表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/42

30話 いざ、目的地へ



  

「ちょい~っす!」


「おう、おはよう。」



 変な挨拶と共に教室へ入ると、先に来ていたクラスメイト達が挨拶を返してくれた。そのまま自分の席へ向かう俺。


 今日は放課後がアレだから、予定とか色々確認しておこう。そう思って端末を操作する。

 

 すると端末から光が出て立体映像が現れる。視覚妨害付きだから他の人たちには映像に何が表示されているかは見えないのだ。俺のは魔力駆動型だから魔力のある限り動く代物である。


 

 あの大会から1か月が経ち、魔王化の研究をちょいちょい行っているが設備が厳しくあまり進んでいない。


 でも今日から塔の中層にある研究施設、正式名称『開拓者直轄全国学生研究所』というダサくて長い名前の場所へと移籍するわけで研究も進むだろう。あそこは設備はもちろん、人間も全国の優秀な学生が集まるところだからな!


 そんなわけで松田や西川とかが話しかけてるのに適当に答えながらデータの整理を行ってると睦美が来てホームルームが始まった。







 んでさくっと昼休みだ。


 昼は西川、虎川原、松田と食うことが多い。たまに寺島がいたり直前が睦美の授業だと睦美がいる。京子が友達連れて来ると西川たちはテンションが高くなる。


 今日は俺の研究室入りの話もあるからか、寺島、睦美、京子たちとフルセットで集まっている。



「大祐は良いな~。今も三坂さんと先生を両手に侍らせながら飯食ってるし、今日からは貴族のお嬢様や全国の実力者の美女たちと一緒に過ごすんだろう?羨ましいぜ…」



 西川が心の底から思ってますって感じで言ってきた。それを京子の友達とかは微妙に引いた目で見ている。うん、こーゆー発言がモテない理由の一つなんだろうな。


 まあ、気持ちはわからんでもないけど。俺が今日から通うことになる研究施設は美女が多いからね。


 男は何故か違うけど女の場合、実力者は美女だ。


 しかーーし美女が実力者とは限らないけどね。


 とある研究によるとこれは魔力が影響しているらしい。良質で多くの魔力を持つ女は美形になる傾向があるそうだ。


 つまり世界最高峰の学生が集まる研究室施設は当然のことながら美形が多くいる筈なのである!



「おい~大祐聞いてるか。」


「聞いてる聞いてる。けどそう思うなら西川も訓練して実力をつければいいじゃんか。松田は寺島とデートしない日は俺たちと一緒に訓練してるぞ。」


「ボクチンだってなぁ、ちゃんとしてるんだぜ。けどなぁ、結果がでないんだよ。」


「そりゃあ、時間をかければいいってもんでもないしな。ちゃんと効果的なことをやらないと。」



 俺が言うと「だけどだけど~」と駄々をこねる西川君。いつものこと何でみんなそれほど大きな反応はしない。



「西川は確か幹矢木先輩のチームに入ってるんだっけ?」と寺島が尋ねると、その隣に座る松田が「そうだよ。」と答える。


 京子が「あの先輩のとこはあまり良くないの?評判はいいと思うんだけど。」と俺に聞いてきた。皆もウンウン頷いている。


 俺が答える前に睦美が答える。



「先生方の間でも評判は悪くないですし、幹矢木君は優秀な学生ですよ。」


「うん。基本的には問題ないんだけどな。ただ西川の言うように貴族の美女たちに会いたいならダメだ。アットホームな感じだけど悪く言えば、なあなあだから。基礎を固めるにはいいけど上位を目指すには良くない。」


「いや、それを言ったら東心峰では大祐のところ以外はすべてダメじゃないか?」


「ちっちっち、甘いな虎川原君。よく言われることだけど良い監督=良い選手ではないからな。下級の師匠の元でもレベル4の中級くらいなら目指せるぞ。それに知識や魔法技術だけならBMではなく普通のメイジに教わってもいいしな。」



 ちょっとおさらいするとだ。

 魔法使いにはただのメイジとBM(バトルメイジ)がいて、レベルで表現されるのは戦闘を行うBMだけだ。これはもともとダンジョン探索の際の目安などからレベル分けされたことによるのだが。


 戦闘を行わないメイジ(研究者や魔法技術者)の中には、BMの中級や上級相当の知識や技術を持つものが結構いる。


 我が東心峰の教師の中にも上級はいないが中級相当のメイジはそこそこいる。睦美も中級相当だ。


 学生ではレベル4くらいの知識、技術の人が数人いる。京子はメイジだがBMで言うならレベル3くらいだな。


 ちなみに当然のことながら中級相当のメイジだからと言って戦闘で強いとは限らないからな。戦闘ではまた別の技術が必要になるしな。


 サッカーやバスケットなどスポーツでもそうだけど頭で動きを理解していても、実際にそのプレイができるかは別問題だ。



「話変わるけど、今日から大祐は訓練に参加しないのか?」



 俺がおさらいしていると松田が話しかけてきた。



「まだ、何とも言えないな。とりあえず今後どうなるかは行ってみないと分からない。」


「そうか。ま、俺はしばらく風太たちに鍛えてもらう予定だし良いか。」


「え?佐々門君たちは一緒に行かないんですか?」



 びっくりしたように睦美が言ってきた。京子の方は特に気にせず弁当をちょこっとずつ食べてる。昨日、京子には説明したけど睦美に言ってなかったか。



「うん。あいつらは来年度の大会で好成績を収めてから来るって。今回はあくまで俺のついでで入れる扱いになるからね。」


「そうなんですか。……うん、自分で頑張ろうとするのは立派な考えだと思います。」



 感心したように囁く睦美。


 まあ、実際のところAとDは最近ようやく仲直りした女たちと一緒にいたいってのが大きいんだろうけど。


 あいつらは俺の試合前に撮られた写真がもとでホモ疑惑が流れてね……折角仲良くなった女の子たちとお別れしそうになったりと、かなりゴタゴタしていたからね。


 なんとか誤解を解いたばかりの現在はそっちを優先したいんだろう。研究室へ行けば会えなくなる可能性もあるわけだし。


 俺の魔王化の研究にこき使おうかとも思っていたけど、ぶっちゃけ俺一人でやった方が早い気がしたから、あいつらの自由を許可してやったんだ。





 そんな感じの話をしつつ昼休みは過ごした。


 午後もいつも通りに授業を終えて、いよいよ放課後。



「行ってくるよ京子!」



 言いながら京子を抱きしめる。あ、睦美は職員会議とかで今はいない。



「向こうでも元気でね。落ち着いたら手紙を送って。わたしも書くから!」


「ああ、必ず。」



 お互いの顔を至近距離から見つめ合い話す。



「僕はすぐにでもビッグになって君を迎えにくる。それまで待っててくれ。」


「うん。わたし待ってる。いつまでもあなたが迎えに来てくれるのを待っているね。」


「京子…」


「ダイ…」


「いや、リーダー。そんな小芝居は良いからさっさと行った方が良いんじゃないか?約束の時間まであと10分くらいだぞ。」



 空気の読めないXことエロ太。


 他の人たちも大勢いる中、教室の後ろで上京する男を演じてた俺に無粋な声をかけてきやがった。横では松田と寺島もエロ太の意見に賛同しているようだがそんなのはどうでも良い。


 生意気な部下に注意をしようとしたときに虎川原が芝居に入り込んできた。



「大祐、後のことは俺たちに全部任せてくれ。お前は心置きなく研究に専念してくれていい。」


「虎川原………ありがとう。」



 京子から身体を離し虎川原と固く握手をする。


 すると西川も良い顔で手を出してきたからそっちとも握手をした。



「こいつの言うとおりだ。三坂さんは俺たちで面倒を見るからなんの、グェッ!」



 案の定、下心丸出しの西川の腹に軽く一撃を叩き込んで黙らせる。



「まあ、冗談は置いといてそろそろ行くな。時間もヤバいし。今日は何時までかかるかわからんから実家で寝ることにする。」


「うん。わかった。」



 ここんところは毎日京子と睦美の家に交互に泊まっているからな。一応伝えておいた。


 西川が「痛いんですけど…腹も心も……」と言っているのは聞こえなかったことにした。



「エロ太、お前たちのとこにもいくかわからんから、そっちの訓練が終わったらメールだけしてくれ。俺を待つことはしなくていい。」


「了解。」


「あと、松田の訓練は任せるがビシバシ鍛えてやってくれ。」


「了解。」


「少しは加減してくれよ。俺は強くはなりたいけど上位を目指してるわけではなく優香を守れるくらいになれればそれで……」


「もう!いきなり何言ってるの!?恥ずかしいでしょ!わたしは笹川たちと違うんだから!」


「寺島さん。それってもしかして、わたしも変な奴扱いされている?」


「いや、そういうことじゃ……」



 京子が寺島に絡むという珍しい状況をもう少し見てたい気もするけど時間切れだ。



「じゃあ、京子行ってくる。」



 声をかけると寺島への絡みをやめこっちに向き直る京子。


 そのまま一言、


「行ってらっしゃい!」



 それだけ聞いた俺はあらかじめ下見をしておいた『始原の塔・中層居住区』より少し上の階にある広大な研究施設の入口へと転移した。








「うわ!」



 到着してすぐ目の前にはサーマレイスがいた。



「人の顔を見て『うわ!』はひどくないですか?」



 ちょっと傷つきました~という感じのサーマレイスが言う。


 失礼だったのは確かだから大人しく謝罪して、目的の部屋まで案内してもらうことになった。


 



 世界最高峰の学生魔法使いたちが集まる研究施設。


 これが始原の塔にあるというのは以前にも言ったことだ。


 『開拓者直轄全国学生研究室』という長ったらしい名前だが基本的には学生の塔の研究室と言えばここを指すことになる。




 塔の下層には超強大な空洞みたいのがあってそこには街が存在する。


 その街には人口の空があり、太陽があり、雲がある。夏は暑く、冬には雪が降るというように完全に魔法で天候がコントロールされている場所である。


 かつて初代皇帝たちが火星に来たとき、まだ外部のテラフォーミングが完全にはすんでおらず強力な結果を張れる人以外は塔の外に出られなかった時代は、この下層都市に人が住んでいたのである。

 テラフォーミングが済むと魔法使い以外の人も外に出られるようになり、塔の外へと町は広がっていった。

 


 つまり塔の各階層の面積は半端なく広いというわけだ!なんせ都市が丸々入るくらいだからな。


 これから所属する施設はその広い塔の2階層分を占めている。このなかにはいろいろな専門施設が存在する。

 火の魔法、水の魔法など自然系魔法の基礎研究室だったり、応用の研究室だったり、それからマジックアイテムを創るとこだったり。当然自然系以外の魔法を扱うところもある。魔法ではなく魔法式そのものを研究するところもある。

 

 学生数は優に数千人を超え、それらを管理するために数百人単位のチームがある。そして全てのチームの代表が集まって会議を行い研究所全体が運営されているらしい。


 ちなみにチームは研究テーマで分かれてるわけではなくランダムらしい。まあ、普通は1人あたりの研究テーマは3~4はあるからな。それで分けることはできないだろうし。


 ただ1つだけ例外があり、この施設に所属する学生の中でも上位のやつが集められるチームがあるらしく俺はそこに配属される予定だ。


 なんでかっていうと詠唱型の魔法スキルだけはずば抜けているからな。その点を評価され、可能であれば他の人にも技術を伝えていただきたいです~とサーマレイスに言われた。





 さてさて話は戻るが、現在俺とサーマレイスは光る魔法陣の上に乗り、高速で移動している。

というのも施設は広すぎるから、デスクワーク派の人たちの移動のために開発された魔法だ。指定の場所に立つと魔法が起動し、半透明の床っぽい魔法陣が宙に浮きあがる。それに乗ることで塔内を移動するというわけだ。


 これは制御室の方で管理されているから人にぶつかるということもなく安心だ。


 


 サーマレイスの話を聞きながら10分ほど経つとようやく目的の場所に到達した。


 いや、ホント道のりが長い…



「本当は転移魔方陣もあるのですがあなたは正式な登録をこれから行うのでまだ使えません。それに魔法陣は一般メイジが多くいるところに設置されていますのでBMが多いわたしたちのクラスからは結局時間がかかることになります。」



 ようやく到着した部屋の入り口を見つめている俺に説明してくれるサーマレイス。



「上位のBMなら自分で移動した方が早いですからね。あなたの場合は自力での転移がありますから以後はそれを利用するべきかと思います。」


「うん。そうさせてもらう。」



 入り口から10分とか長すぎだからね。



「他にもいろいろな設備などがありますがそれは改めて説明を受けると思うので今はしませんでした。時間的にもちょうどいいですし、どうぞ中へお入りください。」



 促された俺は自動ドアを通り室内へと入って行った。






 施設内の説明はまた今度します。通路の描写とか書こうかと思ったのですがしっかり書こうとすると2話分くらいになるかなと思ったんで……小出しにして書いてくつもりです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ