第62話 不平等はぁ悪ではないぃぃ!!この豚がッッ!!
僕が日本刀を躱し、薙刀を構えると、
「ひいぃぃ、こんなの不公平だ、絶対不公平だ。」
そう言って男はこの管理室の出入り口を出て行った。
この世界は不公平?
人は不公平?
そんなの―――――――解かりきったことじゃないかな。
芸術も、商売も、勉強も、スポーツも、恋愛も、結婚も、
皆条件がいい方が得をする。称賛される。
その為に努力し、競争するのではないだろうか?
どれだけ冴えない男でも異世界に行けばたちまちモテモテになるというのは、
現実的に考えれば間違っている。
駄目な奴は何をやっても駄目、何処へ行っても駄目。
そういうことさ。
集合写真に写る自分を見て、
写真写りだけじゃなくて鏡映りも悪いだろう?
そんなことよりも、
「摂理、解かるよね。
彼がこの場所を逃げた、ということは…。」
「…?……っ!! そういうことですか。」
理解が早い部下を持つと助かるよ。
全てを言わなくてもいい。
そう、この管理室にはコアは存在しないということだ。
この一つ上の階層にでもあるのだろうか?
悪質な仕掛けがあればそれはそれで危険だろうけれど、
彼がそこに逃げたということは少なくとも、
管理者である彼にとってはある程度安全なのだろう。
だったら、
「楽勝そうだね。」
「…だったらいいですね。」
そう言って僕達が上った第10階層は、
電流草が疎らに茂り、
電気の金網や電気のガスを出す、
彼が予想以上に迷宮主としての才能が少しはあったことを示すエリアだった。
「意外にやるものだね。摂理、僕は正直に言うと実はなめていたよ。」
「…知ってました。」
そうか、やはり君は優秀だ。
そう思っていると、
「死んねぇぇぇぇ!!!!」
そう言う男の声と共に、臨界溶融羽豚が襲ってきた。
早速か、
「いいのかな?」
「何がだよっ。」
「借金取りに払うポイントは残っているのかな?
残りの残金は?貯金はしているのかな?
返す当ては?今回の返済予定額は?
破産の準備は、OK?」
「お前を倒してポイントにすれば問題ないっっ。」
考えるね。少し君の評価が上がったよ。
アオミドロからミジンコにランクアップだ。
「…摂理、先程の術式を再度あの豚にぶつけてくれ。」
「はい。天降束滝!!」
真上から突然の洪水を受けた臨界溶融羽豚は、ふら付き、
墜落しながら電気の金網に引っかかった。
「BBBUUHFFFIIIII!!!!!!!!」
文字通り豚の様な悲鳴を上げながら痙攣していた。
多分助からないだろうけれど、駄目押しを重ねよう。
臨界溶融羽豚はやはり豚だけあって皮膚は柔らかそうだ。
「摂理、切断できる術式があればそれを。」
「はい。掃原刃。」
摂理が杖を横に振るうと、
その延長線上に飛んでいく空気の刃が臨界溶融羽豚を傷つけた。
傷口は浅かったけれどその代わりに傷口から腸のようなものが突き破って出てきた。
いや、腸でも寄生虫でも…いやある意味寄生虫か。
アレはーーー。
「御剛沙蚕…。」
「臨界溶融羽豚の中に仕込んでいたようだね。」
仮に臨界溶融羽豚を切り裂くなどして近接戦闘で片づけた時の罠として。
いや、問題はそこではない。
確かにそれだけの罠を咄嗟に用意していたというのは又、評価をミミズ位にあげなくてはいけないだろう。
けれどその前に、
「…禁書記載モンスター持ち、だと?」
だとすると他の危険なモンスター、
僕の切札程ではないだろうけれど、
使える何かがきっと―――。
「そうさ。この禁書に唯一描かれていた御剛沙蚕と消化させずに体内に仕込む技能、
そして融合技能が僕の力だ。どうだ、驚いただろう。
今更後悔しても遅いぞ。」
…驚いたよ、自分から他に手札が無い事を暴露するなんて、
いや、これは逆に嘘なのではないのだろうか。
まあ、そんなことはどうでもいい。
僕は電気が至る所に流れるこのフィールドに目を向ける。
「さて、次は彼にも豚のように鳴いてもらおうか。」




