第100話 放した手の先
さて、気を取り直して増えた迷宮の階層を設定しようか。
1~9階層 浅瀬 浅瀬 海 海 海 海 深海 深海 極深海
10階層 浅瀬(モンスター発生無し)
11~15階層 死の砂漠
16~20階層 罠部屋群
21~25階層 山麓 山地 高山 山脈 超高山帯
26~30階層 海 深海 深海 極深海 海底火山
31~35階層 超大型多様温泉群
36~40階層 墳火山 霧の樹海
41~44階層 偽枯山水 水無川 潜川
45階層 温泉(モンスター発生無し)
46~50階層 虚数狂界
51~55階層 華晶洞窟
56~60階層 天空城園
61~65階層 流水氷洞
66~70階層 悪歪瀬森
71階層 未定
72階層 未定
73階層 未定
74階層 未定
75階層 未定
……駄目だ、気が乗らない。
瑠璃…ではなくルリから奪った迷宮核を、
26~30階層の海エリアの堕天使嬢雀鯛に与える。
進化して碧玉魔雀鯛になった個体は、
何処かルリに似ていた。
……きっと、気のせいだ。
……調子が悪い。
そう思っていた時だった。
また、侵入者だ。
…あの借金取りと、摂理かな?
…違った。
残念なことにパターンは青、勇者だった。
拡大してみるとそこにいたのは隻腕の男だった。
現在は大海雀蜂と交戦中だった。
…勝負は見えた。大海雀蜂が相手では分が悪すぎる、
現在の僕の迷宮において戦闘可能なモンスターの中での最高戦力だ。
君達は不幸だね。
彼女は完璧だ。万に一つも勝機は無いよ。
君達の確定された死から何分、いや、何秒逃げられるかせいぜい試してみるといい。
そう、思っていた。
けれど、実質的なこの海の主である大海雀蜂は、
―――――――――――たった一振りの大剣でその身体を両断されて絶命した。
…思考ができない。
ただただ、僕の内に動けない半身からの、
絶対的な慟哭と、圧倒的な憎悪だけが心を埋め尽くす。
僕の慢心が僕の娘を奪った。
<姫宮遥、お前は大切なものはどんな手段を持ってでも護りぬくのではなかったのか。
私は僕を赦せない。>
海雀蜂種としての弱肉強食の教えを理解している彼女の理性と、
母として娘を愛する彼女の感情が僕の中で、
僕の意識を排他するほどに掻き混ざる。
「…解かっている。
極深海雀蜂は動くことはできない。
だから、君が奴を殺しに行く。」
薬師姫とその弟の王子、
後は知らない魔女の格好をした女と共にそのまま隻腕の仇は、
深海を超えて天空城園に移動した。魔女の術式で。
動けない母親の目の前を超えて。
…待っていろ、―――――――――――お前は僕が殺す。