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3話 ダンジョン探索

天井が白く発光する石で造られた通路を進んでいると俺の感知範囲内にモンスターが踏み込んできた。


「右からゴブリンが来るぞ」


「わかってますって。そらよっと。」


 俺の警告を軽く流しAは火の玉を3つほど放った。下級魔法のファイアーボールだ。5匹のゴブリンのうち2匹が燃えた。


「1発はずしてるぞ~めんどくさい。」言いながら装飾のない実用一点の大剣を構えるXことエロ太(構えるまでエロ本を読んでた)。エロ太が迫ってきたゴブリンに突っ込むのと同時にDも二本の短剣を構えて飛びかかった。エロ太の一振りで2匹が吹き飛びそれに驚くゴブリンをDが切り飛ばしていた。


「うん、余裕だな。ま、こいつらはゲートアウト前の俺らでも余裕で勝てたしな!」


「いや、お前はさっきから何もしてないじゃん」


気分よく言う俺に対してDがボソッとつぶやいた。うるさい奴め。リーダーは指揮を執ってるから戦わなくていいの。こんな上層じゃやり応えのあるモンスターは出ないんだし。


「おい、魔法式が出たぞ。誰か欲しい奴いるか?」Aが呼びかけるが欲しがる奴は誰もいない。もうみんな持ってるしね。


「誰もいないだろうしさっさと先に進むぞ。予定では深層まで行って1時間ほど狩って帰るつもりだからな」


「うぃー」「了解」「そうだな」


そうして俺たちは次の階層への道を探し始めた。











 現在俺たちが探索しているダンジョンは開拓者の首都から少し離れた場所にあるLV3ダンジョン『エリベイト』である。LV1~3までが下位、4~7が中位、8~10が上位の魔法使い向けのダンジョンである。今の俺たちは中位のダンジョンが適切だが、久しぶりということもあってまずは下位のダンジョンに潜っている。


 今回ダンジョンに来たのは魔法式の回収が目当てである。ダンジョンにはモンスターがいて、モンスターを倒すと魔法式が現れるようになっている。この魔法式は一般的に魔法素材やマジックアイテムの作成、あるいは既に出来上がってるものに対するエンチャントに使われる。あとは魔方陣に組み込んでおくとかだな。

 

 そもそも魔法には大きく分けて2通りのパターンがある。1つは完全に自力で行うものだ。印を結ぶ、詠唱するなどによって魔方陣を用意し魔法を発動させるのがこれだ!この場合だと魔力の供給が止まると魔方陣も消えてしまうため、実戦では多くの魔力を消費する。


 もう1つのパターンは魔法式を使うものだ。あらかじめ魔法式を組み込んだ魔方陣を用意しそこに魔力を流し込めば魔法が発動する。魔法式によって魔法陣を作った場合は魔力がなくても魔方陣は消滅しない。さらに実際に魔法を使う場面ではただ魔力を込めればいいだけだから、詠唱したりするより早く発動できるし消費魔力も少なく済む。

 

 例えばエンチャントで剣から炎が出るようにしたとする。自力の場合は魔力を止めると炎が消えてしまう。もう一度炎の剣にしたかったら再度詠唱して魔法を掛け直さなきゃいけない。魔法式の場合は炎が消えてもまた魔力を流せばすぐに炎が出るのである。


 そんなわけで俺たちを含めた魔力量の少ない連中はみんな魔法式を集めて魔法を行うのが一般的だ。本当は上位の魔法式が手に入ればいいんだけど、今からじゃあとても間に合わない。魔法式を貯める媒介もそんなに容量がないしな。そこで今回の大会では下級と中級の魔法をメインで行くつもりだ。







「結構潜ったな。竜也ー今何階だ?」エロ太 が竜也( Aのこと)に聞く。


「地下25階だな。そろそろ中級レベルのモンスターが出始めるぞ。」


 A が答えると同時に前方の十字路の右の方からモンスターの気配がする。足音を消して近づいてくることを考えるにおそらく中級モンスターだな。


「右から来るぞ。注意しろ。」 


「マジで?俺気づかなかった。てことは中級だな。」


「ようやく本番か。」


 俺の言葉に反応しエロ太は大剣を構えDは短剣を構えた。


「何が来るかわかるか?」Aが俺に聞いてきた。


魔力を耳に集め聴力を強化する。あー個人差はあるけど簡単な身体強化なら魔力の操作だけで可能だ。


「足音が微妙に金属っぽい音がする。このダンジョンで金属を含むモンスターって言ったら」


「メタルウルフか!ラッキー!俺の身体強化に使えるぜ。魔法式は俺がもらってもいいか?」


 エロ太のお願いに対し俺たちは頷いた。さてさてモンスターはこっちの様子をうかがっているな。俺もさすがに集中するか。たぶんこいつらだけで大丈夫とは思うけど念のために剣を抜いた。



 エロ太とDが前衛に俺とAが後衛のフォーメーションで十字路まで徐々に進んでいった。


 接敵まで残り、5 …4 …3 …2 …1 …0! 


「おらぁー!」 


 掛け声と同時に剣を振り上げ曲がり角に潜んでたメタルウルフを切ろうとしたエロ太に対し、体長2メートルほどのメタルウルフは即座に横に跳びそれを回避した。同時に短剣に仕込んだ魔方陣を発動させ雷をまとった双剣がメタルウルフの顔面を横から攻めた。

 しかしこれも体勢を低くすることでウルフは回避した。


「グルラララァー!」


 弱点である雷を嫌ったのかAから大きく離れそのまま後衛に向かってきた。Xは大剣を背負いなおしている。てかもう少し考えて動いてもらいたかった。いきなり後衛が責められるっておかしくね?連携の訓練も今後は考えなきゃいけないな。


「サンダーアロー!」


 考え込んでた俺の横でAが目の前に浮かび上がる4つの魔法陣から雷の矢を打ち出した。

 足止めのために微妙にタイミングがずれて飛来する雷矢に対し、足を止めるウルフちゃん。


「そら!」


 戻ってきたエロ太の大剣が尻尾を切断した。


「グギャアアアァ」


 叫びながら距離をとるウルフ。元の場所から見て左側の通路に入り込んだ。それを追いかけようとする双剣使いに対し大剣使いは


「まあ待て。」とバカなことを言い出した。訳が分からず当然いらっとしたDは


「何言ってんだ?早く殺さないと仲間を呼ばれるぞ!」


「だから敢えて呼ばせよう。そうすれば探す手間が省けるし。俺の魔法陣を作るには4体分くらいの魔法式が必要なんだよ。」


 これに対して割と慎重派なDは当然反論している。


「良いのかリーダー?」とAが聞いてきたけど、もう遅いもの。めっさ遠吠えあげてるもの。責任はエロ太 にとらせよう。はぁ、最近溜め息ばっかり出る俺様。


「Dもう遅い。手負いはXがやれ。俺とDは通路側を」 警戒すると言いかけた途端凄いスピードで仲間が駆けつけてくるのを感知した。


「構えろ!来るぞ!」


 口げんかをやめすぐに全員は構えると同時にやつらが現れた。


「おいおいおいおい」微妙にひきつった顔のAが言う。「・・・・・・・」無言でDがエロ太を横目でにらむ。「今度の外食のときは俺がおごるよ」冷や汗をかきながらエロ太が言う。


 やってきた通路から見て右側から5匹のメタルウルフ正面から8匹、計13匹が十字路の真ん中に、そして手負いのウルフの背後から11匹のウルフ様がやってきた。


「文句は後で言うことにして、あいつら来るの早過ぎね?」


「確かにな。」


Aたちの疑問はもっともだ。遠吠えから十数秒しか経ってない。けど隠れてるモンスターの気配がするし、あいつらが原因だな。


「それぞれの後方にゴブリンの気配がする。たぶん変異体だな。」


「そういえばここのダンジョンにはモンスター使いのゴブリンがいたな。そいつらの能力で狼どもの身体能力が上がっているのか。」


「おまけに指揮官がいるから組織的な攻撃をしてくるぞ!油断するなよ。俺が十字路側をやる。三人で手負い側をやれ!」


「「「了解!」」」 


 返事を聞くと同時に意識を切り替える。まずは目の前の連中を片付けなきゃ。


 剣を抜き全身に魔力を循環させ身体能力を底上げする。久しぶりの緊張感に心がゾクゾクしてくる!


 よし!


 俺が前に出ると狼も4匹が先頭に向かってきた。


 右手の剣を床に突き刺し魔力を流す。魔法式による魔法が発動し前方の床に半径5メートルほどの氷の円ができた。横並びに向かってきた4匹は滑って動きを止める。


 もらった!一気に近づき4匹の首を剣で切り飛ばす。


「ゴガアアアゥ!」 


 今度は氷を飛び越えて3匹が飛びかかりさらに2匹が氷を迂回し左右から攻めてきた。


「三重障壁」


 俺の周囲に薄い魔力の壁ができ、そこに突っ込むウルフたち。三重の盾のうち二枚まで壊されたが残りの1枚が狼の攻撃を止める。動きが止まった5匹をそのまま切りつけ倒したけど…


 思ってたより弱い。個体ごとに強いやつと弱いやつがいるのかなと思ったけど、どうやらメタルウルフという種自体が今の自分と比較すると強くないようだ。


 俺たちの実力はゲートアウトの前までは下級だった。俺の今の実力は異世界での戦闘経験と帰還してからの訓練で中級の真ん中くらいだったと思ってたけど予想以上に強くなってたらしい。………そういえばこっちに戻ってからはいつも仲間内でのみ訓練して中級の相手と関わることなかったもんな!一般的な中級の力を見誤っていたぜ。



 後ろの気配を確認すると徐々に慣れてきたのか、あるいは緊張が解けたのか他の三人も問題なく戦えてる。


 最初の緊張感は必要なかったか。ちょっとテンション下がっちゃったな…気合が空回りした感じだ。いや、強くなってるのは良いことだけど。


 この様子からすると、ここのダンジョンに出現するモンスター程度なら多少無茶をしても大丈夫そうだな。

 ためしに今の自分の全力を開放してみようかな。ウルフも今はビビッてるのか動きを止めてるし。


 一度大きく深呼吸して意識をまた切り替える。





 魔力循環を最大に切り替える。簡易身体能力強化最大。

 専用魔法式起動、スピード・パワー・知覚上昇。

 詠唱による『雷』、『風』のエンチャント完了。





 よし、準備完了!


 足や腕から雷がほとばしり、風のおかげで体が軽やかになった!実にいい感じだ!けど自力の魔法によるエンチャントだから魔力消費が半端ねぇ~ぞこれは。

 

 見れば後ろからウルフに乗ったゴブリンが姿を現している。それによって動揺していたモンスターも臨戦態勢に入ってるようだ。

 狼たちは変異体ゴブリンによって身体能力がさらにアップしているのが高まった知覚によって理解できた。


 だけどそれでも今の自分の敵ではないことがわかる。



 さて、さっさと終わらせようか。

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