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35話 俺と部下とアリスでダンジョンへ


「はい、皆おはよう~今日もいい天気ですね。本日から5日間祝日や土日が続いて学校もお休みということでダンジョンに潜るわけですが、怪我などしないようにしっかりと頑張りましょうね。」


「はい。」


「………」「………」「………」



 俺の爽やかな朝の挨拶に対して返事をしたのは、俺と手を繋いでいるアリスだけ。


 隣で俺を見つめ、微笑みながら返事をしてくれる。


 カワイイですな~!


 それに比べて他の部下連中はダメだ。


 無言でただじ~っとこっちを見ている。


 なんなのこれ。反抗期?



「ちょっとちょっとーどういうこと?挨拶はしっかりしろよ!」



 ダメダメな、ダメダメな部下たちに俺は朝から説教をすることにした。まったく挨拶もできないとはダメダメで不甲斐ない部下たちだ。











 今、俺たちは木星のダンジョン、不死鳥祭殿の入り口に集まっている。


 5連休を利用してがっつりダンジョン探索をして、最深部にいる不死鳥の魔法式を手に入れることが目的だ。


 以前俺が不死鳥の巫女に手間取ったように高難易度のダンジョンだから油断は禁物だ。万が一のことを考えピンチの時の戦力としてアリスも連れてきた。


 アリスを誘ったところ、「不死鳥祭殿ですか?構いませんが、不死鳥の魔法式ならおそらくどこかにストックがあるはずですわ。アレは手に入れるのも難しいですがそれ以上に使いこなすのが困難ですから。ほとんど使い手はいないはずなので、わたくしの方で用意できると思います。そちらの方がよろしいのでは?」と申し出てくれた。


 ただ今回は久々の宝具の練習も兼ねてるし、また部下たちにアリスを会わせるというのも目的の一つであるから自分で取りに行くことにしたんだ。


 そんなわけで昨日泊まった睦美の家を出て、待ち合わせをしていた転移施設の前でアリスと合流。んでダンジョンの入り口前まで来たわけだが………


 部下どもはアリスの顔をじーーーっと見ている。


 挨拶を無視したのと俺の女にちょっかいだすなよ!と思ったんで説教をしてるが……どうやらアリスに見惚れているのとはちょっと違うな。


 もしかしたら俺がアリスと会った時と同じく変な記憶でも浮かんでるのか?



「おーい。大丈夫か?」



 とりあえず3人の顔をペチペチ叩きながら呼びかけるとなんとか復活したようだ。



「お、おう。すまんすまん。」


「……マジかー。ホントに眷属だな……」


「ビックリだよな…リーダーの勘違いかと思ってた。どうせいい女見つけて舞い上がってるだけかと思ってたぜ……」



 頭を軽く振ってるA、探索用の壊れにくい眼鏡が微妙にずれたD、失礼な発言のエロ太がそれぞれ呟く。


 なるほど。話には聞いていてもやはり実際に会うと感じるものがあるのかな。


 こいつらもようやくアリスが俺の眷属、つまりこいつらにとって同格だと認識したらしい。


 あ!待てよ。それじゃあこいつらにはアリスがどのように感じられているのだろう?



「お前らの目から見て、アリスはどうだ?」


「???」「眷属だな。」「うん。眷属だ。」

 


 俺の質問に対して不思議そうな顔をしたり、ピントのずれた返事が返ってくる。



「そうじゃなくてだ。お前たちの目から見てアリスはどう映る?ミルベリーのように性的な魅力を感じるか?それともシュザンヌのように近親者のように感じるか?」



 俺の質問にようやく合点がいったのか頷いて答える部下たち。



「そういうことね。それならこの人はシュザンヌ派だ。」 ← Aのセリフ


「達也に同意だな。可愛いとは思うが性的なアレは感じないな。ぶっちゃけやりたいと思わない。」 ← エロ太の言葉


「二人に同じ。リーダーと手を繋いでいるのを見ても羨ましいと思わない。姉とか妹……なんか違うな……従妹くらいかな?従妹が彼氏と手を繋いでいるのを見ている感じ。三坂さんや睦美ちゃん?と手を繋いでるのは羨ましいと思うけどな。」 ← Dの返事



 ふむふむ、なるほどね。こいつらがアリスに対して異性というよりも身内的に感じるってことから、元々俺とアリスの相性はいいってことだな!









 魔王、つまり俺との相性(性格を含めて魔力だったりセンスだったり魂の波長っぽいものだったり全般的にな)がいいやつほど、眷族としてより強い力を得て尚且つ俺に従順なのだ!


 相性が悪いやつはその逆だ。


 特に悪いやつは眷族化を行うことができなかった。


 実際、魔王になる前から仲のいい部下たちは今もこうして一緒にいるが、こいつらほど仲の良くなかったBとCは現在俺から離れて行動している。現役魔王と眷族の時もBとCはこいつらより力が低かったしな。



 んで眷族同士の場合、俺から多く力をもらったもの同士は血縁者のような親近感があるらしい。


 らしいというのは俺自身は普通に女として見れるから部下たちの感覚はイマイチわからないんだ。

 

 一例を挙げると、かつての眷族のミルベリーやシュザンヌはともに美しい女だったが、俺を慕い眷族となったシュザンヌに対して部下たちは女を感じていなかった。

 でもエロい身体にほれ込んで強引に眷族にしたミルベリーに対しては欲情しまくりだったからな。 



 そんなわけでアリスのことだが、アリスは特殊な性癖がある人間を除けば誰もが美しいと答えるであろう女だ。当然女好きの部下どもなら涎を垂らしてガン見する逸材だが、実際の部下たちはアリスに女を感じないという。


 つまりアリスちゃんは俺と相性が良い人間だった、かつ多くの力を分け与えたってことが判明した!


 まあ、だからどうなるってわけでもないけどさ。


 






「あの大祐?この気持ち悪い人達はなんなのでしょうか?殺してもよろしいですか?」



 考え込む俺の手をクイッと引きながらアリスが物騒なことを言い出した。


 この人形みたいな整った顔が真顔で殺すとか言うとかなり怖いぞこれ。



「よろしくありません。ていうかずいぶん過激だな。」



 俺が驚きながら言うとアリスも困惑した顔をする。どうやら自分でも何でこんなことを言い出したのか不思議に感じてるのかもしれない。



「……何と言ったらよろしいのでしょうか……わたくしにもわからないのですが……この方たちの顔を見ると、汚らわしいというか不快な感情が湧いてくるのです。性欲だけは一人前の無能な部下を見ているような、性欲だけは一人前の役立たずの下働きを見ているような。性欲だけは一人前の弟子を見ているような。」



 結構辛辣なことを言うアリス。


 てか性欲だけは一人前って3回も言ってるしな。



「あ、リーダーひどくねこいつ!おい、調子に乗るなよアリス!同じ眷属でも俺たちの方が上―――」



 エロ太が勢いよくアリスに喋っていると突如アリスの体から強力な魔力が噴き出される。


 あまりに強い魔力を叩き付けられエロ太は言葉を止め硬直してしまった。



「あなた方に、わたくしを、呼び捨てにする許可を出した覚えは、ありませんわ。」



 ゆっくり一言一言告げるアリス。


 ついでに魔力で部下たちを圧迫しながらだ。


 エロ太を含めAもDも完全に動きを止めてしまっている。



「また、眷属としてもわたくしたち女の方が立場は上ですわ。わかりますか?」


「はい。申し訳ありませんでしたアリス様。」



 アリスの言葉に大人しく従うエロ太。力に屈するのが早すぎだよ!とも思うが……まあ、今のアリスの迫力は半端ないからな。仕方ないか。


 顔立ちが整っている人って怒ると超怖く見えるからな~


 さすがに3人ともビビって震えたりはしてないけど、逆らうつもりは欠片もないようだ。


 この後もアリスの言い分を素直に受け入れていた。


 アリスが名前で呼ばれるのが不愉快だということで「ファスナイルさん」とお呼びすることが正式に決まっていた。


 あ、今更だけどアリスにはこのまえ魔王や眷属の話をしておいたぞ!だから眷族のことを詳しく知ってるんです。







「さて、紹介も終わったしさっそくダンジョン探索と行こうじゃないか!」


「はい!」「「「うぃーす。」」」


「じゃあ、アリス。入るための手続きをしてくれ。」


「はい。」



 俺の指示に従いアリスはダンジョン入口の端末へと向かった。


 アリスが作業している間に部下たちにも指示を出す。



「今のうちに装備の最終確認しておけよ。ここのモンスターは多分強いぞ。」



 こいつらは大会が終わってから装備を一新している。


 魔法をメインとするAはシーズメイガスという中級の杖を装備しているしDやXも装備が変わっている。



 Aは杖が『シーズメイガス』という金属製の緑色をした中級の杖。魔法式の貯蔵量が増え、魔法の威力が増大される機能がついている。

 身体には運動性能が高まるズボンとシャツ、そしてローブを着ている。ローブは熱とか冷気を遮断する効果もついているそこそこのメーカーものだったはず



 Dは双剣が『ツインファング』から『風神雷神Ⅱ』に代わってる。羽を意識した形状の風神に、雷を意識した?のか微妙だけどハリネズミのような刃の雷神の双剣だ。こいつは自分で魔法で使うのではなく初めから風と雷の属性がついている中級の双剣だ。

 防具は黒い上下の衣服の上から水色の胸当てと篭手、それから膝当てをつけている。俺は見たことないもんだからわからんが中級なのだろう。



 Xは大剣『山割』という簡素なものから、なんかゲームで出てきそうな無駄に豪奢な黄金の大剣になっている。確か『王剣』という半ば洒落で作られた割に性能がいいと評判の大剣だ。この大剣は魔法式貯蔵量も多いし、剣に初めから賦与されている効果で他の大剣に比べてかなり軽い。

 防具は全身銀色のフルプレートだ。こいつだけ兜をつけているな。





 あ、そういえば町を歩くときは防具はつけてないぞ。


 魔法で出し入れできるからな。


 必要な時に魔法で即座に呼び出し装着できるようになっている。


 一方で武器は装着したままだ。


 何故かっていうと武器に魔法式を貯蔵する人がほとんどだからだ。

 

 基本的に防具は作られた段階で軽量化だったり防御力アップだったり耐性だったりでいろんな効果をつけられていてほとんど貯蔵量がない状態だ。例外もあるけど。

 

 この辺の説明は今度機会があればしようじゃないか!


 あ、言い忘れたが街を歩くとき剣だったら鞘に入れるなど剥き身じゃないことが条件だぞ。刃が丸出しだったら警官に捕まるからな。








「俺は準備OKでーす。山彦(D)は?」


「こっちも大丈夫。風太(X)、お前は?」


「問題なし!いつでも行けるぞ。」



 どうやら部下たちの準備は整ったようだ。


 アリスも手続きを終え戻ってきたし………



「よし!では――――」


「ちょっと待て!」




 んんんだよ~~~せっかく人が気合を入れて出発しようと思ってたのにAが邪魔をしてきた。



「リーダーの準備は?」


「俺?俺は問題ないぞ。」


「いや……だってお前……」



 変な反応をする部下たち。俺は下が戦闘タイプのジャージに上がTシャツという格好だ。


 うん。何の問題もないだろう?



「えっええええぇぇぇ…………ま、まぁお前が良いなら良いけどさ。せめて武器くらいは出しとけよ。」


「???武器はないぞ。大会で壊れてから買ってないもの。」


「「「は?」」」



 あーそういえばアリスには言ったけどこいつらには言ってなかったか。


 今回の目的は不死鳥の魔法式を手に入れることだ。


 んで手に入れた魔法式で俺の武器を自分で作ろうと思ってたんだ!頑丈で壊れにくい剣をな!


 元の設計図はできたからあとは材料を集めて作るだけだ。


 わざわざ剣を作るのは、魂の研究では既製品では扱えない魔法式を使う可能性が出てきたからだ。最高級品なら問題ないだろうがそんな金はない。アリスに買わせるわけにもいかないし(アリスはぜひプレゼントさせてと言ってきたけど)自分で作ることにしたんだ。


 そんなわけで今回の探索では基本的に俺は戦いません。



「おい~マジかよ!?」「レベル10を俺たちだけじゃ厳しいぞ。」とか言ってきたけど、修行のため、ピンチの時は宝具を使っていい、さらにピンチの時はアリスが動くということを言ったらようやく、それでも渋々従ってくれた。









 そんなわけでようやくダンジョンに潜ることになった。


 前衛がDとX、中衛がAで後衛が俺とアリスとなっている。


 だが基本的には俺とアリスは見てるだけで部下たち3人が戦う感じだ。


 それでも割とあっさりと進めている。


 モンスターにも手こずらないし罠にもかかるという様子はないしな。もちろん低階層だからというのもあるけど部下たちのチームワークが良くなっているというのもある。



「来たぞ!フレイムウルフだ。物理攻撃は効きにくい。注意しろ!」


「了解!」「援護は任せろ!」


「お前の胸は柔らかいなアリス。大き過ぎず小さ過ぎずでちょうどいい感じだ。俺は好きだぞ。」


「あっ、あん!~~もう!ここはダンジョンですわ。気を付けないと―――きゃっ!んっんん。」



 Dの声を聞き油断なく構えるXとA。


 向かってくる炎の体をもつ狼、フレイムウルフ3匹に対してAが牽制の魔法を放ち足止めをする。

 

 そこをDがすかさず駆け寄り風神と雷神で切り裂くことで2匹がやられるが1匹は回避する。


 そして体勢を立て直しDを襲おうとしていたフレイムウルフを後ろからXが豪快に切断した!


 一方俺はアリスをソフトに攻め立ていた。アリスにしっかりとダメージを与えることができて順調だ!



「っっっっっんっっっ………ふっっっあ!いゃ!あん!」


「可愛いなぁアリスは!何だかんだで機会がなかったけどこの探索が終わったらアリスの処女をもらうからな。心の準備しておいてね。」


「はい!………あの……でしたらこのようなことはその時にしてくだされば――キャッ!」


「次のモンスター来たぞ!蜘蛛馬だ。構えろ風太、竜也!」


「でか!情報から想像してたやつの3倍でけぇ!3メートルくらいあるんじゃね?」


「ホントだ!でも初めて見たけどなんかシュールだな。足が蜘蛛で上半身が馬とか……強い割に『ホースパイダー』とかフザケタ名前なのはこの外見のせいだろうな。」


「お喋りはそこまでだ!行くぞ!」


「「おう!」」



 Dの掛け声に従いAとXも攻撃を開始する。


 うん。なかなかのチームワークだ!この分なら少なくとも不死鳥の巫女までは簡単にたどり着けるだろう。


 時折、モンスターの攻撃が一部こっちに来るが俺かアリスが結界を張ることですべて遮断できている。


 問題なしだ!



「うが!糸が絡まった!ヘールプ!ヘールプミー!」


「よし。お前はそのまま囮になれ風太!行くぞ竜也。」


「OK!」



 ホースパイダーの馬の口から吐き出された糸で身動きが取れなくなったエロ太を無視してAとDが果敢に攻める。


 二人が頑張って攻めてるからモンスターはエロ太を攻撃する余裕がないようだ。


 武器を持たない俺もしっかりとアリスを攻めたてて優勢だ!アリスは息を荒くしてこっちに身を委ねてくれてる。そんな状態でありながら戦闘の方もちゃんと意識してるようだからさすがだな。


 うん。探索は順調だ!



「おいーーー!なんか変な液がかかったんだけど!動けないから回避できないんだけど!体から力が抜けるんだけど。マジでこの糸を何とかしてーーー」



 ……うん。順調だ!






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