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第2話 利用規約

「では遥さん。」


「何かな摂理。」



「どんなダンジョンを作ります?」


「そうだね。考えてなかったよ。」



「そんな。意外とお馬鹿さんだったなんて。」


まさか、この世界の情報も知らないままにダンジョンを造ったって失敗するのは目に見えている。

魔法が大して使えない世界で魔法系のダンジョンだとか、

科学全盛期の世界で複雑なだけのダンジョンとか作った所で待っているのは破滅だけ。




「マスターに対して随分な口の聞きようだね。

…謝罪はいい。

謝罪の代わりに質問に答えてくれるかな。」


「はい。私はしもべですから。」



誰の、とは敢えて言わないのだろうね。

まあいいさ。


「ダンジョンの壁の強度は?」


「ダンジョンは冒険者によって破壊されることはないといってもいいです。

あって壁の破損程度かと。それも回復させることはできます。」




回復する、ではなくさせる、か。それに何かしらの代価を払うことになるのだろう。

維持、修復にもコストはかかる。

…常に収益が必要な訳か。



「回復の代価は?」


「マスターの存在力、領域力、通称・ポイントです。大体あらゆるものに使用できます。

一応破産するのでなければ借金も可能です。」



但し、強制支払い時期については未定、か。

全く恐ろしい話だね。

だが、怪我だっていつかは治るのだから、恐らく…



「ポイントの自然回復は?」


「一応はあります。」


だろうね。体力だって食べて寝れば回復するんだ。




「勝利条件は?」


「特に設定はありません。」




「敗北条件は?」


「ポイントの破産。若しくはダンジョン成長の核となるダンジョンコアの破壊。

言うまでもないかもしれませんがダンジョンマスターの死亡もです。」


なるほど。ギャンブルは引き際によっては収支がプラスに傾くけれど、

その引き際を客に見つけさせないのがいい胴元ということか。

勝利条件があやふやで敗北条件だけは設定してあるのはそういうことか。

ギャンブルであれば採算が取れそうになければ参加しないこともできるのだろうけど、

此処に連れてくるのは半ば強制だからね。

ギャンブルでは周りにカモが居なければ自分がそのカモだと聞く。

早く相手を確りと見定めてカモにしてしまわないとね。




「最初の方とか侵入者は強くない?」


「ダンジョンは徐々に成長していきます。

成長のたびに階層が増えていきますが、最初の1階層だけの時はまだダンジョンにコアが存在しません。

それまでに頑張ってください。」


なぜ、最初の1階層のダンジョンにコアが無いのに機能しているのだろう。

ダンジョンに本来コアは必要ない?…まあいいか。



「ダンジョンは外界から影響される?」


「基本的には全天候型で強度も問題ありません。」

上等だね。




「作れる地形は?」


「浅瀬、平野、草原、小川。コストに差はあるものの色々ありますが、

火山や深海など極端な場所はある程度ダンジョンが成長してからでないとできませんし、

そもそも消費ポイントも高いです。」




「ダンジョンを立てる場所は?」


「大体どこでもいいです。場所によってやや使用する地形のコストは変わりますが大差はありません。」





「この世界の世界観は元の世界に即して言うと?」


「中世を元にしたファンタジー世界です。」


……なるほど。




「最も多い人種は?」


「ヒト族です。亜人もいます。」


よくある話か。



「元の世界でやると大問題だったけど特定の人種の立ち入り禁止は?」


「可能です。一定レベルによる制限、種族による条件、

その他にもいろいろあります。2階層以降が出来た後からはポイントのコストがかかります。」

1階層の時には制限はないのか。




「ダンジョンの成長速度は?」


「まちまちです。遅くする分にはできます。」




「何もしなくてもダンジョンのコストは?」


「自動的にアイテムを作るためにかかりますが、

一定以上アイテムを作った後はそれ以上作らない為かかりません。

しかし侵入者にとられた場合、再生にポイントを消費します。」





「魔法の価値は?」


「拳銃並から大砲クラスまで。」


魔法は十分な戦力になるのか。

だが、バリエーションはどれくらいあるのだろうか?




「属性は?」


「火、水、電気、土、氷、光、闇、風、その他いろいろあります。」

……魔法は十分に考慮の対象になりそうだ。




「この世界のモンスターは?」


「ライオンやらドラゴンのようなものまで。

高位のモンスターは成長したダンジョンであったり、

ポイントが多く必要であったりします。

ローンを組む方もおられますよ?」


そういったものはコストが高くつきそうだ。

そうやって借金をさせて破産に追い込む手もあるのだろう。

もっとコストが低そうなものは…。




「他には?」


「魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、無機質、非物質。

何でもあります。」


そうか。



「じゃあ昆虫は?」


「あ…ります。」



歯切れが悪いな。

妖しいのか罠なのか?

…単純に苦手なだけなのかもしれない。



「呼び出せるモンスターの制限は?」


「RANKが上はSSSから下はFまであるのですが、

当初はE+以下までとなります。

制限や適性、相性などによって呼び出せないモンスターもいますが、

ポイントを使って初期制限解除をすれば、

ランクD以下からカタログに載っている範囲で選ぶこともできます。

ランクDなら低級のドラゴンも呼べますよ。」

それ一匹を呼んだらポイントが無くなるってオチは無いのだろうか?

そうでなくともドラゴンの食事の必要性は?

…コストがかかりそうだ。

……それとも単純な話逸らし?

ドラゴンという目玉で先程の話から…。




………それとは関係ないけど、


「そういえばこの僕は本物?」


「その質問にはお答えしかねます。」



「そうだったね。そう言う質問は開始前に聞くべきだった。」

…所で他にも特典はあるのかな。此処まで親切に答えてくれたのも、

特典の一部だと思うんだけど。」


「はい。特典5簡易相談相談権です。」

多分それは誰にでもついてそうな特典だと思うのは僕だけだろうか?

それともほかのマスターは摂理の様なサブコントローラー無しでやっていっているのだろうか?



「他には?」


「ランダムプレゼントです。……手を、手を伸ばして掴んで下さい。」


何を?

取り敢えず前に手を伸ばしながら、

そう聞こうとした時だった。


僕の手は何かを掴んで、その『何か』はそこに顕われていた。


『禁書 ■■■■■■■■■■■』


それは一冊の本だった。




「な『原書』っっ?いえ、そのレプリカ!?」


「どうかした?摂理。これは君『達』の想定外なのか?」

それともそれもただの演技か?

どっちでもいい。



「これはどう使うものなのかわかる?」


「これなら、これなら私は…。」



どうかしたようだね。

「摂理、バグった?」


「なっ、女の子に対して失礼ですよ。」



「それについては謝るよ。

…ところでさっきの質問の答えは?」


「解かりません。」



「そうか、残念だ。…僕には使い方が何故かよく解かるけど。」

これは一種のカタログだ。

この世界が摂理を通してくれるカタログとは別のカタログだ。

世界のカタログがAMAZ●Nだとしたらこのカタログはセシ●ル見たいなものだ。

範囲は狭いが専門性と質は高い。


使い方は、このカタログを通じ、

この世界を通じたように見せかけてポイントを使ってモンスターを購入するだけ。

AMAZ●Nで売ってない高級下着や専門的な下着がセシ●ルなら買えるのと同じだ。


何より世界側が把握してなさそうで、摂理の驚いた顔が見られたので少しすっきりできた。






「ところで大まかにダンジョンの方向性は決まりましたか?」

わざとらしいほどの話の逸らし方だ。

これは演技か?素か?

……どうでもいい。どちらでも利益を呼び込める方に話を進めていくだけだ。



「ああ。その前に摂理。」


「はい、何でしょうか?」



ここからは大事な話だ。

盗聴の心配は、世界がある意味敵な時点でどれだけ警戒してもアウトなのかもしれないけれど、

それでも少しでもそのような類のリスクを削るために摂理の耳元に口を近づける。





「摂理は、僕のものだよね。」


「はっはいぃぃ!?……はいぃ。」

なぜ今までで一番慌てた様にしているのだろう。

ここで赤面をする演技を取る必要はあったのだろうか?

……お母様はいつでも優雅に微笑んでいられたのに。

まぁ摂理がなぜこのような態度を取っているかなんてどうでもいいか。


そうか、サブコントローラーはマスターの物か。

よかったよ。

てっきり(コントローラー)以外にもダンジョンを好き勝手出来る端末(サブコントローラー)があるという意味かと思っていた。

……その可能性はまだこの段階では否定できないかな。


「ならば幾つか言わせてもらおうかな。

まず、僕に服従してくれ。

そして僕以外のものに従うな。

神様とやらとも接触するな。

構わないだろう。摂理は僕のものなのだから。」



……返事が無い。

先程よりも赤くなって湯気まで出ている。

目も虚ろだ。

……権限を越える内容を提示されて処理が追いつかなくなっているのか?

…それともその振りなのか。


「摂理、僕の提案に返事をくれないか?」



「あの、不束者ですが宜しくお願いします。」


「大丈夫。その分は僕が十分にカバーできるから。」




「……、一応言っておきますけど、私は…世界に命じられたことをただ代弁しているだけでなく、

世界のしもべではありますが…、その、あの、その前に一人の女の子なんですからね。」


「そうなの?問題ないよ。別に。」

別に大した問題でもないし。


その後も、天使と人間が結ばれる話とかってよくありますよね。

とか、提案って英語でなんて言うか知ってます?

とかブツブツ言っていたような気がするけど、

確かエノク書などに登場する天使、

グリゴリ、もしくはエグリゴリは人間と結ばれた結果地上に悪を振りまいた話があるのは知っているし、

提案はPROPOSEだということくらい中学生でも知っている。

下らない。なぜこのタイミングで英語力を測られるのだろう。

クイズイベントでポイントがアップされるシステムでもあるのだろうか?

後で聞いておこうか。




「決めたよ。」


「そんな決断をそこまで簡単にできるんですか?…でもそういうとこも…。」



「因みにどういう場所があるかな。」


「そうですね。南の島というのも…。」

少しかみ合ってないような気がしないでもないけども、

ちゃんと僕の意図どうりにこの世界の地図まで用意してくれた。




「大陸の中央付近から少し離れたこの場所。

この場所にダンジョンを立てよう。第一階層は『浅瀬』にしよう。」



「えっ?一体何の話をしているのですか?」



「ダンジョンマスターとその僕がする会話なんて一つしかないだろう。

先程から今もこれからも、徹頭徹尾ダンジョン経営の話さ。」

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