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第58話 赤巻紙 青巻紙 きまきがき…今、誰か僕を笑ったか?

目論み通り、男は空便受付に行き、自分の所で手に入れた侵入者の資金か、

自分の所の迷宮(ダンジョン)のアイテムを渡し、

大羽豚(ビッグバードピッグ)便(パック)

通称ビバピパと呼ばれる調教された空飛ぶ豚数匹に引っ張らせた籠の空輸の業者に何処かに運ばれていっていた。


ビバピパは下級庶民の空の便であり、

穏やかな飛行速度――――鈍足と、

温厚な微笑ましいモンスターによる輸送―――――他の飛行モンスターに襲われ墜落の危険有、

という特徴を持ち、通常は安い積み荷の運搬に使われる。


グレードが高いものには、

専門の高度な蛇使いによる、

高級空鎖蛇(ヴィップバイパー)(ヴィヴァシティ)便(パック)という、

特殊なシールドで空気抵抗を削り速い速度で空を飛べる代わりに、

身体を回したり、仲間の周りを回ったりする癖がある為、

専門の飼育が必要な割高便、

通称ヴィバヴィパが存在する。

こちらは1便しかない。


この高級空鎖蛇(ヴィップバイパー)は、

クリアリプルスの少し離れた場所にいる希少種を僕が殺した際に、

生き残っていた2匹の仔ヘビをそれぞれ別の空の瓶に詰めて、

僕の命令でクリアリプルスで情報収集している摂理に持ち帰って見せたところ、


摂理が、

「えっ?蛇酒?…その…これって今夜、そういう…

私、その、そこまでの準備が…。」

と、よく解からないことを言いだして真っ赤になってふら付き始めたので、

瓶をその場においたまま摂理を連れてその場を去った時の仔ヘビらしい。


清漣の女神が授けてくれた天の贈り物という名目で、

運営と宣伝がされているようだ。

女神饅頭とか、女神煎餅などというものも販売されている。

勿論許可を出した覚えもない。

因みに名前の通り(さざなみ)(めがみ)のシンボルだそうだ。




高級空鎖蛇(ヴィップバイパー)は他のモンスター同様、人間には制御不可能なモンスターで、

瓶から出されて移された目の細かい檻の中で暴れまわっていたところ、

無き冒険家の伯父ビツカイーがとってきた僕の迷宮(ダンジョン)の中のアイテムや素材でできた笛を持つ少年カノンが、

自身の先天性レアスキルと合わせて偶然に高級空鎖蛇(ヴィップバイパー)を制御できたのが始まりらしい。

やたら装飾が付いた商会説明にそう書いてある。




長女は薬師。

末の王子は蛇使い。

……小国とはいえ、政治以外に精を出し過ぎるのはどうなのだろうか?

まあこの国が滅びようと繁栄しようとその興亡などどうでもいい。

この国が消え去っても迷宮を発達させる策など幾らでもあるのだし、

国が1度滅びようがどうなろうが、

クリアリプルスの代わりなんて幾らでもあるから。





ビバピパ、ヴィバヴィパ。

どちらもクリアリプルスに本拠地がある。

僕が空輸の発想をそれとなく流し、そう誘導した。

元々、大羽豚(ビッグバードピッグ)を使った移動や輸送は存在していたけれど、

それを組織的に流通経路として維持する商会は無かったし、

そしてその高速便など存在していなかった。


この発想は大きく3つの利点がある。


1つは僕の迷宮(ダンジョン)近くにあるクリアリプルスの発展。

この事は侵入者の質と量の上昇を促す。


2つ目は情報量の増加。

これは遠くの人々が交流しやすくなればそうなる。

この迷宮(ダンジョン)の事が知られやすくなり、

他の情報も入りやすくなる。


3つ目は新規迷宮主狩り。

僕の様に人気が無いところで、

もしくはその土地にいる人種では戦えない仕組みになっている他の新規迷宮主を潰すため。

競争相手は少ない方がいい。






ちなみにビバピパとヴィバヴィパ、日本人が聞いたり、発音しわけるのは少しだけ難しい。

「摂理、ビバピパとヴィバヴィパを交互に5回ずつ言ってみて。」


「ビバピパ、ヴィバヴィパ、ビバビパ、ヴィバヴィパ、ビバピパ、ヴィバヴィヴァ、

ビババパ、ヴィパヴィパ…あれ?」

天使でも難しいそうだ。



「もう一度やります。」


「いいよ。」



「ビバピパ、ヴィバヴィパ、ビバピパ、ヴィバヴィパ、

ビバパプ、ヴィバパ…遥さんもやってみてください。」


下らない。

「ビバピパ、ヴィバヴィパ、ビバピパ、ヴィバヴィパ、ビバピパ、ヴィバヴィパ、

ビバピパ、ヴィバヴィパ、ビバピパ、ヴィバヴィパ。

簡単だよ。摂理、次までに成功したらご褒美をあげよう。」


「本当ですか?

では、ビバピパ、ヴィバヴィパ、ビバピパ、ヴィバヴィパ、ビバピパ、ヴィバヴィパ、

ビバピパ、ヴィバヴィパ、ビバピパ、ヴィバビバ。

―――――駄目、ですか?」



「駄目だよ、最後に失敗したからね。」


「そんな……。」



「ご褒美は無しだ。別に早口言葉で言えとは言っていないから、

ゆっくりいえばよかったのにね。」


「そうでした…。」



爆発的に大流行したビバピパとヴィバヴィパ。

けれど更に金がある者は専用の個人用大型飛行生物を調教する例もあるらしい。

ただ、失敗して乗り物に喰われる例もよくあると聞く。




あの迷宮主(ダンジョンマスター)が現在空いていたヴィバヴィパを選ばなかったのは、

それさえも払う金が無かったということなのだろうか、

流石にそれはないだろう。

ただ単純に乗り継ぎの関係などがあったのだろう。

そう、考えたい。


けれども、元が無人の土地とはいえ、

大陸のほぼ中心に近い高海抜の土地で、

現在では高い資金力を持つクリアリプルスでは、

大陸の各方面の大国に向けた便を出している。


………もしかすると本当に駄目な奴なのだろう。

正直どうでもいい。

僕も彼が迷宮主(ダンジョンマスター)でなければここまで関わるつもりもない。



空を飛ぶというよりは浮かんでいる安いビバピパは、

モンスターにしてはそこそこ知能は高いものの強さはそうでもない下劣烏(ヴァイラクロウ)達にも襲われている。

けれど大羽豚(ビッグバードピッグ)の飛行能力では鎧などをそう着せるわけにもいかない。

精々金属を織り込んだ布を巻く程度だ。

籠を吊り下げる糸にも金属を織り込んでいるらしい。

それで大分効果は変わるけれど、

その代わりに乗組員の方に下劣烏(ヴァイラクロウ)達の注意が行くのは想定できるだろう。

その心構えをできていたのは添乗員のおじさんだけだった。

本当に彼は駄目な男だと思う。


因みに僕はより高い位置からその風景を摂理に抱えてもらいながらその様を見ていた。

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