37話 RPG?中ボス戦(漢字ver)
RPGもどきは今回で終わりです。次回からはもとの戦闘描写になります。
ダンジョンの話はあと2~4話ほど続きます。
今後の予定はまた後日活動報告に書いておきます。
「だからさ、俺は言ってたじゃん。あの女は運を奪うタイプの女だから別れた方が良いって」 ← 俺
「違う!あいつは関係ない。」 ← A
「リーダーの言うとおりだって。絶対あの女はさげ――」 ← D
「違う!俺が未熟なだけだ。集中力が足りなかったせいだからもう2度と同じ過ちは犯さない。」 ← A
「ところが再び同じ過ちをやってしまうことになるのさ。なぜならあいつはさげ○ンだから。俺が一発やって体質改善してやるから今度3人で―――っぐはぁ!」 ← X
ひどい声を漏らし吹っ飛んでいくエロ太。
あいつを殴り飛ばしたAはそっちを見もせず前を進んでいく。
まあ、今のはエロ太が悪いからな。仕方ない。
「そうですわね。下品で気持ち悪かったですわ。」
「俺の思考を読まないの。わかったアリス?」
「はい。」
俺と腕を組んで歩くアリスは元気良く返事をするが、今もおもいっきり俺の心の中を覗いているのがわかる。
まったく……まあ、アリスなら別に良いんだけどな。エロいことを考えようがアホなことを考えようがアリスは気にしないだろうし。
「竜也~怒んなって。」
「うっさい!怒ってないし!うっさい!」
「あれだよ。おれたちはおまえのことを思って言ってるんだぞ。」
Dとエロ太がAを宥めようとしているがすっかり機嫌を損ねたAは聞く耳を持たないようだ。
「遊び相手にマジになるのは危険だぞ。俺も異世界のときは殺されかけたし。仲良くなった人間のセフレにほいほい着いていったら殺されそうになったことあったし。」
エロ太が自分の体験をもとにAを宥める戦法に出たようだ。
……そういえば、そんなこともあったなぁ。気まぐれに人間の国を一つ保護して配下に置いたときのことだったか。
最初は従順だったがやがて俺たちに見つからないように反抗作戦をたくらんでいた国のことだ。もちろん俺には筒抜けだったけど。
我が軍の幹部であったエロ太を誘惑し情報源とした後に、殺そうとたくらんでいたな。俺やミルベリーやシュザンヌはそれを遠視で見ながら爆笑していたなぁ。
ピュアなハートを傷つけられたエロ太はその女をオシオキして、妊娠したら開放してやってた気がする。もうずっと昔のことだ。
「そんな残念なストーリーがあったんですの。」
「ああ。俺は面白おかしく鑑賞していたけどね。」
俺たちは元々がモテるタイプじゃないからな。
あの頃というか今でもだけど部下たちはちょっと気のある素振りをされるとすぐに舞い上がってた気がする。
「若い頃の過ちってやつさ。」
「「「きもい」」」
ニヒルな感じを出したつもりなのか、キモイ声と表情で言うエロ太。俺たち男3人は声をそろえて感想を述べたがエロ太はまったく気にしない。
「キモイですわ。」
男の声は気にしないけど女に言われると傷つくらしいエロ太はその後しばらく無言だった。
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進むこと30分ほど。ようやく30階層の不死鳥の巫女が出る広間の前に到達した。結局ここに来るまで探索開始から4時間もかかったことになる。こりゃ今日中に90階層までは不可能だな。
「ダメな男たちですわね。大祐、もうわたくしと二人で行ったほうが良いのではありませんか?」
「それなら最初から二人で来たほうがいいって言うか、魔法式をもらったほうが早かったって言うか。」
困ったように話し合う俺とアリス。正直こんなに厳しいものになるとは予測してなかったしなぁ……
下の階層に行けば雑魚敵もさらに強くなるし、宝具を使えば勝てても魔力消費が激しいだろうし。
「すいまっせーーん!ファスナイルさん!ですがもう一度だけチャンスをいただけないでしょうか?見事巫女を倒して、名誉挽回して見せます!どうかもう一度だけ我々にやらせてください!」
「「お願いします!」」
エロ太が大きな声で『アリス』にお願いし、AとDも声を揃えて叫びながら『アリス』に頭を下げる。
おかしくね?
俺の部下だよね?
俺に言うべきじゃね?
「いかがいたしますか大祐?」
「や、待って。その前におかしいことあるよね?」
俺がそういうとアリスは可愛らしいきょとんとした表情を浮かべたあと、すぐに何を言いたいのか察して微笑みながら話し始めた。
「ああ、そのことですの。それでしたら何もおかしいことはございませんわ!この3人はわたくしの遥か下の立場ですもの。一番上に立つ大祐に直接話しかけるなど畏れ多いことですわ。」
「……なるほど。確かにそれは言えてるな。」
いくらレベル10のダンジョンとはいえこんな低階層で躓くような部下だからな。少し厳しくしたほうがいいかもしれない!
心に決め頷く俺と微笑みながら腕を組んでくるアリス。
それを見た部下たちは「冗談だったんだけど。」「リーダー?あのリーダー?」とか言っているが俺は無視を決め込んだ。
代わりにアリスが「名誉挽回という話でしたわね。それならば直ぐに奥の広間へと進み結果を示しなさい屑ども!」ときつく言って追い立てている。
部下たちは微妙な表情で扉をくぐり内部へと入っていった。
その隙間から見えるのは俺が以前来たときと同じく、羽の生えた全身炎の人魚だ。しかし以前よりも少し小さく、また迸る魔力も少ないようだ。
「魔力がまだ溜まりきっていないのでしょう。強いモンスターほど必要な魔力は膨大で新たに出現する時間もかかりますから。」
おそらくはその通りだな。
部屋に満ちる魔力も前回より少ないようだし、以前よりは弱く再生回数も少ないみたいだ。これならあいつらでも問題なく倒せるだろう。
部屋に入り巫女と対峙した部下たちはそれぞれ武器を構える。
「いつもどおり行くぞ。俺が先行するから、風太は大技でダメージを狙ってくれ。竜也は魔法で援護だ。再生の隙を出来る限り与えないように気をつけてな!」
「オッケェーー!任せてくれ!」
「今回は気絶しないぞ!」
Dの指示にエロ太とAが応える。
そんな戦闘の意思を示す部下たちを見た巫女がゆっくりと魔力を集めだした。
「来るぞ!名誉挽回じゃーーー!」
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不死鳥の巫女(最弱)が現れた!
Dは魔法を発動させた。
D「攻防強化!」
身体強化の魔法式が作動し、青い光がDを包む。
Dの攻撃、防御、素早さが上昇した。
エロ太は魔法を発動させた。
エロ太「全力で行くぜ!」
身体強化の魔法式が作動し、赤い光がエロ太を包む。
エロ太の攻撃、防御、素早さが上昇した。
Aは魔法を発動させた。
A「全体強化!」
身体強化の魔法式が作動し、不可視の輝きが3人を包み込む。
A、D、エロ太の攻撃、防御、素早さが上昇した。
巫女の攻撃。
巫女の口から激しい炎が吐き出される。
結界が炎を弱める。
Aに18のダメージ。
Dに31のダメージ。
エロ太に27のダメージ。
大祐とアリスは抱き合っているため身動きが取れない。
Dの4連続攻撃。
風神の一撃。
風が巫女を襲い201のダメージ。
刃が巫女を切り裂き180のダメージ。
雷神の一撃。
雷が巫女を襲い243のダメージ。
刃が巫女を切り裂き270のダメージ。
エロ太の攻撃。
会心の一撃!巫女に577のダメージ。
Aは隙をうかがっている。
A「今度こそやってやんよ!」
大祐はアリスを抱きしめ尻を触っている。
大祐「ええケツしてるね~グヘヘ。」
アリスは身動きが取れない。
アリス「ぅぅ……恥ずかしいですわ……」
巫女の攻撃。
炎の羽を無数に飛ばした。
ミス。Dは攻撃をかわした。
エロ太に30のダメージ。
エロ太はAを庇った。エロ太に61のダメージ。
Dに58のダメージ。
ミス。Dは攻撃をかわした。
巫女は再生を始めた。
HPが徐々に回復していく。
回復数値150、300、450、600、70―――
A「させるかー!」
Aは魔法を使った。
巫女の回復が止まった。
Dの8連続攻撃。
D「一気に畳み掛ける!」
大きな魔力がDから発せられ、風雷神が駆け抜ける!
巫女に190のダメージ、204のダメージ、152のダメージ、401のダメージ、221のダメージ、120のダメージ、263のダメージ、188のダメージ。
エロ太の攻撃。
エロ太「きぇぇぇぇぇぇぃぃい!」
防御を捨て攻撃に全てをかけた!
巫女に890のダメージ。
Aは隙をうかがっている。
A「回復はさせないぜ!」
巫女は回復に魔力を使っている。
300回復。
300回復。
150回復。
A「これ以上はさせるかー!」
Aは魔法を使った。
巫女の回復が止まった。
大祐は驚いている。
大祐「俺が戦ったときよりかなり弱いな。」
アリス「あなたの前はしばらく誰も来てなかったから力が溜まっていたのでしょう。」
Dは仲間に呼びかけた。
D「よし!一斉攻撃で片付けるぞ!」
Aとエロ太「わかった!」「了解。」
3人の連携攻撃。
巫女に300のダメージ、300のダメージ、300のダメージ。
巫女は怯んだ。
3人の連携攻撃。
巫女に300のダメージ、300のダメージ、300のダメージ。
さらに巫女に400のダメージ、350のダメージ、300のダメージ。
不死鳥の巫女を倒した!
魔法式を手に入れた!
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「よっしゃー!勝ったー!」
「余裕の勝利だったな!」
「ふっ!本気でやればこんなもんだぜ!」
大剣を掲げて叫ぶエロ太に続いて、AやDも喜びをあらわにしている。
まあ、かなり弱い巫女だったけどそこは言わんでおこう。どうせ次の60階の巫女と戦えば嫌でもわかるだろうし。
そんなわけで俺とアリスは余計なことは言わず喜びに震えている部下たちを眺めていた。
そして一通り落ち着いた後、手に入れた魔法式をどうするという話になったが結局誰も回収しなかった。
再生とか回復をつかさどる魔法ってのはクセがあって扱いが難しいからな。ましてその最高位である巫女や不死鳥そのものの魔法式なんて扱えるものは上級BMの中でもほとんどいない。さらにはそれを人体に植え込むなんて俺以外には出来ないだろう。
「おっしゃるとおりですわ。人体へ魔法式を植え込む技術を持つものなど限られています。そのための研究を行うこと自体が難しいですから。まして最高難度のそれらを扱うなど論外ですわ。」
加えて魔法式の貯蔵庫の容量もかなり必要であることもあって誰も回収しないことになった。
一通り喜んだ後は再び次の階層目指して進んでいく。こっから先は俺も入ったことはないが、アリスの話によるとそれほど大きな変化はないそうだ。データによると雑魚敵のレベルが大きく上昇するのは100階を越えたところかららしい。
それまではモンスターの種類は同じだが数が増えたり、少し変化した行動をとったり、まれに亜種が出現するらしい。
もっともここに来るまでの雑魚敵で十分に苦戦しているからな。時間の都合もあるし既に部下たちによる通常の探索は断念することにした。
今日のところは俺の“性魔法の応用”で雑魚敵を避けることにして、絶対に戦わなければならない地下60階と90階の中ボスだけ戦い、転移設備でダンジョンを離脱。本日の探索は終了ということに決めた。
そんなわけで俺の性魔法により、モンスターが嫌う魔力を発生させることで戦闘は回避。罠にだけ気をつければいいので60階層までは30分ほどで到達することが出来た!
さきほどの巫女戦のこともあり、部下たちの士気は高く勇ましく戦場に突入する部下たち。
戦場への扉をくぐった先には森林が広がっていた!
上には魔法か科学かわからんが人工的な映像による青空が広がっていて、遠くからは水の音が聞こえる。おそらく小さな小川でもあるのだろう。
魔力で探ってみたところだいたい縦横100メートルくらいで、一面に存在するキレイな緑の葉をつけた広葉樹は燃えない性質を持つ樹らしい。
そんな自然の風景と魔力に満ちたこの部屋の中央には樹が生えていない見通しのいい部分がありそこに巫女はいた。
見た目や魔力は俺が前回戦ったときのものとほぼ同じだが、今回のは腕が左右に2対、4本生えている点だけが違っている。下の左右の手にはハルバードを、上の両手にはこちらを目視すると大きな炎弾が現れた。
「こりゃ油断できないぞ!」
「ふっ!俺の相手にふさわしい力を持つようだ!」
「今度も勝てるさ。」
「余裕だな!」
俺が忠告すると大口をたたき返してくる部下たち。
「馬鹿ですわね。」
「馬鹿だな。」
ため息をつき呆れる俺とアリスをよそに部下たちは巫女へと戦いを挑んだ!
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戦いが始まりあっという間に10分ほどが経過した。
未だに巫女は健在で、消耗した様子をまったく見せない。
一方で部下たちはもうヘトヘトだ。
30階のときよりも全てのステータスが高くなっており、接近戦にも強くなっている。当然ながら再生スピードも上がっているため部下たちが攻撃を与えてもすぐに再生されてしまう。
時折Aが上手いタイミングで攻撃し再生を妨害できるのだが、そのあとの攻撃をDとXが仕掛けても接近戦能力が高くなった巫女のせいで一気に押し切ることが出来ず結果として再生を許してしまう。
既に何本かの回復薬も使っており、余裕はなくなってしまった。
「まさかここまで違うとは!」
「確かにな。だが今それを言っても始まらない。竜也はできるかぎり再生を妨げてくれ。風太!もう一度いくぞ!」
「おう!こんなやつに負けてたまるか!」
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部下たちの連携攻撃。
A「中級魔法・闇鎖の空間束縛!」
Aの魔法により不死鳥の巫女の動きが止まる。
D「畳み掛ける!」
風雷の双剣が音速で駆け巡る!
X「セイ!」
黄金の巨刃が巫女を叩き潰す!
大ダメージ!巫女に1893のダメージ。
闇の鎖により巫女は動けない。
Dの攻撃。
巫女に313のダメージ。
Xの攻撃。
巫女に488のダメージ。
Aは呪文をとなえた。
A「――ムニャムニャ……よし!トドメだ!中級魔法・原初の火――」
巫女の鎖が外れて動けるようになった。
再生の炎が巫女を癒やす。
HPが2000回復した。
続けて巫女の攻撃。
ハルバードから生み出された炎の斬撃がAを襲う。
A「はぁぁぁーーー!?ウソォ!?」
Aに509のダメージ。Aは死んだ。
大祐は呆れている。
大祐「何をやってんだかアイツは…アリス~」
アリス「はい。わかりましたわ。」
Aの死に動揺してDは動けない。
Aの死に動揺してXは動けない。
巫女の攻撃。
両手から生み出された巨大な火球をDとXに投げ飛ばす。
ミス。アリスの結界が火球をかき消した。
アリスは呪文をとなえた。
アリス「消えなさい。」
終焉の闇が世界を押しつぶす。
巫女に9999のダメージ。不死鳥の巫女を倒した!
Dに9999のダメージ。Dは死んだ。
Xに9999のダメージ。Xは死んだ。
魔法式を手に入れた!
王剣を手に入れた!
シーズメイガスを手に入れた!
風神雷神Ⅱを手に入れた!
28455円を手に入れた!
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こうして熾烈な戦いは終わった。
3人の部下の死という犠牲を払って。
地下237階まであるダンジョンの中の地下60階の中ボス戦はようやく終わった。
もう一度!しっかりと!正確に!落ち着いて!このダンジョンの探索計画を考えなければいけないのかもしれない。
そんなことを思いながら俺とアリスは100階層にある地上への転送装置まで向かった。
ちなみにそこに行くまでの道中は俺が部下たち3人の足を持って歩き、アリスが途中のモンスターをボコってた。90階の巫女もアリスが一撃で倒してたぞ。
そのまま外に出た俺たちだが、一向に部下は目を覚まさない。
仕方ないから未だに気絶したままの部下たちを殴り起こして、声をかけた後は静かに家路についた。
ちなみにアリスをお持ち帰りしたけど、今後の計画を立てることを優先したのでお楽しみはまた今度になりましたとさ。