第5話 モンスターの設置について
翌日
早速僕はこの美しい砂浜に汚れたモンスター達を放すことにした。
僕はあるページを開いた禁書を片手に告げる。
「生き物よ水の中に群がれ。産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。」
僕が最初に呼びだしたモンスターは、
『礁湖雀蜂 幼虫・姫種』RANK E+
海水適応型の雀蜂のモンスターの幼虫だった。
虫というにはどこかしら気品があるように感じる。
姫種、という肩書は伊達ではないのだろう。
此方をうかがう様子に何か親近感を感じる。
ふと横にいる摂理を見ると、苦虫を潰したような何ともいえないような表情をしていた。
……虫が苦手なのだろうか?女の子なのだから仕方がないのかもしれない。
「怨敵…いえ、今は私も、うん、それが…―――――――」
「どうかしたのか摂理。」
「イッイエッナンデモナイデスヨー。セツリッチダヨー。」
うん、完全にどうかしているがまあどうでもいいか。
「う~ん虫って言うともう少し気持ちが悪いものかと思っていたのに、
案外そうでもないのですね。」
摂理が覚悟を決めた様に礁湖雀蜂に手を伸ばすと、
思いっきり頭で弾かれた。
……気安く触るなということだろうか。
産まれたばかりの幼虫の大きさだからまだよかったものの、
もう少し大きくなっていたら思いっきりふっとばされていたのではないだろうか。
……天使って死ぬのかな?
利用価値があるものを敢えて手放そうとは思っていないけれど。
まあ、その時はその時だ。
摂理から目を放して礁湖雀蜂の方を見ていると、
早速礁湖雀蜂は浅瀬の方に入っていった。
海水の波を受けてご満悦そうな礁湖雀蜂を見ていると、
昨日の僕と摂理を思い出した。
………そう言えば、
「摂理、大丈夫?」
お母様によく似た姿が傷つくのは忍びない。
「えぇ、なんとか。天使の身体は丈夫なので。」
「それは重畳。」
いつか敵に回った時の為にスペックを知っておくのは悪くは無かったけど。
「それにしても私達管理者に逆らうほど気が荒い個体なのか、
襲ってこない分大人しいのか解かりませんが、戦闘力が高そうには見えませんね。
これで消費ポイントは100。
最初の遥さんのポイントが666ptだったから、
残りポイントは昨日の浅瀬生成で100pt、
昼夜設定の100ptですが1日で100pt回復していましたので現在からみると実質0pt。
後は生活用品で10pt。内1pは昨日の海セット。
それと今回の100pt、
それに初期アイテム設置料が60pt、
6pt分のモンスター用追加飼料で残りは390pt。
言い忘れてましたけど、1階層しかないときは施設関連はいろいろお安くなるんですよ。」
「割と今回のポイントの消費はかかったね。」
でも恐らく僕の初期ポイント666ptから見ての話だから、
今回かかった100ptという数字は、決して内容に対し多くは無いのだろう。
それに世界を通していない分中抜きのマージンもかかっていないはずだ。
「他におすすめのものはあるかな?」
「気象関係や地形関係もありますが、まずはモンスターとトラップかと。」
「ふーんそうか。じゃあ、四季を加えるのは?」
「150ptです。」
「それもだ。」
「わかりました。」
残り240pt。
後は、礁湖雀蜂のエサとなるザコを数匹。
あんまり強いザコを置くと100ptかかった礁湖雀蜂が無駄になっても困る。
トラップはモンスター達を巻き込んでも拙いので、
ダンジョンが更に広く見える上に、『ある場所』への注意を遠ざける為に、
50ptのループステージトラップのみを購入。
これで端までたどり着いたときにはもう反対側に行きつく仕掛けとなる。
「モンスターの自然発生は?」
「あります。最初のモンスターを配置以降、
地形に合わせたモンスターが発生します。
ポイントを使って発生率を強めることもできます。」
「無くすことは?」
「無料で出来ますが、発生率を又上げる時にはポイントがかかります。」
「問題ないね。お願いしよう。」
おそらくこれで管理維持費も減るし、ね。
残りは190pt。
ザコにでも使おう。
どんなのがいるかな。
………凄く安いですね。
流石ザコ。
御剛沙蚕 RANK F+ 消費ポイント10pt
SALE 今なら5匹セットで30pt。
ありえないこのお値段。
「うわ~っ。気持ち悪い。」
御剛沙蚕はミミズのようないでたちだ。
摂理が言うとおり、このモンスターには容姿については魅力が無い。
先程、案外虫が気持ち悪くないと言った彼女がこういうのだからその通りなのだろう。
だが、カタログの説明を見るに、
無性生殖で単体でも増えていくという説明が実にいい。
浅瀬の海藻か何かでも育つだろう。
これを5匹。
後は、本命のレベルが上がってから逐次投入していこう。