表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/42

7話  第8エリア代表選抜大会

『今年の王者は君だ!目指せチャンピオン!大会!第8エリア代表選抜大会』


 試合会場に掲げられた頭の悪い大会名を見ると微妙な気持ちになってしまう今日この頃。みなさまはどのようにお過ごしでしょうか?私は無事、地方予選を突破しエリア大会(県大会みたいなもの)に出場しています。今日8月10日はその予選が行われる日です。



「おーい、だいすけー。」



 お、やっと松田が来たか。受付終了まであと10分だってのに。



「はぁはぁ、すまん。緊張でなかなか寝れなくて寝坊した。他の人は?」


「もう中に入ったぞ。ちなみに俺も受け付け終了してる。お前も早くいかないと不戦敗になるぞ。」



 俺の言葉を聞いて慌てて受付へ向かう松田。どうやらホントに寝坊だったらしく普段のクセ毛に寝癖がプラスされて髪がもうヤバいことになってる。まるでライオンだ。


 そんなことを考えながら俺も会場の中に入った。





 会場の中にはそこそこの人がいる。とはいえ平日だから客席の半分が埋まる程度だ。会場そのものの大きさは地方予選大会に比べ二回りほど大きい。さすがにエリア8の中心都市の会場なだけはある。



 受付を済ませたライオン(松田君)と二人で先輩との集合場所へ向かう。そこには既に二人の先輩(ちなみに2人ともイケメンだ。優等生っぽいのが池田で不良っぽいのが華柳)がいた。地方大会で勝ち抜いたのは俺たち4人とドゥークなのだ。



2人に近づくとこっちに気付いた池田先輩が話しかけてきた。



「おーなんとか間に合ったか。ギリギリだったな。」


「すみません池田先輩、華柳先輩。寝坊しました。」


「おっせーぞ!今回は事前情報でエントリーの順番で試合が決まるって言ってたろうが。お前が遅れたせいでたぶんお前だけ別の組の試合になるだろ!チームから1人減っちまったじゃねぇか。」


 いやいやこれは本来個人戦であってチームって発想がおかしいけどねって思うけど周りの参加者たちもチームを組んでる様子が見て取れる。まあ、1対1なら勝ちあげれないやつも今回のバトルロイヤル形式(事前にアナウンスされている。おまけに前回と同様に勝ち残れるのは複数名なのもわかっている。)ではチャンスがあるからな。

 しかし団体戦は団体戦で別の大会があるのになんでこんな形式にしたんだろう?運営側の考えは謎だなまったく。



「まあまあ、落ち着いて。まだ確定したわけじゃないんだし。松田、君は何組目の試合になった?」


「それが一番最初です。」



 俺たちとは違うね。俺たち3人は5組目の試合だから。しかも確か1組目には…


 同じことを考えたのか華柳先輩も怒りの代わりに憐れみを浮かべて


「1試合目は確かドゥークも同じなはずだぜ。ドンマイだな。遅れてきたのが悪いしな!三坂さんは俺たちに任せろ。」と言った。


 それを聞いた松田は見るからにテンションが下がりまくりだった。もう完全に試合をあきらめてる顔だなこれは。確かに松田の立場なら仕方ないけどね。




 そんなことを話してるとアナウンスが鳴り開会式が始まった。偉そうな人の話は聞かずに華柳先輩と池田先輩は作戦変更について話をし松田は落ち込みまくっている。


俺は作戦を聞きながら周りの人たちを見ている。


どうやら思っていたよりも強そうな人が少ないな。地方予選よりはレベルが高くなってるし中級BMも何人かいる。しかし上級は一人もいなさそうだった。確かに元々上級はほとんどが首都にいるけど、エリア8もそこそこに大きな地域だ。1人もいないのはおかしくないか。


 疑問に思い池田先輩に聞いてみると、



「なんだ知らなかったのかい?今回の大会はほとんど上級者はいないよ。」と言われた。


「???? みんな首都の大会に出たり、予選免除ってことですか?」


 上級者の一部には予選免除という特権があるからそれを使ってるのかと思い聞いてみると



「いや、そうじゃなくて大会に参加する人自体が少ないんだ。木星に新しいダンジョンができたのは知ってるかな?」


「なんかそんな話をちらっと聞いた覚えがあります。」



 確か大会前にクラスで話題になってた覚えがある。



「新しく作られたダンジョン群にはかなり高性能だったり、完全に新規の魔法式が大量にあるらしく上級者はほとんどがその探索に回っているよ。」


「初耳です!全然知らなかった………」



「エリア代表として本選に進めれば上級者もいるだろうけどね。大会レベルの調整役の貴族代表とかあるいは地球からの参加者とかね。だけどそれ以外の上級者はほとんどいないはずだよ。」



 うわー知らなかった。三坂さんの話を聞いたときに突発的に出場しようと思っただけだからな。テレビもあまり見ないし。ホント情報って大事だわ~


 俺が頭を抱えてるのを見て笑いながら池田先輩は話を続けた。



「俺と三坂さんの話は知ってると思うけど、上級者を相手に勝てるなんて俺も思ってないさ。中級者相手だって正面からやればほぼ負けるだろうし。いつもどおりのレベルの大会なら出場しなかったかもしれないけど今回はいいとこまで行けると思うんだ。優勝が無理なのはわかってるけど簡単には諦めたくないしね!0%の優勝確率が今回はほんの少しだけ高くなってる。そのほんのわずかな可能性でも俺は掴み取って見せるんだ!」



 なんか熱いことを言い出した先輩。いつのまにか話を聞いてたのか華柳先輩も「俺だって負けないぜ」とか言っている。松田でさえも琴線に触れたのか、やる気になってるのがわかる。


 ま、それはどうでも良いんだけど…


 それにしてもだから今回はバトルロイヤルなんだな。上級者がいないってことは派手な魔法も少ない、つまりエンターテイメント性に欠けるってことだ。下級と中級の試合でもそこそこ盛り上がれるようにするための演出なんだろうきっと。


 良く考えれば今回はいつもと違うってことに試合日程から考えてもわかるよな。地方大会も例年7日くらいかけてたのを今回は2日だったし。自分の注意力不足にちょっとへこむ。


 しかし上級者があまりいないとなると今回の大会は力試しには向いてなかったかもな。少なくとも俺は中級者相手に負けることはないだろうし、今会場にいる人の中にも俺を超えるやつはいないと思う。


 一気にテンションが下がった俺はぼんやりしながら時間をつぶしているうちの開会式が終わった。







 松田が出る第一試合は30分後の開始らしい。なので今は4人で客席の方にいる。作戦を聞かれないようにするために周りに人がいない場所を選んだから普通の声で会話をしている。


 今回の試合は1試合につき30人の参加で、その中から3人が勝者となる。試合の数は10試合なので最大で30人が予選突破となる。そして予選勝者同士が1対1で戦い、勝ったものがエリア代表として世界大会に出場できるというわけだ。例年エリア代表は1人から多くて5人までだったのが今年は3倍の15人と大人数になる可能性がある。

 池田先輩が言ったように今年はホントに上級者が少ないらしいな。人数を無理やり増やして観客を楽しませようって考えが出まくってるな。おまけに一度の大量に戦わせることで試合数も少なくなっているし。上層部は今年は乗り気じゃないってことかな?


 そんな感じな大会だから松田もまだ希望を捨てていないようだ。先輩たちに必死にアドバイスをもらっている。俺が見る限り松田の組は中級が2人であとは下級だ。うまく立ち回れば予選突破できなくもない。



「基本的には逃げろ。そうすりゃドゥークが他の連中をブッ飛ばしてくれるから。」と華柳先輩は言い


「そうだな。1人ではドゥークにどう頑張っても勝てないだろうし他にも中級がいないとは限らない。ヤナの言うとおり戦いから離れたとこで身を守るのがベストだな。」と池田先輩も言った。


「でもそれだと勝ち上がった時に1対1でぶつかる可能性があるじゃないですか。ここで倒しておいた方がいいと思うんですけ、いっっっったい、痛いです先輩!」



 華柳先輩が松田の顔にアイアンクローを決めていた。がっつり極まってるしあれは痛いだろうなぁ…



「バカかお前は!予選で中級をつぶしときたいから4人で同じ組になろうって決めたのに寝坊したのはお前だろうが!」



 話しながらイラッと来たのかさらに力を込める先輩。それに対し松田は涙目になって謝り続けている。自業自得とはいえさすがに可哀そうになったのか池田先輩がヤナっちを宥めて解放してあげた。


 しばらくして松田は顔をあげた。ちょっと赤くなってるけど黙っておこう。



「でも松田、1対1の戦いのことなんて勝ってから考えろ。そもそもお前だけが逃げる戦法をするわけじゃないと思うぞ。仮にも地方大会を勝ち抜いた人たちだし下級の人はどう戦えばいいかちゃんと理解していると思う。」


「笹川の言うとおりだな。いくら上手く逃げたって狙われないとは限らないんだし。正直あとは運だぞ。」


「だね。ただ松田の有利なとこはドゥークが中級だってわかってるところだ。使う魔法の威力も少しは知っている。それは他の人にはないアドバンテージだよ。」



「…そうですね。………あとはもう始まらないと分からないですね。」



 俺、華柳と池田先輩の言葉を受けて神妙にうなずく松田。ようやく覚悟が決まったらしい。



「そろそろ始まる時間ですね。俺も控室の方に行ってきます!」と言った後、3人の声援を受けながら階段を下りてった。



「先輩たち、実際のところどう思います?」


「運次第だな。」


「運だね。」



 簡潔な言葉が返ってきた。


 ですよねー狙われなきゃ勝てるし狙われたらどうにもならない。まさに運だな。そもそもこのエリア大会に俺以外の3人が出られたのもラッキー以外の何物でもないし。



 眼下の闘技場には選手が入場してきた。当然その中には緊張した松田や余裕の表情を浮かべたドゥークもいる。周りの選手を見て自分が勝つのはわかりきっているのだろう。そんな様子がうかがえた。

 

 上級がいないこの大会ではまあ、それも仕方ないかなと思える程度の実力がドゥークには確かにある。










 この間の地方大会の決勝には俺たち東心峰学園から8人、西海陽学園5人、おっさん7人、若い兄貴が3人、おばさん1人にドゥークが進んだ。このうち中級は俺とドゥークだけだ。


 この25人でのバトルロイヤルは、俺たちが8人で固まって西海陽が5人で固まっていた。他は3,4人で集まりドゥークだけが1人でいた。


 俺たちは前衛に俺、松田、華柳で真ん中に池田ともう一人、後衛に3人という配置で戦いに臨んだ。


 試合開始と同時にすべてのチームがドゥークに対して魔法を放った。どうやら池田が各チームの代表と打ち合わせていたらしい。他のチームとしても中級を先につぶしておきたいから攻撃することに賛同したのだろう。


 炎、雷球、岩の礫、カマイタチ、さまざまな魔法が襲い掛かるが如何せんどれも下級魔法、でさらに公式魔法だ(公式魔法は一般的に体系化された魔法のことで方法や効果がすでに知られている魔法のこと。)左から飛来する魔法は簡易障壁を張ることで、右側には中級魔法、『火爆殺』で吹き飛ばすことで無効化してしまった。ついでにこのとき右側にいた西海陽はぶっ飛ばされ敗退となる。

 

 ドゥークは次に正面にいる2つのチームのうちの片方に火爆殺を放ち、同時にもう一方に対して槍を構えて突撃した。


 あーー言い忘れたが魔法の発動は魔法式によるものだから魔力を込めて即放たれてる。まあ、詠唱破棄みたいもんだから魔力のある限り連発ですぐに発動できるんだ。ちなみに詠唱型、つまり魔法式を用いない魔法を使うのは上級のほんの一部だけだしな。俺は使うけど。






 話は戻るけど、そもそも下級と中級じゃスピードもパワーも違う。正面から突っ込んできたドゥークによってあっという間におっさんたちは貫かれていた。

 

この間、俺たちも見てただけではなく池田の指示のもと魔法を放ち続けていたがドゥークはおっさんたちをうまく盾に使いすべて防ぎ切る。


 うちのチームの連中では貫通するような魔法は使えなく、俺以外で唯一貫通する魔法が使える池田が行動に移ろうとする頃にはドゥークはこっちに迫っていた。


 焦りまくる自陣に対し向かってきたドゥークは前衛にいた俺の心臓めがけて槍を突き出す。相手は下級だという考えから本人にとっては適当に、されど松田たちにとって十分に早い一撃が向かってくる。


 これを俺は「う、うわぁ」とか言いながら偶然を装って剣で叩き落とした。


 いや、別に全力で戦ってもよかったんだけどめんどくさくて…


 槍をはじかれたドゥークは一旦後退する。


 その顔には驚愕が現れていた。


 まさか自分の攻撃が防がれるとは思っていなかったんだろう。適当とは言っても下級なら軽く仕留められるレベルの攻撃だったのだから。


 その間に俺は「先輩頼みます」と言い横にダッシュして距離をあけた。

 

 それを目で追うドゥーク。おそらく俺が中級であることに気づいたんだと思う。視線には警戒が含まれていた。


 意識が俺に向いている敵を前にして、ここがチャンスと言わんばかりにちゃっかり俺についてきた松田以外の人たちは池田先輩がとめる間もなく突撃し返り討ちに合う。





 結果として逃げた俺と松田、突撃しなかった池田先輩に偶然残った華柳先輩とドゥークの5人が生き残り、規定人数となったため勝ち上がることになった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ