第12話 紅茶の入れ方は葉の砕け方によっても変わる
「摂理。」
「はい。」
「現状のダンジョンの状況を教えて欲しい。
僕も把握はしているが君の見解を聞こうと思う。」
「私の意見ですか?」
そう言っているだろう。
「何故不思議そうな顔をしているんだい?」
「…失礼しました。
今は1階層は海の底まで御剛沙蚕達が繁殖しています。」
「その通りだね。」
「あの魚人以降一人で3階に来た侵入者はいません。」
あの魚人の侵入者はレベルとやらが高かったのかな。
「…もっとも、あの魚人をもってしていても今の1階層を突破することは難しいかもしれません。
2次係数的にあっという間に数を増やした御剛沙蚕の群れを突破することは難しい上に、
そのうち何十体かの個体は進化をしたものもいます。
その中には浅瀬仕様ではなく、海仕様で進化したものはいませんが、
時間の問題かと思われます。
……とてもできたばかりの初級ダンジョンとは思えません。
一見、1階層しかないダンジョンにしか見えない絡繰りを差し引いても、
中級プレイヤーの中でも下の者では3階層に到達は不可能かと思われます。」
実によくできた分析だね。
摂理はやはり、デキる子だ。
…当然か、この世界の神が作ったダンジョンマスターの導き手にして補助装置なのだからね。
「まずは1階層のモンスターの層を増やしてみようか。」
「わかりました。」
昨日と違ってやけに素直だね。
ダンジョンが強化されていくことがそんなにうれしいんだろうか。
…いや、それが彼女の存在意義だったかな。
少し素直な部下にご褒美をあげよう。
「摂理の意見はあるかな?」
「いえっ、…ただ最初の予想よりも御剛沙蚕達が戦力になったことは少し意外でした。」
そうかな?
下位とはいえ、モンスターに人間が立ち向かって勝てるというイメージの方が難しいんだけどね。
それに、―――――――摂理は勘違いしているようだ。
「御剛沙蚕は戦力ではないさ。
――――只の他のモンスターのエサだよ。」
「そうだったのですか。」
当然さ。
ミミズやオキアミは、魚を釣る為のもの。
ミミズやオキアミだけを大量に持ち帰ってもその釣り人は家族からがっかりされるだけだろうにね。
だから、現時点では戦闘に参加できない礁湖雀蜂と僕だけが現状の戦力だ。
…彼女の為に他の『エサ』も用意しておくかな。
「摂理、モンスターの自動発生確率を高にしておいてくれるかな。」
「900ptかかりますがよろしいですか?」
無し→低→中→高で3段階で、ダンジョン成長度が3階層分で
3×3×変更手数料100ptで900ptか。
少なくない出費だが問題ない。
いずれ900ptですらはした数字となるはずだし、
後々になればなるほどコストがかさむことになるだろうからね。
「解かりました。
それと、時折『浅瀬』や『海』に発生しないモンスターが発生することもあります。
…大体は慣れない環境で駆逐されます。新種の発生にもつながりますが、
特に水中では駆逐が顕著になりますので、特に気にするようなことはありません。」
気になる問題があるとすれば…、
「摂理は戦えるのかな?」
「私のクラスは『天使』です。
直接戦闘よりは補助魔法に特化しているクラスですが、
人間たちとは比べ物にならないほど凄いですよ。」
そうか、ならばよかったよ。
「自分の身は自分で守ってね。
これ以降は、全ての階層に自然にモンスターが発生する。
その全てが従順だとは限らない。
悪意を持つものも、知性が低いものも、狂ったものもいるだろうから。」
「はい。心配してくださってありがとうございます。」
僕は僕とデュカリスを護っていればいい。
…このモンスターの自然発生システムで、
制御不可能なモンスターに襲われた愚かなダンジョンマスターもいるのだろうね。
僕もそうならないようにしないと。
複数階層を持っていればそのうち一つをモンスターが自然発生しないようにして安全地帯にすることや、
自身の戦闘能力を高めて襲われないようにするという手段もあるけれど、
自身のモンスターに襲われることを全く想定していなかった愚か者が何人散ったことやら。
…まあ、別にどうでもいいけどね。
「そうだ摂理、紅茶を頼むよ。今日のは香りが飛ばない程度ので頼もうかな。」




