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第66話 吸血女王の見た目年齢はJK

僕は罠部屋の最下層。

つまりボスがいるエリアにいた。


というか呼び出されたのだ。モンスター如きに。

『1人で』という条件を付けて。

勿論管理室では摂理を待機させている。危険は想定してし過ぎることは無い。

迷宮主(ぼく)に為り替わろうとする判断も予想することは難しくは無い。


苛立ちは無い。それだけの知能を持ちえるモンスターが僕の配下にいるということ自体は悪くは無い。

問題は、後でわかると思う。



呼び出した張本人は、

人骨で組み上げた上に血に染まった侵入者の衣装装飾して作られた椅子の上で足を組んで僕を待っていた。


気品ある仕草に豪奢な金髪。

髪の色に合わせた金細工に薄手の黒いドレス。

その衣装と彼女自身の影の境界線は無い。

影が無いという伝承もあるけれどどうやら彼女はその限りではないようだ。


「初めまして親愛なる我がマスター。

妾は吸血女王(クイーンヴァンパイア)のミラーカ。以後、お見知りおきを。」


「初めまして僕の強壮たるしもべ。

知っているだろうけれど僕は遥。姫宮遥だ。

…ところで主人をこんなところに呼び出して何の用かな。」



「はい、妾の懸想する陛下のご寵愛を頂きたく御呼び致しましたの。」

そう言ってミラーカはどうやって立ち上がったのか動作の繋ぎ目が読み取りずらい動きで僕に迫る。

僕の頬に添えられた指の冷たい体温を感じながら僕は答える。


「……代わりに君を優遇しろ、と?」



「…そうして頂けるのでしたら甘んじてお受けします。

陛下の特別扱いは嬉しいですもの。」


「ちょっと止まりなさい。

遥さんに何をするんですかっっ。」


同時にミラーカの動きが止まる。


「くっ、忌々しい。」


「…まだ危害は無い。動かなくてもいいさ。」


「って遥さんも魅了されちゃったんですか?

操られては駄目です。正気に戻ってください。」



「摂理―――――――――君は僕がそれほど愚かで無様だと思っているのか?

僕はこの迷宮(ダンジョン)の主にして、君のパートナーだ。

少しは信用してくれ。

無理なことはしない。というよりもそんなことはそうないから。」


「ですが…。」



「摂理。」


「はい…、解かりました。」


「…流石は我が君。妾がこの愛を奉げるに相応しい御方。

けれど、他の女に口出しされるのは癪なもの。

例え正室の御方様であろうと。」


そう言うと共に、ミラーカの身体から影が広がり、

この広い部屋中を満たす。


「ちょっと遥さん見えません。

部屋が真っ黒です。何だか音もだんだん聞こえづらくなってきてま…」


「安心しなくていい。僕も油断はしないから。」

摂理の声も聞こえづらくなってきている。

原因は、言うまでもないだろう。



「妾としては油断してくださってもいいのですわよ?

さあ、妾に任せて身を委ねてください、さあ。」

その言葉と同時に先程僕の頬から離れた冷たい感触が再び甦る。


「…悪いけれど、僕は浮気はしない主義でね。

そう言う男になるつもりは無い。」



「古臭い女がお嫌いなら寝所は棺桶で無くても、

ベッドでも妾は…。」


「そう言う問題でもないさ。」



「―――陛下とは、もっと早くお会いしたかったですわ。」


「そうか、ところで僕の何が気に入ったのか参考程度に聞いていいかな。」



「ええ、初恋(アレ)は妾がまだ低級の吸血鬼(ヴァンパイア)だった頃。

ようやく自意識が付き始めていたころ、妾は気が付いたのです。

弱い妾が戦わずとも侵入者を倒して用意してくれる仕掛けがあることを。

…感動致しました。

妾自身も何度かその仕掛けに身を千切られたこともありましたが、

自然に治ります。

ここまで妾を助けて下さる御方にぜひお逢いしたいと。」



気品があると思っていた吸血女王(クイーンヴァンパイア)はもしかしたらただのアホの子だったのかもしれない。


「そのような目で見ないで下さい。

少し照れてしまいます。」



…しかもマゾヒスト。

流石上位吸血鬼、夜目が利くのだな。と思う発想の前にそのような感想が浮かんできた。


「それに―――――――――――――妾を殺した責任を取ってもらいたいですし。」


それは完全に別の人じゃなかっただろうか?

というより、


「…罠で自滅したのは自業自得なのでは?」


「…陛下はいけずです。

それに、それだけじゃないんですよ?」



「妾のこの髪の色、陛下に見覚えは無くて?」

この世界には金髪は決して少ないというわけではない。

しかしここまで美しい金髪は…。


「…人魚姫。」



「御明察です。流石は陛下。このまま他の女にとられるのは酷く残念です。

陛下が処分した2人の血肉を原料に生み出されたのが妾。

ある意味生まれる前に2度殺されたといっても過言ではないですわね。」


「僕は今までに殺してきた侵入者の数なんて覚えてないよ。」

おおよそ計算することはできるけどね。



「今までに食べたパンの耳の数を数えるのと同じですわね。」

…パンの耳が好きなのか。

酷くどうでもいい情報だ。


「ですが、流石に妾の両親の事は覚えているでしょう?」


「流石に勇者の事は覚えているさ。

実に有意義だったし、既死者(アンデッド)にしたからね。

この罠部屋は気にかけていたつもりだけれど、

気が付かなかっただけでもしかしたら生きているかもしれないしね。

存在を抹消して完全にポイントに消えたのはあの少年だけだから。」

抹消する事だけが『処分』ではない。

優秀そうなものは残しておいてもいいからね。


「はい、(しんで)きています。ほら、そこに、

……お父様、お母様。」

そうか、生きてはいないからね……

しまった、そういうことか、だから視覚と聴覚を塞いだ。

…寸前まで接近を気が付かせない為に。

罠にかけられていたのは製作者(ぼく)のほうか。




「初めまして。殺されてぶりかな。」


「そうなりますね。」





死堕勇者(アーサー)  RANK B

死堕人魚姫(オンディーヌ)  RANK B-

共に僕が殺した元勇者チームのメンバーだ。





腐っても、死んでも勇者。正義の心は消えてはいない、か。

もはや勇者としての加護も何もないだろう。

しかし、娘のランクAの吸血女王(ミラーカ)よりは低ランクだけれど

その生前の戦闘経験は馬鹿にはできない。

それに、もし、反逆を起こすつもりなら吸血女王(ミラーカ)自体も敵に回っていると考えても不思議ではない。


「手に入らないならいっそ…。」


「僕達の恨みを理解しろとは言わない。」


「夢もあったのに…。」


やはりね。この可能性は想定していた。

けれども策はある。

…出口の場所は把握している。

出てすぐに声が通じる場所で摂理に今度こそ完全に処分させるか、

戦闘行動になる前に転移してもいい。


「脅えた表情も見てみたかったのですけど、

こんなときにも余裕を崩さない所もやっぱり素敵…。」


「でも、ディーヌと一緒にいられれば僕はそれでいいし?」


「私も子供が出来てアー君と家庭を持つ夢も叶いましたし?」




死してなお正義の心を持ち続ける勇者パーティーは、

実際ただのバカップルだった。

娘が色惚けするのも解かる気がする。


「略奪愛よりも純愛がしたかったのですけれど…。

諦められない…。」


「僕もママもミラちゃんの恋を応援するからね。」


「そうです。吸血鬼らしく真っ直ぐ頑張ればいいとママも思うから、

諦めては駄目ですよ。」




「……。」

やはり、この罠部屋は悪質だ。







その後、取り敢えず堕勇者家族(アンデッドファミリー)が、

本気で敵対するという訳ではなかったようなので、

僕にはその積も値は無いということだけはっきりと再度言って管理室に戻ることにした。


あの暗闇の中の事は取り敢えず簡易には摂理に説明して置いた。

暗くなったのはあのミラーカの所謂サプライズということで、

両親に紹介させられたと。


助けろとは言っていないけれど、

全く何か対処行動を取らなかった摂理に浮気を責めるような態度を取られたのは、

実に解せない。

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