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第140話 迷宮主VS迷宮主

荒ぶる獣たちを前に摂理も背中の天使の翅と天輪を展開して、

僕も氷の翅を展開して高出力戦闘隊形に入る。

為果月(しはつづき)も、9つの尾を展開してその内の1つを武器に変える。



「武尾玖般 肆式 ―――――刀の武」



正眼の構えで刀を向ける為果月(しはつづき)

僕も当初八相の構えを取ろうと思っていたけれど、

為果月(しはつづき)に合わせて同じく正眼の構えに似た姿勢を取る。

得物こそ違うが、同じ姿勢を取った僕達の内、先に仕掛けたのは為果月(しはつづき)だった。


渦巻く周囲の気が一瞬で薙ぎ、

為果月(しはつづき)の刀に纏わりつく。

まるで風の無い水面の様に静かな気でありながら、

けれど、地面を突き破り噴する火山の様に攻撃的だ。

…いきなり大技か。




神代文字(かみよもじ)式―――――叢く」

「「待ちなさい。」」


当たりさえすれば僕を打倒できそうだった一撃は、

彼女にとって絶対者足るものによって止められた。


「天津様…方。」


すなわち、乱入して為果月(しはつづき)を制したのは、

天津姉妹。天津宇賀野と天津出雲だ。

僕が知るよりも随分と成長しているけれど。

年のころは、僕と同じくらいか。


「あら……姫宮様!?」


「――にしてはほんの少しお若い気が。

…ですが他にこれほどまでに美しい方も居られませんし。」



「ああそうだ。僕はまごうことなく姫宮遥本人だけれど?

…婚約発表のパーティーでお会いしてから随分と久しぶりだね。

あのころ可愛らしかった御嬢さんたちが随分と美しくなったものだ。」


「あ…ありがとうございます。

で、ですが和音様とのご結婚の時にもお逢いしていなかったでしょうか?」


「…それに、そちらの女性は?」

一度に質問するのは一人にしてくれた方が楽なのだけどね。

それに、何故だか摂理の視線がキツい。

僕が男だという事を狐たちに天津姉妹が教えて驚かせているところで、

「私だってその事はよく(・・)しってます。」とかぼそっと言わないでほしい。




「僕がこの世界に来たのは、君達がまだ幼かった頃の話だ。

どうやら君達から見れば僕は昔から来たようだね。

向こうの僕が元気にしているようで何よりだ。

姫宮遥の為にも僕も頑張らないとね。

僕が死ねば向こうの姫宮遥も死んでしまうらしいから。」


「そうなんですかっ!?

てっきり死んだら向こうに戻るだけかと思ってました。…怖くなってきました。」


「…出雲お姉様。お姉様はそのようなたまではないでしょうに。」



「宇賀野…。」


「あらいやですわ、お姉様。少し怖いですわよ。」



「誰のせいで…。」


「さあ、それよりも遥様、まだ独身らしいじゃないですか。

それにここには和音様も居られませんし。」



「…そうですわね。」



そういう会話を摂理が聞いているところでするのは本当にやめてほしい。

怒りのボルテージが上がって攻撃力が上がっていそうだ。

…おそらくそれもわかった上でのわざと牽制しているのだろう。

女性の怖い所を見せられた気分だ。

話を変えさせよう。


「…ところで、僕を始末しようとしたのは、

君達の意向かい?」



「そんなわけないですわ。ねえ、宇賀野。」


「はい、お姉様。」



成程。そういうことか。

「では、この組織において立場が高まり過ぎてかえって危険になった、

為果月(しはつづき)一派が信頼を取り戻すために功を焦ったと?」


「そういうことになりますわね。」


「当然処分は考えているんだよね?」



「そうですわね。何らかの処分を加えなくては。」

そう告げた天津姉妹の姉に対し、

如月(きさらぎ)が悲壮な叫び声をあげた。


「そ、そんなっ。一体私達が天津様方に何を害したというのです。

…もし、それでも罰をお与えになるというのなら、

それを仕向けたこの私め一人に罰をお与えください。」



けれど、天津姉妹にとって排除して利益になる存在は、

如月(きさらぎ)、君ではない。


「そんなの絶対おかしいです。

実際この人間を屠ろうと手を向けたのは私です。

その責は私が追うべきものです。」

美しい庇い合いだね。

見ていてつまらないドラマの様で欠伸が出てくるよ。



「だったら、この僕を殺そうとした為果月(しはつづき)と、

それを謀った如月(きさらぎ)の2体を罰したらいいんじゃないかな。

僕の気もそれで晴れると思うよ。」



「では――――――――代表として為果月(しはつづき)を処分。

如月(きさらぎ)には…そうね。介錯を頼もうかしら。」

天津姉妹は部下よりも僕を取るようだ。

…本当に都合よく話が流れている。



「…如月(きさらぎ)

―――――――――――お願いします。」


為果月(しはつづき)…。」



人型の生き物は大体脆いからさっさとやってくれないかな。

そう思いながら見ていた。





如月(きさらぎ)は無言で目をつぶると、

急に天津出雲に突進し、その喉に咬みついた。

「へっ………あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”っっっ。」


返す刀で天津宇賀野の身体の中心に腕を伸ばし貫く。



「死にたくない。死にたくない。死に………ない。」


「たっ助けて、遥さま…。」




「悪いね、

実はこうなることは予想していたんだ。」


「そっそんな…? 私達は遥様の御婚約者である、ひゅーっ…、

和音様の親戚分で……。」


「そ、そうですわ…なぜ、助けては……ぐふぉっ…、

くれな…いの……すか?」



それに対する回答は一つだ。

「だから? それが何だと?」


八つ当たりかも知れないけれど、君達の一族がしっかりとしていれば、

婚約者(かずね)が僕に身売りされることも無かった。

――本当に八つ当たりだけれど。






これで、堂々と君と闘えるね為果月(しはつづき)

君の方が迷宮主(ぼくのてき)には相応しい。

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