なぜ僕は彼女がすきなのだろう?
思わずため息が出てしまう。
今日返されたテストの点数は、いつもどおり赤点ではないがとても人には言えない数字が書いてあった。
僕は高校に入ってから無気力に、ただただ無気力に日々を過ごしている。
つまりこの点数は只努力をしていない結果ということでもあるのだけれど、やっぱり悪い点数を見ると少し残念に思う。
残念に思うだけで次こそはがんばろうとは思わないのが僕が僕であるところなのだろうけれど。
もし『何かがどうにかなれば』この無気力さは直るのかもしれない。だけれど日々無気力に生きるというのは存外、楽で心地いいものなのだ。
だけれど、そんな無気力な僕にも欲というものはある。
睡眠欲などの生理的な欲求はもちろんの事、他には恋愛。無理やり名をつけるなら『恋愛欲』というところだろうか?
といっても、恋愛欲といっても所かまわずどんな人でも好きになるというわけではない。
欲求というカテゴリでいうならば恋愛欲というだけであって、普通に言うだけならば恋だ。
恋。特定の人物に対して特殊な感情を抱く事である。
僕は彼女に恋をした。僕とはまるでちがうなんでもできる彼女。
彼女とは、世間話すらしたことがないけれど、席が隣になったりもしたことがないけれど、最初に君を見たときから好きだった。どうしようもなくどうしようもなく。
けれど、おくびょうな僕は彼女に気持ちを打ち明ける事もできなくて。
君の姿を追いかける事すら僕にはできなくて。
ストーカーなんて常識を振り切った事すらもできなくて。
何もできない僕は、何でもできる君のことを・・・
好きだからこそ歩み寄るどころか遠ざけた。
本当の話はこれから。
高校生初めての夏の日の事、初めての夏休みの事。
もしも君に歩み寄っていたら、アイドルのように違う世界の人のように君を見ていなければ、あるいは君に告白していたら、この話は変わっていたのだろうか?
僕と彼女短編小説第一弾始動。
全てはひとつに向かいます。