第拾弐廻 想いを集めて
お見合い合戦!
大きな戦が終結し、つかの間の平和が訪れていた。
のだが…長安ではちょっとした騒ぎが起こっていた。
原因は萩の一言である。
萩『うちの娘との婚約?マジに決まってるじゃないか。』
この一言により、長安の玉座の間では緊急特別会議が執り行われていた。
一刀「あの…何がどうなってるの?」
孫策「一刀はちょっと黙ってなさい!大事な話してるんだから!」
曹操「そうね。邪魔しないでもらえるかしら?」
劉備「そうですそうです!
これは漢の明暗を分ける事態です!」
袁紹「北郷様、今しばらくお待ちくださいまし。」
一刀「…スイマセン。」
あれから何故か彼女らはすぐに帰らず、頭を突き合わせて真剣に話し合いを続けていた。
そして一刻後…一刀は小さな部屋に一人押し込められる。
そこへ、馬超と馬騰が入ってきた。
カコ~ン…と静寂の中、鹿威しがなる。
一刀「(えっ?!なんでここに鹿威しがっ?!)」
馬騰「さて、お見合い開始だな。」
一刀「これお見合いだったの?!」
馬超「ぅ…///」
馬騰「ほら、お互いを知り合ういい機会だろ?
語り合ったりしなさいよ!別にここで一発ヤっても良いのよ?」
馬超「★■※@▼●∀っ!?」
一刀「さ、流石にそれは。
えっと、こういう時は確か…。
あの、ご趣味は?」
馬超「ひゃい!
遠乗りと槍の稽古です!!」
馬騰「…馬鹿娘。」
馬超「し、仕方ないだろ!アタシにはこれくらいしか無いんだ!」
一刀「あははっ、でも白銀の錦馬超とまで謳われてるんだし。」
馬超「なんだそれ?」
一刀「あれ、聞いたこと無い?
『見目麗しく、義に篤い清涼の姫。その槍捌きは白銀の流星と謳われ、一騎当千の強さを誇る』って。」
馬超「★■※@▼●∀っ!?」
一刀「戦場で見かけた時、本当にそのとおりだと思ったよ。」
馬超「っ~~~~~~~~~///」
馬騰「(これは…放っておいても大丈夫そうね。)」
その後、いくらが喋ると、馬超と馬騰は部屋を外した。
これで終わりたかと思ったが、続いて関羽が入ってきた。
関羽「し、失礼する!」
一刀「か、関羽さん?!」
関羽は静かに正座すると、小刀を取り出した。
一刀「あの…なにを?」
関羽「私は貴方様を、桃香様惑わす悪党だと考えておりました。
ところが実際は違っていた。
悪党どころか、天の御遣いの名に恥じぬ素晴らしいお方でした。」
一刀「ど、ども…。」
関羽「そんなお方に何度も刃を向けてきた自分を許せそうにありません!
なので私は腹を切り、この場で詫びたいと思います…。
どうか…桃香様の事をお頼みします!それでは…」
一刀「待った待った待った!!!」
関羽「止めないで下さい!!このままでは私は…!」
一刀「俺は気にしてないから!」
関羽「しかし!」
一刀「君が居なくなったら、きっと劉備さんは悲しむよ?
それに、俺も悲しい。」
関羽「えっ?」
一刀「だって、折角あの有名な美髪公、関羽と知り合えたのに…。」
関羽「美髪公?」
一刀「噂は洛陽まで届いていたよ。
『艶やかな黒髪をなびかせ、悪を討つ正義の武将。その刃は悪を討ち、その槍は闇を切り裂く。』って。」
関羽「なっ?!
っ…///」
一刀「だから腹を切るなんて言わないで。
そして、これから仲良くしてくれると嬉しいな。」
関羽「…はいっ///」
次に入ってきたのは孫策だった。
どかっと腰を下ろすと、急に盃を突きだした。
一刀「え?」
孫策「いいから呑みなさいって。」
一刀「う、うん…。」
孫策「ん~、いい飲みっぷりね。これなら安心かな!」
一刀「何が?」
孫策「あのさ、妹の婚約者になって!」
一刀「えぇ?!い、妹ってもしかして…孫権さん?」
孫策「あら、知ってるのなら話は早いわね。
ちょっとお堅い所あるけど、とってもいい子よ?お尻も大きいし。」
一刀「ど、どうして急に婚約なんて…お尻っ?」
孫策「だって、強いし頭も切れるし度胸もある!
それに陛下の話を聞いて確信したわ。この人なら妹を任せられるって。」
一刀「え~っと…でもそれは妹さんが決めることじゃ…。」
孫策「駄目よ。それじゃ何年経っても伴侶なんて出来そうにないもの。
今度一度会わせてあげるから…ね?」
一刀「…まぁ、会うだけなら。」
孫策「やった♪
で、ついでに私やうちの子たちを孕ませてくれたら嬉しいな~。」
一刀「ブッ!
な、なにそれ怖い?!」
孫策「ま、こっちはついでよ、つ・い・で♪
じゃあさっそく寝ましょ?」
一刀「お引き取り下さい!!」
孫策「ぶーぶー!」
次に入ってきたのは曹操だった。
一刀「ど、どうも。」
曹操「…。」
一刀「…。」
曹操「貴方…私のモノになりなさい。」
一刀「えっ?!」
曹操「この曹孟徳の覇道には貴方が必要だわ。
その並外れた実力を私の下で発揮するのよ。」
一刀「いや、そう言われても俺は月の将だし。」
曹操「ならばそうね…政略結婚でもしましょうか?」
一刀「はぁ?!」
曹操「あら、だってここはそういう場でしょ?
なにも不思議じゃないわ。」
一刀「だ、だって結婚って…君と?」
曹操「ちょっ、わ、私じゃないわよっ///」
一刀「へっ?」
曹操「うちの子たちで気に入った子がいたら、口説いていいわよ?
ただし、嫁に貰うのではなく婿に来ること。」
一刀「え、えっと…考えておきます。」
曹操「えぇ、真剣に検討して頂戴。」
一刀「でも、曹操さんを口説いても良いんだよね?」
曹操「っ?!
べ、別に問題はないわよ?」
こうして、各諸侯たちによるお見合い大作戦は夜遅くまで続いていた。
彼女たちが各地へ帰るまで、アピール合戦が続いていたのは、また別の話。
場面は変わり、ここは長安の外れ。
一軒の農家があった。
???「ふぅ…、今日もいい天気ね。」
その広々とした畑に、一人の女性が居た。
手で汗を拭い、一心不乱に畑を耕す。
かつては洛陽で将として働いたが、とあることをきっかけにすべてを捨ててここに移り住んだのである。
???「…大丈夫、か。」
もうこれまで何度も口にしたその言葉をつぶやくと、少し笑うのだった。
農耕員A「お早うございます!本日もお手伝いに参りました!」
???「あらあら、いつもありがとうございます。」
農耕員B「いえ!奥様のお手伝いはワタクシの生きがいでございます!!」
???「うふふっ、お上手なんだから♪」
農耕員AB「(ずっきゅーーーーん☆)」
???「さぁ、ではよろしくお願いしますね?」
農耕員AB「はい喜んで!!!」
天水にて一刀が発案した農耕員は、
国から兵と同じように給金を得て、民の田畑を耕したり牧場の管理を行う者達のこと。
それは戦などで独り身となり、生活の基板が苦しくなる民には抜群の効果を得ていた。
???「そう言えば…北郷様はお元気ですか?」
農耕員A「えぇ、お変わりありませんよ。」
農耕員B「この間も凄かったな~!各諸侯の女性たちと集団お見合いだもんな!」
???「まぁ!ふふふっ、本当に面白いお方ですね。」
農耕員A「えぇ、私達のように武器を振るえない者でも、こうして力に加えてくれる。
あの方にしか出来ないことだと思います。」
農耕員B「そうだな…。」
???「今度お茶を飲みにいらして、と伝えてもらえるかしら?」
農耕員A「べ、別に構いませんが…。」
農耕員B「…。」
???「うふふっ、もちろん貴方達もご一緒にね?」
農耕員AB「(ズドーーーーーーーーーーーーン☆)」
彼女はもう諦めているけれど、北郷一刀を思い浮かべた時、ふと思った。
あの方は天の御遣いと呼ばれている…思えばあの頃から、天に祈ることをしなくなった。
その時『なんとなく』天に祈ってみることにした。
---あの人の無事を。
---襄陽にて---
そこではかつて、一刀に差し向けた刺客が戻ってきていた。
一刀付きの侍女に毒を盛らせようと企んだのである。
劉表「なに?北郷一刀の暗殺に失敗しただと?」
刺客「申し訳ございません。」
男はかなりゲッソリとしており、心なしか涙も滲んでいた。
劉表「それで貴様はなぜそんなに窶れておるのだ。」
刺客「それが…くっ…」
劉表「なぜ泣く?」
刺客「あの城の侍女ども…どんなに金を積もうとも効果はありませんでした。
それどころか…。」
劉表「ん?」
刺客「あの女どもは、気が狂ってます!!ただの変態です!!」
劉表「ど、どういうことじゃ?」
刺客「十五人目に声をかけた時です…。
『北郷の子種を得るにはどうすればいいか』について一晩語られました。」
劉表「なんと…それはキツいの。」
刺客「終いには全ての侍女が集い…
嫌だあああああああっ!!もうやめてくれええええええ!!!」
劉表「も、もう良い!もう良いのじゃ!」
刺客「劉表様…!」
劉表「お主はよくやった!素晴らしい働きじゃ!」
刺客「ありがとう…ございます!うぐっ…」
劉表「おのれ北郷め…!」
---その頃、長安にて---
執務室では、いつもの様に内政に追われていた。
一刀「そういえば…趙忠が牢で死んだらしい。」
蘭「はい、聞き及んでおります。」
一刀「この期に一度、特赦をしてみたらどうだろう?」
詠「か、一刀、正気?!」
一刀「うん、囚人名簿にちょっと気になる名前を見つけてね。」
月「気になる名前…ですか?」
一刀「『皇甫嵩』」
蘭「えっ?!あ、あり得ません!彼は戦死したと…!」
一刀「それは誰から?」
蘭「あっ…!
そんな、どうして!」
詠「こ、皇甫嵩様って…伝説的な驃騎将軍じゃない!」
月「へぅ…!」
一刀「牢番に聞いた話だと、趙忠を殺したのがその皇甫嵩さんらしい。
だから、一度会ってみて特赦を考えてみたらどうかなって。」
蘭「えぇ、是非にそう致しましょう。」
皇甫嵩は玉座の間へと引き出され、窓から入る久しぶりの陽の光を遠目で凝視していた。
その時、玉座へ蘭が上がった。
皇甫嵩はそれを見ると目を見開く。
皇甫嵩「奥方…!!」
蘭「やはり…貴方だったのですね、将軍。」
皇甫嵩「奥方…よくぞ…よくぞご無事で!!」
蘭「貴方もです。そして、これまで気が付かず申し訳ございません。」
皇甫嵩「良いのです…儂はまたこうして陽の光を見れた。
もうそれだけで満足で御座いますれば。」
蘭「えっ?」
皇甫嵩「儂は趙忠を…十常侍の一人をこの手で屠りました。
処刑は覚悟しております。」
蘭「ふふふっ。」
皇甫嵩「奥方…?」
蘭「早とちりは治っていないようですね。ふふっ。
もう…この漢に十常侍などという忌々しいものはありません。」
皇甫嵩「な、なんですと?!」
蘭「それに、十常侍を一人屠って処刑では…
ここにいらっしゃる北郷一刀様は首がいくつあっても足りませんね。」
一刀「あ、あはは…。」
皇甫嵩「そ、その御方は?」
蘭「この方が、私を救ってくださったのです。」
そう言うと、かつて語った一刀との出来事を語り出すと、
男は涙を流しながらその話を聞いていた、
皇甫嵩「な、なんと…何ということ…!」
蘭「将軍、宜しければ…また私を支えてはくれませんか?」
皇甫嵩「喜んでっ…!!喜んでお仕え致します…!!!」
こうして新たな仲間が増えることとなった。
名は皇甫嵩、字名を義真。
かつて禁軍を率い、伝説的なまでに武勲を築き上げた名将である。
正式に特赦が終わり、一刀は玉座の間から出ると、皇甫嵩が駆け寄ってきた。
同じく牢に入れられていたかつての部下も一緒だった。
皇甫嵩「北郷殿!!!北郷殿お待ちくだされ!!」
一刀「皇甫嵩さん、どうかしましたか?」
皇甫嵩「お礼を言わせて下さい!
北郷殿は誠に…将の鏡でございます!」
男「本当に、私からもお礼申し上げます!」
一刀「そんな、気にしないで下さい。
俺も将軍がご無事でよかったです。」
皇甫嵩「勿体なきお言葉…!」
一刀「そんなに畏まらないでくれると嬉しいかな。」
皇甫嵩「しかし!」
一刀「お礼の代わりだと思って、ね?」
皇甫嵩「…わ、分かりました。
では恐れながら…ごほんっ
これよりは儂を厳と呼んでくれぃ。」
一刀「…ありがとう、喜んで受け取るよ厳さん。」
厳「がははっ、まさか儂が奥方の旦那様にタメ口をきく日が来るとはな!」
一刀「へっ?」
厳「奥方に真名を許されておるのだ。流石の儂でもわかるぞ!」
一刀「ち、ちょっと待って?どういう事?」
厳「どういうことも何も、皇族が異性に真名を許すのは伴侶だけという決まりがあるだろう?」
一刀「な、なんですと?!」
厳「がっはっはっ!!今日は誠にめでたい日じゃ!!」
一刀「あ、あはは…(蘭さん~~~!!?)」
そこへ二人の男が駆け寄ってきた。
農耕員A「北郷様!ご準備はよろしいですか?」
厳「ん?これから一刀殿はどこかへ行くのか?」
一刀「あ、あぁ、ちょっと人に呼ばれててね。
そうだ!良かったら厳さんも来なよ!」
厳「儂も?」
一刀「うん!『なんとなく』…会わせておいたほうがいい気がしてね。」
厳「はて、何やらわからんが儂も行ってよいのか?」
一刀「是非!」
四人は町外の一軒の農家へ向かった。
そこでは、いつもと変わらずに一人の女性が畑仕事をしていた。
???「あら、いらっしゃい北郷さ…」
厳「…。」
???「…あ、あなた…!」
厳「鏡…!」
Another view 鏡
慣れ親しんだ麦畑。
風が穂の流れを作り出し、私は片手で髪を押さえます。
話し声が聞こえました。
お約束していた本郷様かな?と顔を向けると、
鏡「あら、いらっしゃい北郷さ…」
厳「…。」
???「…あ、あなた…!」
厳「鏡…!」
信じられない光景でした。
目の前にはもう戻ってこないと思っていた人がそこに居ました。
私は恐る恐る近づき、その方の頬に触れます。
あの頃とは少し変わった顔つき。
それでも、あの頃とは少しも変わらない私の気持ち。
あぁ、ずっと会いたかった貴方。
これは夢かしら…いえ、確かに懐かしい匂いも感じる。
これが夢であるものですか。
鏡「…本当に、大丈夫…でしたね?」
厳「あぁ…大丈夫、だったぞ。」
あの日、離れ離れになる日の朝。
嫌な予感がして、貴方の背中に声をかけた。
心配そうな顔をする私に、貴方は笑いながら『大丈夫』と。
それを最後に、結局貴方は帰ってくることはなかった。
厳「お前も…儂はてっきり張譲に…。」
鏡「あら、腐ってもこの朱儁、文官風情におくれは取らないわ。」
厳「…変わらないな。」
鏡「貴方は…少し歳をとった?とても凛々しくなったわ。」
厳「ふっ…。
一刀殿、もしや知ってたのか?」
一刀「いや、朱儁さんの名前を知ってて…。
それに、『なんとなく』想いが聞こえたような気がしてね。」
鏡「…!」
厳「がっはっは…!やはり一刀殿には敵わんな!」
鏡「さ、お家へどうぞ。お茶をご用意します。」
あぁ、天に祈るのも…たまにはいいものね。
---外史のはざま---
于吉「…どう見ますか?」
左慈「…。」
管理者達は、渋い顔で外史を観測していた。
左慈「冗談じゃない…これでは奴が保たんぞ!」
于吉「…まるで吸い込んでいますね。」
左慈「また繰り返しか…いや、前よりも状況は最悪だ。」
于吉「…。」
左慈「どうにもならんのか…!次は無いんだぞ!」
彼らの目に映る外史の光景…
それは、渦を巻く様に、嵐にうたれる木々の様に、ただただ危うい光景が広がっていた。
今回もお読みいただき、誠に有り難うございます。
さて、第二章も終盤に差し掛かります。
次回は拠点編です。
そして…前回お取りしたアンケートですが、ウルヴァリン様に頂いた一票のみとなりました…。
ウルヴァリン様、本当に有り難うございます(土下座)
念のためもうしばらくは様子を見ますが…orz




