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外伝 とある勇者の軌跡 2次試験前日

「薬草…食べたんですか?」


「ああ、食べた。」



「どうやって食べたんですか?」


「揚げたり、そのまま魚の身に巻いて食べた。」



「で、美味しかったですか。」


「先程も言ったが大層美味だった。

毒が抜ける様なというか、憑きものが落ちる様な爽やかな味だった。

父も喜んでいた。」


薬効としては解毒効果はないし、味に対するコメントとしては些か変な気がする。

そしてガレクスさんだけじゃなくてガレクスさんのお父さんも味覚障害なのか。

いや、それは失礼な考えだ。

ガレクスさん達は見ての通り竜人。

それはきっと、味覚だって僕達人とは違うのだろう。

流石亜人系で最強種の一角とも名高い竜人種。

味覚だって一筋縄ではないのだろう。


「なあ、それ、オレにも…。」


そう言いだしたレイウスさんの口の中に薬草を押し込んでみた。


「あっ、ホントだ。これ超うめ―――――って超にげーーよっっ!!」


竜人の味覚ってそうなのかと思い始めたところで、

やっぱりガレクスさん達が特殊な可能性も見え始めてきた。

折角なのでリアさんにも勧めてみたところ、物凄い勢いで丁重に拒否された。


これを見るとどうやら竜人の味覚の中でもガレクスさん達が特殊な例の様だ。


「俺が好みだからと言ってお前の好みとは限るまい。

第一、どうして資金も道具も用意せずここに来た。」


「それは…兄貴がそうだったから…。」


「俺はそれでも勝ち抜けるという自負があった。

お前にはそれがあったのか?

いや、あったのかもしれない。

だがその自負には結果が結びついてはいない。」


「でもオレはっっ!!」


「俺を目指すぐらいなら、伝説の勇者を目指せ。

間違った道標に従う必要は無い。」


「それでも兄貴はオレの目標なんだ。」


そうレイウスさんが言ったとき、一瞬ガレクスさんが薄く微笑んだように見えたが、

それは猛獣が笑う行為を威嚇として使っていることに似たような笑みに似た何かだったのだろう。


一瞬で周囲の空気が重たくなったような気がした。


「目標と言うのは達成するためにある。

お前には俺を越えた姿が見えているのか?

…いや、愚問だな。

お前は一生俺の後ろを歩き続ける程度の目標しか持っていない。

そんなぬるい目標など捨ててしまえ。」



そういってガレクスさんが睨みつけるとレイウスさんは目を逸らした。

それを見て用事は無くなったとも言うようにガレクスさんは大量の薬草を僕から買っていき去って行った。


その後、受付のお姉さんが先程1次試験を合格した人たちに2次試験を発表した。


「皆さんにお知らせです。2次試験は明日迷宮にて実施します。

皆さんには迷宮の中に入って10体以上のモンスターを倒して帰ってきてもらいます。

モンスターを倒した証明は今から配るアイテム収納箱(ストレージボックス)に倒したモンスターを入れて持ってきてもらうことができます。

収納箱(ストレージボックス)は中に大きさや重さに関係なく物を10個まで自由に出し入れできる便利アイテムですが、

この試験が終わった後は返してもらいます。

けれどご安心ください。Dランクになったら再び皆さんに貸与されます。

収納箱(ストレージボックス)に入っていたものの合計の大きさと重さを総合して考えて上位10名が2次試験合格です。

今回はチームを組んでも構いません。

ですが冒険者であり、自分と同じか、より低いランクの冒険者であること、

最大3名であることが条件です。

では、用意が出来た人から受付へどうぞ。

なお、先着20組以降は受け付けません。」





モンスターを10匹倒して、

収納箱(ストレージボックス)の内容物の大きさと重さで勝負…か。

って、そういえば僕はすでに予選落ちだった。


「レイウス、行くわよ。

それと薬売りのあなた、あなたもいいかしら?

以前会ったことをさっき思い出したけど、

たしかあの時も名前は聞いてなかったわよね?」


僕の事を思い出してくれたみたいだ。

だけど…。


「僕も1次試験に落ちた組なんだ。」


「あら、チームメンバーは1次試験合格者に限る、なんて話は聞いてないわ。

それより早くしないと締め切られちゃうけど、どうする?」


成程。

…チャンスがあるのならそれに乗らない手はない。


「此方こそよろしく。

僕はゼトリアス・アルベラティ。

ゼットと呼んでほしい。」


「此方こそよろしく。

こっちのボロボロなのは幼馴染のレイウス・バハムティア。

私はリア・メスカリウスよ。」


「おい、この薬屋、1次試験落ちたんだぞ。大丈夫か?」



「あなたもでしょ。」

全く持ってその通りだと思う。

初対面の人にはさん付けで呼ぶけれど、彼には君付けにしてもいいような気がしてきた。

「僕は戦闘は怖いけれど、この試験でトップにでる方法を思いついたんだ。

きっと勝てる方法をね。」


「ホントかよ?」



「信じなくてもいいから、取り敢えずこの収納箱(ストレージボックス)には戦いに必要なもの、

特に武器をありったけ詰めておいて。回復アイテムは大丈夫。僕がたくさん用意しているから。」


「いや、もう痛い薬は嫌だ。自前で用意しておくから別にいいや。」


折角摘み立ての新鮮な薬草を持ってきたのに、無碍にしなくてもいいと思う。

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