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外伝 サンケミウリ・レポート少年の事件簿 10

「○月×日

(摂理様を除き)無慈悲なる遥様は、

今日も実の弟を向かわせるという冷徹かつ冷酷な方法で、

放っておいても後先が無い老人を始末するのを見届けるようです。


それと、あの子が上手く歴史どころか曰くしかないアレを使っているようで嬉しかったです。

きっと『中身』も溜まってきているはずだからもうすぐかもしれない。

遥様に楽しい玩具にされているところは羨ましくて仕方がないけれど。

ああ、早く遥様の御役に立ちたい。」









ジーナルストお姉ちゃんの自筆のメモに書かれていた奇妙な文章だ。

まずここに出ている『後先が無く実の弟に始末される老人』というのは、

ハルマー師だろう。

そして『あの子』はボクだ。

では、この他の『摂理』と『遥』なる人物は?

クエルダさんを差し向けた側の人物―――――つまり魔王。



そして他にも気になることがある。

歴史の代わりに曰くが詰まっており、何かが『中身』として込められているもの。

ボクが使っていて謂れがあるものなど2つしかない。



直ぐにボクと兄以外の家族に聞いてみなくちゃ。


「お母さん。このカメイラキャノンとエレクトロメモリの事なんだけど。」


「えっ?何、それ。迷宮で拾ったの?

私は知らないわよ?」



「…お父さんは? 動きを止める光を出すアイテムって聞いたことない?」


「知らんなあ…。

…そう言えば何かを吸い取る光を浴びせて動きを止める武器の話は聞いたことがあるが、

それはどう見ても武器ではなくアイテムだしな。」



誰も、知らない。

ボクの家にあったにも関わらず、ボクと兄以外の誰も今まで気が付くことはなく眠っていて、

それにも関わらずジーナルストお姉ちゃんはボクと兄に使い方やそれらがボクの家に伝わるこの宝物の歴史まで教えてくれた。



お姉ちゃんは恐らく完全に魔王側(クロ)だ。

こうしちゃいられない。


早くしないとお姉ちゃんが死刑対象にされてしまう。

ボクはそれでもお姉ちゃんを信じて助けたい。きっと何かの間違いであるのかもしれないし…。


「っっ、行ってきます。」



「あら、今日もジーナルストちゃんを探しに行ったのね。」


「放っておけ。アイツもいつか心の整理がつく日が来るさ。」


ジーナルストお姉ちゃんが既に亡くなったと思っている両親の声を背にしてボクは筋肉痛で痛む身体を押して、

今日も迷宮に繰り出した。





今日は一定時間ごとに水が湧きあがってきたり沈んで行ったりする中を走る『湧迫潮山地』を探索する予定だったけれど、

其処に行きつくまでに何度も迷宮を出入りして狙ったエリアが出るまで繰り返している中、

寒くない方の『海』敢えて言うのなら『火山海』というエリアに出たので、折角なのでそこも探してみる。

…といっても、そこは陸地がほんの少し、

スタート地点の船着き場しかないので、ほんの少しだけ見て終わりだけれど。




このエリアについて説明しておこう。


このエリアには元々船が用意されてある。

このエリアではこの船を使って水平方向には簡単に移動できる。


この船はシンプルな作りだけれど、

きちんと計算された設計で、

船大工がわざわざ勉強の為にやって来るぐらいのできらしい。

そしてどのような材質なのかはわからないけれど、

モンスターの強力な攻撃でも、

壊されたり、

沈んだりという噂はほぼ聞いたことはない。


それとは別に、商魂凄まじい商人が、『装備』として持ち込んだ木材を使った『戦船』というものもあるけれど、

確かに強力な武装はついてあるけれど、

元々ある船に基本性能と頑丈差では届かない。


元々ある船をもって帰ろうとしたものは何人もいたようだけれど、

何をどうやっても、持ち帰ることも分解することもできなかったようだ。

…モンスターでも壊せないし、当たり前か。



このエリアは、水平線の先まで行った冒険者が再び元の船着き場に着いたという話は、

とても昔は舟をこぐ方法を誤っていつの間にか戻ってしまったと思われていたらしい。


それがそれより時代が過ぎて、海は丸いんじゃないかという話になった。

若しくは水平線の先に言ったらもう反対側の先に移されているという話も合った。

そしてそれから先の結論は出なかった。


そして今では…この船でいくら水平に移動しても未だに出口が無い事から、

実は深く潜っていった先に出口があるのではないかという推論も出ている。

もしこれが本当だとすると、親切に迷宮に設置された船も水平方向に意識を向けさせるための、

意識操作の一種だともいえる。


だけど残念なことにこのエリアのそこに潜りきって出口に出たという証拠を持った証人はまだいない。

そしてそんな危険な検証をしようとする程の者も今だいないみたいだ。

にも拘らずこの海の底には火山があるという噂だけは存在している。

…誰も潜ったことが無いのに何でわかるのだろうね?






ボクはこのエリアに出た後、船着き場を回って聞き込みをしたけれど、

お姉ちゃんの情報は無かったので他のエリアに行くことにした。

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