第142話 それは欧の技術に和の魂
「…為果月、わかりますね?」
「はい、如月様。私の中に葉月様と霜月様の魂が。」
「そう、私の中にも弥生と文月がいるわ。
為果月、これでもまだ勝機はないかしら?」
「いえ、勝てる気しかしません如月様。」
「文月が使ったのは自らの魂を犠牲に他者の魂の燃焼を手助けする禁呪、吸毘魂。
そしてその恩恵を受けた私達は、自分達の魂を革新する力が使えるようになるの。」
「魂を革新する力…。」
「そう、魂の革新を呼び起こす力『悪帝祓』。
使い方は葉月が教えてくれるはずよ。彼女、あれで人に教えるのは上手いの。」
「よく…知ってます。」
「怒りに身を任せることは、時として理性を奪わせ、
哀しみに身を震わせることは、時として判断を鈍らせ、
愛に身を焦がすことは、時として判断を戸惑わせる。
けれど、人はその感情を棄てることはできない。
どうしてかわかるかしら?」
「…それが、人であるという事だからです。」
「ならば、解かるでしょう。
人の死を楽しみ、
人の死を嘲り、
人の死を汚し、
人の哀しみを喜び、
人の苦しみを悦び、
人の痛みを歓ぶ存在がなんなのかと。」
「絶対たる悪。」
「その通りです。いつの世も鬼は英雄により倒されてきました。
正義がそこに在るのならば―――――――」
「―――――この世に悪は栄えない。」
「…けれど、悪は何時だって強大よ。
英雄の存在を人々が待ち望むほどに。
その悪に勝ち得る程正義に力はあるかしら?」
「あります。私は、いえ、私達は
―――――――――――2人きりなんかじゃありませんから。」
「遥さんっっ、敵さんが私達凄くパワーアップしましたー。
とこれ以上に無いくらい解かり易く説明してくれているこの状況。
いったいどうするんですかっ!?」
「今、私達ピンチですー。
と解かり易く説明してくれている摂理、ありがとう。」
「あ、はい。どう、いたしまして―――――っていいんですか、それで。」
「いいんだよ。だって潰せばいいだけなんだから。何も難しくはない、そうだろう?」
「…私も、何だかロマン的な何かが起こりそうだったのでつい見逃したいとは思ってしまいましたし同罪です。
そういうことにしてあげます。…こういう時にこそ悪役になってくれてもいいと思うんです、遥さんには。」
「ありがとう。そう言ってもらえるとうれしいよ。それよりもさ、
……そろそろ、来そうだよ。」
「架空術式、――――――――魂術、悪帝祓、璽。」
「架空術式、――――――――魂術、悪帝祓、禰。」