亮二は更に二重、三重と【雷】属性付与を行った。三重目に属性付与を行った瞬間に”ミスリルの剣”が光り輝き始め、激しい音とともに爆発を起こした。
爆発の勢いでドラゴンに突撃された時以上の勢いで吹っ飛ばされた亮二は、転がりながらも態勢を整えると立ち上がると”ミスリルの剣”を構えてドラゴンからの攻撃に備えた。亮二の警戒を余所にドラゴンは痛みの余りにのた打ち回っており、怒りのあまり方向に関係なくブレスを吐き続けていた。
「おぉ!ドラゴンの左足が無くなってるな。さっきの三重掛けの効果か。あまりにも威力がありすぎてドラゴンの体の中でダメージが弾けたんだろうな」
亮二はそう呟きながらドラゴンからのブレスが当たらないように注意しながらとどめを刺す為に攻撃を始めるのだった。
◇□◇□◇□
ドラゴンにとってはまさに厄日だっただろう。最強生物である事を誇示するために、いつものようにブレスを吐いて木々をなぎ倒しながらマーキングをしていると、突然光が身体を包み込み、気付けば森の中にいた。自分の縄張りが突然消失した事に戸惑いながら森を歩いていると広場を見付けた。ドラゴンは新たな縄張りにするために進んでいると、今まで見た事もない小さ過ぎる動物がこちらの様子を眺めていた。威嚇のために咆哮を上げても気にすること無く立ち続けている小さい動物に、王者としてのプライドが傷つけられたと感じ実力を見せつけるように突進を行った。
その小さ過ぎる動物は逃げ回りながら、何か魔法のようなものを飛ばしてきたが自分の分厚い鱗と魔法障壁で傷を付けられる事も無かった。しかし、連続して攻撃してくる事に苛立ちが最高潮になり、最高の攻撃であるブレスでとどめを刺す為に体勢を低くして逃げられないように大きく息を吸い込むと、全力でぶつけるのだった。
的が小さ過ぎた為か殺すことは出来なかったが、苦しそうにしているのを見て取ると、最後はやはり自分の肉体で決めるために突進をおこなった。もろに体当たりを受けて吹き飛ばされた小さ過ぎる動物の様子を見て、最強生物で有る事を確認するように咆哮しようとしたが、倒したはずの動物が傷一つ無く立ち上がったのを見て困惑の波が彼を襲った。戸惑っている内に小さ過ぎる動物から鱗を切られて肉体までダメージを負ってしまった。さらには広範囲魔法を撃たれ、魔法障壁で全力で防がないと大ダメージを受けそうになった。
苛立ちが最高潮の状態で、突っ込んできた小さ過ぎる動物を踏みつぶそうと前足を振り下ろしたが足の裏に感触がなく、確認しようとした瞬間に左後ろ脚に激痛が走った。ドラゴンは生まれて初めての大怪我を負った事で完全に混乱し、相手を確認することなくブレスを吐き続けるのだった。
◇□◇□◇□
突然、目の前に大きな壁が出来上がり、ブレスを弾かれたドラゴンは壁を前足と頭突きで打ち壊すとその先に居るだろう亮二に対して攻撃を行おうとしたが、そこには誰もいなかった。
【土】属性魔法で壁を作った亮二は壁に隠れるようにドラゴンの背後に回ると、背中を駆け上がり首の辺りに”ミスリルの剣”を突き付けて全体重を乗せると、そのまま剣をドラゴンの中に押し込んで背中から飛び降りた。背後から致命傷となる攻撃を受けたドラゴンはしばらく暴れまわっていたが、生命力を使い果すと大きな音を立てて地面に横たわるのだった。
ドラゴンが死んでいる事を確認した亮二はドラゴンの首筋から”ミスリルの剣”を引き抜くと大声で「ドラゴンスレイヤーになったぞ!」と叫ぶのであった。
これからドラゴンスレイヤーとの二つ名が付くんですかね?