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真・恋姫†夢想~世界樹の史~  作者: genji丸
真・恋姫†夢想~忘れ草編
2/23

第二廻 風と太陽

※この物語は特にどの√が本筋というわけではありません。

※筆者は三国志好きのため、姫武将以外もオリジナルで登場します。

第二廻 風と太陽





view ~程立(風)~


幼少の頃から夢を見ていました。

それはとても眩しく、手を伸ばすも届かない日輪の夢。

いつも変わらず、風の夢にはそれが輝いていました。


でも、どうしてでしょう。

今日の夢は違いました。


輝く日輪が天から落ちてきて、風に手を差し伸べるのです。

風はその手を取ります。

とても暖かな、やさしい手を。


目を覚ますとそこはただの宿でした。


  何かが変わる。


そんな確信があります。

心なしか夢で握った『彼』の手の感触が残っている気がして。


風の名前は程立。

ううん、この時から程昱と改めよう。

きっとこれから出会う日輪を支える者として。











view ~北郷一刀~



気がつくとまた荒野に居た。

遙か上空を見渡すと、代わり映えのしない青空が澄み渡っている。


一刀「次の外史、か…。」


空から落ちて気を失ったとはいえ、蜀を率いていた身だ。

前回のように慌てたりはしない。

右よし、左よし、前方よs…


すぐ目の前に変な三人組が居た。

もちろん桃香たちじゃない。

賊だ。


一刀「…ど、ども。」


賊A「お、おう…。」


一刀「…。」


賊「「…。」」


その場を沈黙が流れる。


賊B「(か、頭!こいつ生きてまっせ!)」

賊C「(ど、どうしてなんだな。空から落ちてきたんだな。)」

賊A「(知るか!だがなんかヤバイのは確かだ!)」


一刀「あの~」


賊「「ヒィッ!?」」


一刀「ここ…どこ?」


賊B「こ、ここぁ兗州でごぜぇますが…。」


一刀「そっか、ありがとう。」


賊B「(か、頭!あっし、久方ぶりにありがとうって言われましたぜ!)」

賊A「(おめでとう!じゃねぇや馬鹿野郎!俺たち賊が手助けしてやってどうすんだ!

   と、とりあえずアレだ、高そうな服だし掻っ払おう!)」

賊C「(だ、ダメなんだな!こいつ何かヤバイんだな!)」


賊は小言で言い争いをしている。

そして全部聞こえている。

賊の頭?と呼ばれた男が振り返り、剣を抜いた。


賊A「やいやい兄ちゃん!命が惜しくば…」

?「待て待てい!!」

賊B「ぬあっ?!」


するとそこに、見覚えのある少女が駆けて来た。


趙雲「お主ら、賊と見受けるが…よもやその青年に悪事を働いてはおらぬな?」


槍を構える趙雲を見て恐怖のあまり固まる三人組。

賊はチラリチラリとこちらの様子を伺ってくる。


一刀「あ~、待った待った!この人達に場所を聞いてたんだよ。

   悪さもされてないから大丈夫。」


賊A「に、兄ちゃん…。」


少女は訝しげな顔になるも、槍を引いた。


趙雲「…左様か。

   すまなかったなお三方。」


賊B「いえ、だ、大丈夫ッス!」

賊A「そいじゃ、あっしらはこれで…」


言うが早いか、彼らはそそくさと走りだしてしまった。

残される俺と趙雲。


一刀「…。」


趙雲「…。」


星…!星!!


ただいまと言いたかった。

すぐにでも抱きしめたかった。


覚悟はしていたが、それでも胸を締め付けられる痛みは避けられない。


趙雲「ふむ…。

   私の顔に何かついておりますかな?」


一刀「あ、あぁごめん!ちょっと知り合いに似ていてね。

   それより、助けようとしてくれたのかな?ありがとう。」


趙雲「ふふっ、

   いやなに、結局はこちらの勘違いだったようだがな。」


一刀「あははっ、

   それより君はこんな所で何を?」


趙雲「うむ、私は見聞を広める旅の途中でしてな。」


一刀「そうなのか。

   え、一人で?」


趙雲「いや、一人ではござらんよ。

   ほれ、後方をご覧あれ。」


振り返ると、遠くからゆっくり近づいてくる人影が2つ---









view ~程昱(風)~



急に星ちゃんが走り出しました。

風と凛ちゃんが慌てて後を追います。


星ちゃんの姿が見えてくると、風は心臓が止まりそうになりました。


星ちゃんのすぐそばに、夢で見た日輪の青年がいたのです。

風は走ります。


夢のように手を差し伸べて欲しくて。

風は走ります。










view ~北郷一刀~



2つ見えた人影の片方。 


とても小柄な女の子が息を切って走ってくる。

運動が得意じゃないのか、時折躓きながら。


そんなに急がなくてもいいのにと、つい苦笑い。


一刀「こちらからも迎えに行きましょうか。」


趙雲「そうですな。」


俺達は駆け出す。










view ~程昱(風)~



もう走れません。

肺が潰れそうです。


でも風の足は止まってくれません。

きっと風自身も止まりたくないのでしょう。


もう少し…もう少しで…!


「…ぅっ!」


転んでしまいました。

痛いです。


すると、手が差し出されました。


顔を上げると、日輪を背負った青年の姿が見えます。


風はきっと震えていたでしょう。


そっと手を握ると、夢のように、

いえ、夢なんか比べ物にならないほど、


暖かな手でした。










view ~北郷一刀~



一刀「大丈夫か?

   ほら、立てる?」


程昱「おぉう…これはこれは~…

   んしょ、ご丁寧にどうもなのです~」


少し赤らんだ顔で立ち上がる女の子。

痛かったのかな?少し震えて涙ぐんでいる。


趙雲「どうしたのだ?そんなに慌てて。風らしくないではないか。」


郭嘉「ぜぇ…ひぃ…そ、そうですよ風…!

   わ、わたひは…ぜぇ…ぜぇ…。」


趙雲「凛殿、少し落ち着かれよ。

   …ん?」


気がつくと、風と呼ばれた女の子が俺をじっと見つめていた。


一刀「えっと…何かな?」


程昱「風にお名前を聞かせて欲しいのですよ~。」


趙雲「おぉ、そうだった。

   自己紹介がまだでしたな?」


一刀「あ~、え~っと…。」


どう言えばいいだろう。

空から落ちてきた天の御遣い!とか急に言っても信じてもらえないだろうし…。

まぁ、なるようにしかならないか。


一刀「俺は…実はこの世界の住人じゃないんだ。」


趙雲「凛、お医者様を。」


郭嘉「すぐに呼んで参ります。」


一刀「ちょっと待てや!ていうかメガネの君は復活早いな!」


趙雲「はっはっは!すまぬすまぬ!

   いや、突拍子もない事を急に言われたものでついな。」


一刀「あのなぁ…まぁいいや、いきなり信じてもらおうなんて思ってないし。

   で、だ。

   俺の名前は北郷一刀。」


すぅっと息をつき、



一刀「『天の御遣い』なんてものをやってる。」


程昱「…!」





それから自己紹介やら色々と説明しているうちに、官軍がこちらに接近してきた。

趙雲と郭嘉は面倒なことになるからと、別れを告げる。




郭嘉「風?どうしたのです?」


程昱「…星ちゃん、凛ちゃん、ここでお別れなのです~。」


趙雲「む?もしや北郷殿と行動を共にすると?」


一刀「はいぃ?!」


程昱「そういうことなのです~。

   

   星ちゃんも凛ちゃんも、風が名を変えた理由は知っていますよね?」


凛「えぇ確か…日輪を支えるため、と。」


程昱「はい。

   風はこのお兄さんに日輪を見たのです~。」


日輪?俺がか?そこは曹操にしとけって!後が怖いから!


趙雲は程昱と俺を見据え…


あ、この表情…なんとなくこの先はわかる。きっと彼女ならこう言うんだ。笑いながら。


   (うむ、それもよかろう。)って

趙雲「うむ、それもよかろう。」



結局、趙雲と郭嘉はそのまま旅へ。


官軍はすぐ目の前まで迫ってきた。



一刀「なぁ程昱…。」


風「どしました~。」


一刀「これからどうしよっか。」


風「ぐぅzzz」


一刀「寝るな!」


風「おぉう?!


  あ、それとお兄さん。」


一刀「なんだ?」


風「風は風なのですよ~。」


一刀「…いいのか?」


風「いいのです~。

  お兄さんのことはお兄さんと呼びますので~。」


一刀「おう、よろしくな。風」


軽く頭を撫で、微笑みかける。

くすぐったそうに微笑むこの顔を見て、俺は思った。

この笑顔は絶対に守ってやる、と。


重ねて、

「やべ、官軍に囲まれてる」 と。


あれ?しかも曹操さんの軍か?

ま、なら大丈夫だろ。とりあえず今は風の撫で心地を堪能しよう。








view ~曹操~



目の前に男と女がいる。

美しく真っ白な盾と剣を持ち、自らも白く輝く服を着た青年。

それと小柄で可愛らしい、頭に奇妙な人形を載せた少女。


気のせいかしら…?我が軍勢に包囲されているのにイチャイチャしてるように見えるのは。


曹操「…。」


青年と目が合う。

なによ…案外いい目をしてるじゃない。

それに、この様子だと度胸だけは人外の域ね。


曹操「お前たちに2つほど聞きたいことがある!」


首を傾げる青年。

寝てる少女。寝てる?!


一刀「寝るな!」風「おぉう?!」


そ、そう、それで良いのよ。

まったく、体勢を崩されるわねこの二人は。


曹操「まず一つ!この辺りで三人組の賊を見かけたか!」


一刀「あれ、なんか黄色い鉢巻してた奴らか?

   あいつらならとっくに逃げたぞ。」


曹操「そう。どちらへ行ったかわかる?」


一刀「ん~山の方へ向かったみたいだけど。」


曹操「感謝するわ。


   …それともう一つ。流星がこの辺りに落ちたようなのだけど、見なかった?」


風「…。」


一刀「流星?」


曹操「えぇ、なんでも占いでは、『天の御遣い』が乗ってくるそうよ。」


一刀「えぇ?!俺そんなカッケー乗り物に乗ってきたのか!?」


曹操軍一同「…!」


風「お兄さん…。」


一刀「あれ、なんか失敗したか?」


曹操「そう…貴方がそうなの。


   春蘭?」


そう名を呼ぶと、愛しい右腕が大剣を担ぎ前へ出る。


春蘭「はっ!」


私はにっこり微笑むと…


曹操「捕まえなさい。」


一刀「ちょっと!?あれ?!いきなり?!」


風「お兄さん…もうちょっと場の空気を読んでください~。」


一刀「お前が言うな!」風「おぉ?!」


ほんと、度胸は人外のようね。







view ~北郷一刀~




春蘭「何をイチャイチャしおるか!!

   でやあああああああああああ!!」


夏侯惇が、大剣を薙ぎ払ってきた。

避ける?いや無理だろ!


だって夏侯惇だぞ?!

夏侯惇の恐ろしさは前の外史で身に染みてる!

一振りで50人くらい吹っ飛ばす化け物だぞ?!


あぁもう腹くくれ俺!

こうなりゃヤケだ!


俺は盾を構え、身を固める。




あぁ…ふっ飛ばされるんだろうな…

良いよ、来いよ衝撃

…来いって

…衝撃来てってば!!


…衝ちゃん?ふざけてるの?

目を開ける。


一刀「あれっ?!」


夏侯惇を始め、曹操軍の皆さんがポカンとしていた。









view ~曹操~



信じられなかった。

捕まえろという命令で、殺す気満々の一撃を放った春蘭にも驚きだけれど…


夏侯淵「なんと…!」


春蘭の妹である秋蘭も、これには驚いたようだ。


そう、春蘭の紛うことなく本気の一撃が、盾一つで防がれている。

いえ、防がれただけなら運次第で可能な場合もあるでしょう。


問題なのは…。


春蘭「な…!

   わ、私の剣が…!一体どうなったのだ?!」


春蘭の大剣が粉々に粉砕していたこと。

そして、ビクともせずに立っている青年は…






view ~北郷一刀~



なんだ?

ぬおっ?!夏侯惇の大剣が粉々になっとる!!


イヤイヤイヤやり過ぎでしょ周荘ちゃん!!

これもう盾とかそういう域超えてるから!!バリアだから!聖なる鏡的なフォースだから!


ん、でも、ちょっとカチンと来たことがある。


あんなに精一杯薙ぎ払って、もし風にでも当たったらどうするんだ?


俺は呆然としている夏侯惇に近づく。


一刀「正座。」


春蘭「なっ?!貴様!」

一刀「せ・い・ざ」


春蘭「…。」


一刀「いきなり大剣で斬りつけるなんてやり過ぎじゃないか?」


春蘭「だが!貴様を捕まえろと!」

一刀「言い訳しない!!さっきのがもしあの子に当たってたらどうするんだ!」


春蘭「ぬぅ?!

   そ、それは…す、すまなかった。」


曹操軍の将達はその光景を口を開けて見ていた。


曹操「秋蘭?」


秋蘭「は、はっ!」


曹操「幻覚かしら?

   あの春蘭が正座してお説教されているようにみえるんだけど…。」


秋蘭「げ、現実かと。」


曹操「そ、そう…。なんて無茶苦茶な男なの。

   (でも、欲しいわね、彼。)


   『天の御遣い』!」


一刀「はい?」


曹操「名はなんという。」


一刀「北郷一刀だけど。」


曹操「そう、

   貴方、この曹孟徳の覇道に力を貸しなさい!」





第二廻 ~fin~

お読み頂きありがとうございます。


感想、コメント、評価などいただけましたら幸いです。


尚、一刀くんの盾に関して、チートすぎるのでは?と思われる方も居らっしゃるでしょう。

これに関しては次のお噺で説明があります。

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