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第8話 寧ろ煽っていくスタイル

摂理を買い取った日




「折角あいつから買い取ったんだ。

『僕以外の何物にも属さず、ただ僕の命にのみ属する者』としてね。

これで幾つかの制限が外れたよね。色々情報を教えてもらおうか?」


「えっ、その為に?」




「他に何の目的が?」


「ほら、私の所有権だとか、その他諸々だとか…。」




「…冗談だよ。」


「遥さん…。」



「まぁ、まだ完全に白だとは言えないけれど、

取り敢えず僕の首にかけられた危険な起爆装置は解除できたうえに、

50カ月以上此処にいることを考えたら安くつく買い物だからね。」


「遥さんに情緒を求めた私が愚かでした。」





「落胆される理由は判らないけど、取り敢えず礁湖雀蜂(ラグーンヴェスパ)の様子を見てくるよ。」


「私より蜂の幼虫の方が大事なんですね。」




「まぁ、いずれは此処のボスになってもらうしね。」


「否定もしないんですねっっ!!」




「…それにどこか僕の半身というか妹のような気がするところがあってね。

変な話だよね?」


「―――別に変な話ではありませんよ?」




「……どういうことかな。説明してもらえるね。」


「貴方の存在は数ある平行世界の姫宮遥の一つの意識をデータ化してこちらに送り込まれた存在。

貴方がここで死ねば莫大なこの世界の経験値となる。

ちょうどダンジョンで侵入者が死ねばダンジョンの糧になるのと同じです。

この世界そのものがダンジョンといってもいいんです。

ダンジョンはむしろその中にあるシェルターです。


 そしてあの蜂は平行世界の貴方をある存在が作り替えた果ての先。最強の魔王。

その因子を汲むものの記述を元にこの世界にスケールダウンして再現された存在。

同調するのは当たり前です。」




「魔王…。」



「はい。最強最悪の化け物『傲慢(superbia)なる女皇(ducalis)』。それがまた別の遥さんです。

此処の管理者は本来その存在に脅える側のものだった。

だから別の世界に文字列の箱庭を作ってそこに逃げ込み、たまたますぐ近くに隣接していた世界とリンクを繋げ、

幾人もの人の意思をコピーして前の世界とのリンクを持たせたまま引き込んだ。

つまりはアバターを作ってそれが死んだら持ち主も死ぬ仕組みを作ったんです。

そうやって姫宮遥の一つたる人物の記憶をコピーして貴方(はるかさん)を作りだした。


管理者は遥さんの元の世界の人々の脳の顕現を奪われた無意識の領域のネットワークの中にオンラインゲームを作り、

その中で遥さんにプレイヤーとして参加させているわけです。


遥さんがいれば、他の姫宮遥の因果が入ってこられない仕組みも作られる。

姫宮遥はこの世界に一人しか存在できない。

神はこの世界に遥さんを呼び、そしてルールにのっとって殺せば、

姫宮遥(ducalis=superbia)に脅えることなくその後も生きていけるし、

遥さんとリンクがつながっている元の世界の姫宮遥も合わせて殺せる。

何より自分たちを脅かした存在への復讐ともなる。利益だらけなんです。


人々の脳のネットワークの中に姫宮遥の意思が取り込まれたとしても、

元の世界の姫宮遥とリンクを持った遥さんがコピーとして作られただけだとしても同じ事。

この世界に一人しかいない遥さんが死んだ時点で、元の世界の姫宮遥も死ぬんですよ。」


「だったら僕が負けなければいい。」



「元の姫宮遥が昏睡状態にはなりません。本物の姫宮遥の意識は、向こうにあります。

でも遥さんがこの世界を出る時に元の姫宮遥と同調し、

完全な意味での此処にいる『遥さん』は消えてしまいます。


そしてゲームをクリアしてしまい元の世界に戻った際、

脳の中のネットワーク用の領域が返納されるためにもうここにはこれません。」




「寂しくなるね。」


「おちょくってもいい場面とそうでない場面がありますっっ!!

死ぬにしてもクリアするにしても遥さんは此処からいなくなるんですよ。」





「………落ち着いてくれ、摂理。なぜ僕が元の世界に戻ることを前提で話しているのかも疑問だけど、

ちょっとその話の前に戻ってもいいかな。


…前から気付いていたけどさ、……やはり、僕はコピーだったわけだね。」




「…何時からそれに?……以前も質問をされましたけど。」




「いや、この世界の(ゲームマニア)如きに、元の僕が昏睡状態にされてたまるかと思ってね。

僕の意思と行動の元、僕が死んで元の僕が巻き込まれて死ぬのならそれは本望だろうね。

僕の全ては僕の意思のみによって決まる。誰にも邪魔はさせないさ。

理不尽は味あわせるもので味わうものじゃないから。」


「カッコいいのか非道なのか迷うセリフですね。……でも辛くないのですか?

自分がコピーだと知らされて。」



「別に。ただあのときは僕の意識がここにあるということは、

向こうの僕が昏睡状態とかになっていた場合早く復帰しないと戻った時が大変だなと思っただけさ。

それより純正のプログラムである君の方がよほど人間らしいね。」


「私はっ。」






そういえば、さ。

「…以前質問したよね。」


「何をですか?」



「具体的に勝利条件はあるのか?って。」


「はい。」




「だったら、カミサマとやらを倒してここの支配者となっても、

この世界から出ていく必要はないわけだ。

なにせそれすらも勝利条件ではないのだから。

この世界というダンジョンのマスターにでもなってやればいい。」


「はい。」



「ならば向こうの姫宮遥が死ぬまで僕はこちらで生きていくことも問題は無いのではないかな?

…流石に向こうの姫宮遥が死んだら逆に僕も死ぬのだろうけど、どちらにしろ人には天寿というものがある。

それまではよろしく頼むよ。摂理。」

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