第94話 ずっといっしょだとしんじてた
置いていかないで。
お母様。
待って。
まだ、まだいかないで。
僕も連れて行って。
僕からお母様を奪うな。
お母様を返せ。
返せ。
返せ…。
返して、
返してよ。
何でもするから。
お母様の為になら、
それ以外を棄てるから。
…
………、夢か。
「遥さん、大丈夫ですか?
魘されてましたよ?」
「気にすることは無い。それより、今日はルリの所に行くよ。」
最近迷宮設定と迷宮破りしかしていない。
まあ、今日もそうなのだけれど。
「へっ? あのルリさんの所に行くんですか?」
「そうだよ。」
「私のライバルキャラ的な感じで登場しておきながらその後は音沙汰鳴く、
遥さんの方から行くと約束はしたけれども一度も行ったことも無く、
敵か味方かもまだはっきり解かりませんけど、
取り敢えず泥棒猫臭がプンプンするけれど、
幼馴染属性的に結局は不遇そうなあのルリさんですか?」
酷い言いようだ。
主に僕にも。
「そのルリであっているはずだよ。」
「また、あの女の所に行くんですか…?」
「今、一度も行ってないって自分で言ってたよね。」
それに、空鍋ならともかく、空フライパンだとそこまで怖くは無い。
右に割ってかき混ぜた卵があるのなら尚更。
「お母さんは許しませんよ!!」
お母様に似た容姿でその台詞を言われると凄く複雑だ…。
「えーっと、えーっと、すみません。ネタがこれ以上浮かびませんでした…。」
別にそれこそどうでもいいよ。
「…卵焼きを一緒に食べたら行きますか?」
「そうしようか。」
「…はい、出来ました。
細かく砕いた豆腐をからめた味付きスクランブルエッグを芯にした、
天使風卵焼きです。」
天使風?
天津風とかなら解かるけれど、
天使に卵焼きが流行しているのは初めて知った。
「……ツッコんで下さい。冗談です。」
そうだったのか。まあ、別にいいけれど。
「はい、遥さん、ぴーちゃん、出来ました。
外側には鶏肉も軽く含めているので重量感がありますよ。」
「ここは、ツッコむところなのかな?」
「えっ?何処をですか?」
もう…、どうでもいいかな。
「今日はそんなに大変なことになる予定もないし、
1人でも大丈夫だと思う。摂理は鳥と残っていてもいいけれどどうする?」
「はっ、まさか、敢えて堂々と言うことで浮気を誤魔化す戦略ですか?」
摂理、それもネタだよね。
やけに目が笑ってないのはいまいち笑いを誘えない。
「………摂理は僕が浮気を許すと思う?正直に言っていい。」
「遥さんは相手の気持ちがどうであろうとどうでもいい人かと。」
そうか…、
「流石だ、よく解かっているね。」
日頃の行いかな?
「ただ、酷く潔癖な所は感じます。
地に着いて穢れるのを恐れて、
空から降りれない鳥の様な…、
そういう所は無くも無いです。」
そうなのかな?
自分ではそこまでは解からない。
対して興味もないから。
「で、どうする?着いてくる?それともこない?」
「遥さんのあるところ、摂理あり、ですよ。」




