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第44話 『恋人』のカードは出なかった。

「摂理、気晴らしに外へ行こう。」


「はい。遥さん。」


僕達はいつものやり取りの後、

遠くへ行くことにした。

けれども、集落から少し離れたあたりの場所で僕達は立ち止まることになった。

何故か摂理が砂糖とお酒をこっそり持って行っていたが、

何故だろうね。


「その、あわよくば…といいますか、

心の準備が出来てきた、といいますか…。」

よく解からない。

まあ、それよりも…、



「そう言えば一つ聞いていいかな。」


「はい、なんでしょう。」



「『アレ』は、何かな。」


僕達の目の前の何の変哲もない枯草の続く草原の中に、

一つの扉があった。


「『放浪する扉』…、迷宮(ダンジョン)の成れの果ての一つです。」


迷宮(ダンジョン)の成れの果て?」



「はい。遥さんの初期ポイント量。回復量、回復率成長度、最大値増加速度…、

そのいずれをとっても極めて高い、通常では考えられない数値になっています。

けれども一般の迷宮主(ダンジョンマスター)は良くて、

初期ポイントは100pt、回復量は1日10pt、成長速度は回復では1週間で5pt、

最大値は1ヶ月で10pt程度の増加です。中には成長最大値が頭打ちになったものもいたようですね。

時折例外もありますが、

精々才覚のあるものでもその2倍程度でした、――遥さんが来るまでは。」


「少ないね。」



「いえ、遥さんが異常に多いだけです。

…最初の1週間の迷宮使用料10ptは、

聞かれなければ答えてはならない仕組みになっていますので、

最初の1回目は『ツケ』にしてもらった者もいないわけではありません。

その中でも才覚のなさそうなものはその場で『ツケ』が認められず破産となり消滅(くわれ)しました。」


「なるほどね。」



「なので迷宮主の中には、積極的に外のモンスターを狩り、

登録を増やしたり、入ってくる侵入者を倒すバランスを考えたりするものが多かったです。

遥さんの様にその時は人々が済んでいない場所に迷宮(ダンジョン)を立てては、

誰も来ずに破産したというものもいます。」


「そうか、何と無く見当はついたよ。

あの扉は?」



迷宮主(ダンジョンマスター)を失い、

天使(サブ)が元からいなかったか、それすらも消滅したかなどして、

けれどもコアが破壊されていなかった場合に残った、廃屋です。

管理者がいなくなった迷宮(ダンジョン)は成長を止め、

モンスターの補充などの一種の迷宮(ダンジョン)自身の代謝を落とし、

消え去る間際には弱り切った時は1階層だけにまで戻し、

新たなる住民(モンスター)や獲物を探し、彷徨います。」


「難易度は?」



「様々なものがありますけど、総じて低い傾向があります。

…ですが、最近はそうでないものも。

何かによる迷宮主(ダンジョンマスター)代役となった天使のみの消失。

コアには何も手をを出していないことが還って不思議な事象ですが、

この件で天使がそれなりに引き上げた『迷宮(すまい)』が、

『放浪する(あきや)』に為り替わっているようです。」

コアには『手を』出してはいない、か。なるほどね。




「そうか、――――――――じゃあ行こうか?」


「遥さんっ?正気ですか?」



「当たり前じゃないか。

僕は何時だって狂気(しょうき)さ。

そうでもなければ迷宮主(ダンジョンマスター)なんて理性(あくま)的なことを続けてはいられない。」


「はあ…。解かりました。ですが危なくなったら帰りましょう。

愚かな男を支えているつもりになっている女が一番愚かだとは聞いたことがありますが、

今の私はきっとその女性を笑えないのですね。」



「そうだね。でもいいんじゃないかな。

『愚者』は『世界』にも縛られない。」


「…ふふ、遥さんは『皇帝』ですね。

傲慢と支配の象徴。最たる厄の『塔』の(ダンジョンマスター)に相応しい…、

いえ、やっぱり『女帝』でしょうか?ヴィジュアル的に。」



大アルカナ『女帝』の正位置は繁栄、そして家族。

その逆位置は軽率さと挫折と嫉妬。


どうでもいいことだ。

僕が敗北など、決してするわけがない。

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