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第1話 OPEN YOUR EYES

はじめまして。

あらすじにも書きましたが、

この作品には、夢も希望も無いけれど、

差別も区別もあるんだよ。

善良な正直者が報われる、勧善懲悪なんてあるわけ無い。

信じる者は足元を掬われる。

愛と勇気ではなく、悪意と雪のような儚さと冷たさでお送りします。

という訳で、読者の皆様方が御気分を害される可能性が、

大いにあります。

魔王が悪役じゃ無いわけ無いじゃない。

自称悪役のしっかり他者への配慮を欠かさない魔王や令嬢よりも、

コイツぶっ倒せたらカタルシスるだろーな、

と感じれる悪役というか、

悪まっしぐらの魔王、もしくは、小悪党でマザコンな箱入り令息な主人公をお楽しみ下さい。

るかさん…



はるかさん



はるかさんっ






誰かが呼んでいる。

亡くなったお母様に似た声。

でもどこか違う声。


……これが本当にお母様の声だったら。

本当にそちらに『い』ってもいいとも思える気がする。

でも、そんな非現実的(ファンタジー)な事なんて無いのだから。


僕を呼ぶお母様に似た声の誰かの為にも早く起きなければいけない。

さぁ、目を開けよう。









――――――そうやって僕が目を開けた場所は、

とっても非現実的(ファンタジー)な世界でした。


「あっ、起きられたのですね。私は摂理。

マスターである遥さんの導き(ガイド)にして補助(サブ)装置(コントローラー)です。」


非現実的な格好をしたやや若いころのお母様似の非現実的な美少女が非現実的な言葉を述べた。

あまり…、よく解からない。

…というか、全く意味が解らない。

というより解かった方が凄いと思う。

相手は痛い子だけど、優しく聞いてあげようとは思う。…お母様に似ているから。


「よければどういうことなのか、説明してくれるかな?」


僕がマスターだとか、自分の事をガイドとかサブコントローラーとか言っていたけど、

この子が痛い子なのか、僕が痛い夢を見ているだけなのかどっちなのだろうか。

前者だと一緒にいる僕が恥ずかしいし、後者だと僕の頭が恥ずかしい。


「…失礼しました。私、摂理はダンジョンマスターである姫宮 遥様を補助する為に産まれた、

パートナーキャラクターです。昔で言えばダンジョンメ●カー。

最近で言えば少々大人向けになりますがリベ●オンズなどが該当しますね。」



「…大人向けというのはハードなグロという意味でかな?」


「いえ、ハードなエロのソフトの方なのでよい子はしてはいけませんよ?」



少々じゃなくて、完全に大人(アダルト)向けじゃないのか?

正直、どこかお母様の面影を残す可愛い女の子にこのようなことを言わせるのは、

僕が見た夢の中でも一番の下衆な夢だと思う。

夢は無意識の願望を映す鏡だと聞いたことがあるが、

果たしてこんな下衆い願望が僕の中にあったということなのか?


というか、此処が僕の夢だと仮定して、夢とはすなわち不確定要素を孕んだ現実の記憶の情報処理。

だとすればなぜ僕はそのようなアダルトなソフトの名前を知っているのだろうか?


他人のせいにしたくは無いが、恐らく幼馴染の瑠璃のせいだろう。

彼女はやたらそちら系に詳しくて僕にも薦めてくる。

時折、自爆して勝手に赤くなっているのは見ていて微笑ましい。

その視線の先に彼女が起動したアダルト向けPCゲームの行為シーンが流れていなければ、だが。


…瑠璃が言っていたことを無意識のうちに記憶していたのだろう。

というか瑠璃の他に『友達』は多くない。





「変な質問をしてすみませんでした。単刀直入に聞きましょう。

此処は、『何処』ですか?」


「……あぁ、そういう…。

ふふふ、夢の世界(ドリームランド)とでも言えば一つの答えになるのかもしれませんが、

それはある意味一つの皮肉でしょう。

人間は通常脳の100%を使用してはいません。

ならばその余らせてある要領をお借りして繋ぎ合わせれば、

非常に高性能のイメージインターフェース演算処理器となります。

此処は人々の無意識領域を少しずつお借りして作られた、

仮想ネットワーク上にあるネットゲームのようなものです。」


「つまり、人間はそのゲームに勝手に無許可無断で自分の脳の一部の顕現を奪われて、

不明なプログラムや悪質なBOTにBYTEを提供しているというわけか。夢の世界とはよく言ったものだね」



「強欲の魔王の記述を元に構築された、原初(原書)の世界と同じ名を持つ架空世界、デタリアル(DATA-REAL)。

この世界において銀河の形状が人のシナプスに似ているのも、

データの瞬断を防ぐために、死ぬ寸前にはリンクから切り離すことによって本来の力が戻り馬鹿力が出るのもそのためなのです。

……そう言えば遥さんの元の世界においても似たようなものでしたね。」


「……なるほど、此処は夢にして夢ではない。……そういうことか。」




「えぇ。……勿論夢から醒めたいのであればどうぞ。

開始前、収支が零以上で非戦闘中などここから出られる時間は限られています。

いうなれば、セーブポイントやログアウトできる条件がかなり厳しい、ということです。

……ここで死ねば現実での保証はないですよ?」


「良くて破損した人格、もしくは植物人間、か。

悪くて、は言うまでもないのだろうね。」



「どうされますか?」


お母様似の爽やかな笑顔のまま随分とエグイ話を吹きかけてきたものだ。

是が夢だとすれば僕にとんでもない破滅願望があるのだろう。

きっと起きている僕はお腹の上に手でも置いて悪夢を見やすい環境にいるに違いない。

だが、きっと僕は夢かそれとも現実か、そのどちらであろうと同じ選択肢を選ぶ。



選択?


そんなことは決まっている。


「どうせ夢の世界だからね。夢なら夢らしくしっかりと愉しませてもらうよ。」





僕の答えに目の前のお母様似の美少女、『摂理』は自然な笑顔で答える。


「その言葉が聞きたかった。byブラックジャ●ク。ふふふ、な~んて。

此方も遥さんの誘致には他のプレイヤーよりも手間を掛けましたから。

折角の特待プレイヤーに逃げられてもしょうがないですし、ね。」


「この世界は僕を喰いたがっている、と?」



「遥さんは賢い方ですね。…恐ろしいほどに。

えぇ、その通りです。貴方ほどの方がこの世界の糧と散った時に受けられる利益はそれはもう凄いものです。

だから遥さんを垂らしこむ為にお母様の容姿と声に似せ、

お母様の名を名乗りました。

……でも、本当は瓜二つにするつもりだったんですよ。似せ方は少し似ている程度ではなく。」




たしかに僕はマザコンなのかもしれない。

叔父にお母様を殺されて以来、いつも心のどこかでお母様を求めていた。

僕の心のお母様がいたスペースは空白になった今もお母様の為に空けてある。

だが――――――、

「だが…、問題はないよね。それら全てを理解した上で此処に居残ることを選んであげたのだから。

それによくそんな白々しいことが言える。根の国の果実を喰わせる神のようだったのにね。」


「まぁ、流石にこんな運営側のメタ話をこれでもかというほど聞かせて逃がしてあげる……。

そこまで此処の神はぬるくはないですよ。

此処で意識を覚まして1段階。私に話しかけて2段階。この世界の簡易な説明を受けて3段階。

突っ込んだ話をして4段階。ここまで話してまだ貴方の登録前仮ポイントが尽きなかったのだから大したものですよ。

でも流石にログイン仮認証まで言ったら、

収支が登録前の仮とはいえマイナスになって引き返せない所だったんですけどね。」


死者の声に耳を傾けてはいけない。

死者の目を覗き込んではいけない。

死者に関心を払ってはいけない。

何故ならば、死者に関わり時を過ごせば、

その者も死に近い存在となり引き返せなくなるから。

そんな昔話を思い出す。



「果実を喰らえば還れなくなるということを教えない所も神話のようだね。

此処の神はハデスか黄泉の国の管理人か?

…そういえば一説には黄泉の国の管理人との説もある月詠が支配するのも、

『夜』にして『黄泉』にして『闇』にして『夢』、だったかな。大した影響力だね。

聖徳太子の経歴は隠れキリシタンによる混ぜ隠し信仰かも知れないけれど、

各国には共通する神話が多すぎる。

この世界から還った人間が広めたものなのかな?

…まぁ多頭の竜を退治するようなプレイヤーをここから生かして逃がすようには見えないのだけど。」


「逃がす気が無いのと逃げてしまうのはまた別の話。

この世界で成長したうえに、

脳の『領域』まで奪い返して戻ったような方はさぞかし神の様に扱われたことでしょうね。

…ギリシャと日本神話を『敢えて』混同するあたり、わたし達の事をよく解かっているようで。」




「神のしもべは天使。世界のしもべは『摂理』。そういうことだろう?

まぁいいさ。僕の手足として動いてもらう分には僕の思い通りに動かしてあげるさ。」

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