外伝 霧の樹海の雌豹(小)
おかーさん、おかーさん。
ボクはおかーさんといっしょに眠りながら、
そして死んだはずだった。考えたくないけどめいちゃんに見捨てられて。
そして気が付いたら1匹でここにいた。
もしかしたらここは夢の中なのかもしれない。
それとも最後の瞬間の方が夢だったのかもしれない。
よく解からない。身体もなんか違うし。
取り敢えず、おかーさんを探しに行かないと。
ボク一人じゃなんにもできないし。
とぼとぼと歩いていると、ネズミ? 見たいなのがいた。
ネズミなのに大きくて丸い。まるでボールみたいだ。
凄く―――――――面白そう。
僕が近づくとコロコロと転がりながら逃げていくネズミ――みたいなもの。
うん、…もうネズミでいいよね。
そうやって遊んでいるとネズミが行き止まりにやってきた。
へへ、もう逃げられないぞー。
そうやって逃げられなくなったネズミは、急に、
「ヂュヂュヂュヂュヂュ――ッ!!」
って鳴きながらこっちに転がってきて、思いっきり噛まれた。
痛かったので急いで逃げた。
痛いし、それに、
おなか、すいたよぉ。
おかーさんどこー。
色々疲れてしまったので、
お腹がすいていたけれどすぐに眠ることにした。
夢の中で夢を見るなんて変な話だけど、
夢の中ではおかーさんがいっぱいおっぱいをくれた。
起きると自分の尻尾を咥えていた。
おかーさんのおっぱいだと思ってたのに。
おなか、すいたよぉ…。
お腹がすいたので辺りをうろついてみる。
御飯をくれる人間はいないのかなぁ。
そうやって探して結構経ったけど、
全然ご飯をくれる人間はいない。
代わりに目の前には昨日見たネズミがいた。
「ぢゅー。」
ネズミは昨日とは違い向こうから楽しそうになくとこっちに向かってきた。
いたいのはもういやだ。
おなかがすくのはもういやだ。
おかーさんにあえないのはもういやだ。
だから―――――――――――
気が付くと血塗れになったネズミを口に入れていた。
キャットフードの方が美味しかったけど、
なんだかこっちの方が力が湧いてくる気がする。うん。
いっぱい食べていっぱい強くなっておかーさんにあいに行こう。
そうしよう。
――それからしばらく経って、
ボクは仲間を手に入れた。
出会いは、
「始めましてボクはミィ。」
「お前…メスだよな…?」
「そうだよ?」
「いや、だったらボクっていうのは、いや、別にいいけどさ。」
失礼なのでネコパンチをしたのが始まり。
彼は黒いネコの男の子。
ネコと言うにはちょっと大きいかもしれないけどこれがおかーさんのいっていたヤマネコっていうものなのかな?
「ねえ、クロはヤマネコなの?」
「山に住んでたらヤマネコなのか? 多分違うと思うぞ。」
「そっか。ごめんねクロ。」
「ところでクロってのは何だ? もしかしなくても俺の名前か?」
「うん、黒いからクロ。いいでしょ?」
「……まあ、別にいいけど。」
ボクは友達を手に入れた。
――――更にそれからだいぶ経って、
クロってばなんかそっけないなー。
他のメスにはフツ―にお話しする癖に。
そうだ。
「ねえ、クロ。見て見てー。」
所謂雌豹のポーズって奴かな。キャッ。
「………ミィ…。」
「なあに、クロ。」
「一つ言っていいか?」
「うん、いいよ。」
「正直そのまんまだと思う。」
だよねー。失敗。
「――っていうか、シロさんが見ていなければ今にでも…くっ。」
何やらクロがブツブツ言っているけどよく聞こえない。
別にいいけどさ。他のオスがボクに寄ってきたときは過敏に反応する癖になにさ…。
ボクは恋心を手に入れた。
――――更に更にそれからちょっと経って、
「ねえ、クロ、私に毛繕いしてよ。」
「……? ………!? 何で『ボク』じゃないんだ?」
「だって『私』の方が女の子らしいでしょ?」
「いや…、ミィは十分女の子だから無理しなくていい。」
「ありがとっ。」
ぎゅーっ、とクロを抱きしめてみる。
ボクの恋心は深刻化した。
――――更に更に更にそれから結構経って、
森の奥深く、木々も無く岩肌が露出した場所にボクは居た。
ボクの両親はここら一帯のネコ界の頂点にいるらしい。
「てっきり以前見た強面のネコかと思ってた。」
「いや、あの猫は…あの種族でどうしてあそこまで強くなるのかとは思うけど、
最強って程じゃないし。」
「そっか。ところでどうしてクロは強面さんがお母さんの事を教えに来てくれるまで、
知ってたのに内緒にしてたの?」
「いや、シロさんが、
「私の事を喋ったら………解かるわよね?」なんて脅すから。」
要するに、クロが只のヘタレだったってことだよね。
むっ、腹が立ったのでほっぺたを両前脚でポンポンしてやる。
取り敢えずクロはこれ位で許してあげるとして、強面さんが言っていた場所へ行ってみる。
そこには――――――――、
「ミィ、久しぶりね。」
「久しぶり…じゃなくて始めまして、かな。」
ボクは両親を手に入れた。
――――更に更に更に更にそれからちょっと経って、
クロは、
「シロさん、見てないですよね。
ホント見てないですよね。今からあれなんですけど、
ホント見てないですよね!?」
とやたら騒がしく鳴いた後、
今はお母さんに監視されてないことに安心したのか、
「ミィ、いいよな。」
そう言ってボクの首筋を軽く噛んで、
前脚で優しく抱きしめてくれた。
クロも初めてなので色々場所がわからなかったり困ってたけど、
何とかできた。
交尾って痛いって聞いていたけど、そうでもなかった。
所謂オスの返しの部分のトゲをクロは『気合』でどうにかしたらしい。
『気合』の部分は敢えて聞かないでおく。
でも、そのおかげで、
「クロ、気持ちよかったよ?」
「ミィ―!!」
ネコの交尾は結構回数をこなす。
これはネコの本能かな。
ボクは子供達を手に入れた。
今回の出演者
転球鼠
転がるネズミ。
一般的には平坦な場所を好む。
弾力性に富んだ身体によってある程度の高さから落ちても跳ねて衝撃を吸収できる。
防御性能は結構高い。
時折、高所から飛び降りてきたりする。
(ミィ) 白黒森豹→砕技芸豹→呼死豹
ボクっ娘のメスネコ。
実は喋れる。といっても声真似により獲物を呼ぶだけで意味はあんまり理解していない。
人間を呼ぶときは「おかーさん(人語)」と鳴く。無自覚であろうがかなり悪質。
元の世界と違ってネコの妊娠出産率もモンスターだと多少落ちるので、
その分を回数で補って仔作りに励んでいる。母親をも超える先天的な才能と種族によるバランス感覚は、
尻尾でターザンごっこができる程。樹上移動能力は猿をも凌駕する。
しかしそれをすると子供が真似をするのでと夫に起こられるので小さい仔の前ではしない。
(クロ) 黒山猫→一色獅子→疾走獅子→原初山獅子
本人、もとい本猫はヤマネコではないと言っていたが、
種族はしっかりヤマネコ。俊敏性隠密性に優れた狩人、もとい狩猫。
ただし、まだランクはそう高くはない。
…のは昔の話。今では押しも押されぬ強力なモンスターになった。
が、妻の実家には顔を出したがらないのはご愛嬌。
現在の種族は一色獅子→疾走獅子を経て原初山獅子となっている。
名前はいかにも速そうだが、残念ながら早いのは移動速度だけでなく交尾の時も一緒という…。
凍死した前世の影響か、種族的には弱くは無い筈だが寒さをひどく嫌う。
(おかーさん) 樹上豹・白化種→神豹
おかーさん。
木々の上を軽々と駆ける上位ネコ系モンスター。
力強さに反して意外なほど軽い。
バランスに非常に優れ、脚で木にぶら下がったり、
木を垂直に昇降できる。
でも棲家の周りに木々は少ない。
娘をストーカーし、旦那候補であるオスに、
様々な試練とか強化訓練とか言う名の拷問を味合わせ、
ついに、トゲを気合で丸くさせるという暴挙を行わせた。
母は強しとかそう言う次元ではない。
此方でも4頭の子供を産んでいる。
霧の樹海の生きる伝説。
(おとーさん) 大深山猫→重武装山猫→天火獅子
おとーさん。
横文字が好き。最終形態は触り心地が最高。
毛皮目当ての人間達を屠る日々が続いているが、
やさぐれる様子はない。
実際子育てとかは初めてなので戦力外的ながらも頑張っている。
最近、「おとーさんあまえんぼー。もうしかたがないなー。」
と子供に脚を舐められて幸せの絶頂。
ちなみに住処周辺が木々が無い岩肌なのはコイツのせい。
(強面さん) 首領猫
野猫の進化系。
人間基準だとかなり強くなるがそれはあくまで人間基準。
今回の個体はシロの前世で噛ませ犬ならぬ噛ませ猫になったボス猫。
あの後最終的には保健所送りになって死亡し、
シロたちより前の時代からこちらの世界に転生していた。
種族的な限界を越えて特定固体として賞金が付いているモンスター。




