表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

序章

序章


序章



 その裁判は最初から異例だった。

 最高裁判官たる皇帝アズリエル・パラメイト・レイダース5世を中心に、ずらりと居並ぶ八人の選帝侯、八人の帝国軍指揮官、二十余名に上る各大臣、四十余名に上る各領領主、数百名に上る帝国中枢を担う貴族、議員、そして数えることのできない群集。

 全員が壇上にあるただ一人の男を見ていた。

 男の名前はカイン・アーランフェルド。先日起こった隣国トーリアス神聖帝国との間に起こった通称ミフィア戦役の首謀者とされる男である。

 鼻筋の通った顔は、まずまず美形と言われる類にしても構わないだろう。赤味を帯びた長い黒髪は腰まであり、これを首の裏で紐で無造作に結わえている。しかし、今はひどい格好だった。服はヨレて皺くちゃ、ところどころ破れているし、顔は埃に塗れている。髪は何日も櫛をいれていないのだろうか、ぼさぼさのままだ。頬はこけ無精髭が伸びている。

彼の周りは完全武装の兵士で固められていた。槍の穂先、剣の切っ先、弓弦に張られた矢の全てがこの男に向けられていたことが、この裁判の異様さを物語っているだろう。

「被告カイン・アーランフェルドに判決を申し渡す」

 黒のローブを身に付け、手に錫仗を持った男が一際大きな声でそう言うと、それまでざわついていた会場が一斉に静まり返った。男はその様子に満足したかのように軽く頷くと、気障な様子で居並ぶ高官らに頭を下げて見せ、そうしてカインを睨みつけた。

「判決、有罪。被告を──」

 一瞬の静寂、そして爆発。

 観衆のどよめきの只中で、カインはその顔を皮肉げに歪めたまま、悠然と立っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ