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24話 久々のダンジョン(レベル10『不死鳥祭殿』)へ

 準々決勝が終わり家に帰宅した。


 今日は睦美ちゃんや京子に断ってから久しぶりに自宅へ帰ってきた。


 準決勝は明後日。


 今日の試合を見る限り、正面からぶつかれば俺でもサーマレイスには勝てないと分かってしまった。


 技術とかの前に基本的な身体能力で差があり過ぎる。エンチャントをして何とかやりあえるっていうレベルだ。


 何か作戦を立てねばならなかった。


 だから実家に帰り一人で考え込むことにしたのだ。性欲は性魔法で抑え込んでるから問題ないしな。


 家族は気をつかってくれて静かにしてくれている。


 あ、サーマレイスは今までの試合で魔法を使っていないが、俺のときは使うと考えられる。


 あの女は圧倒的に勝利すると言っていた。そしてオールレンジで魔法を使う俺には今までのように媒介抜きでイケるとは思わないはずだ。


 それがわからないような馬鹿な奴じゃない。


 必ず武器を持ったうえで戦いに来て、俺をボコボコにするだろう。








 今大会に出場した目的は今の実力を知ること。


 真っ向勝負では貴族には敵わないことはわかった。ならば搦め手でやって勝てるかどうか検討しようと思う。




 しかしどうしよっかな~?


 公式魔法、それも下級や中級ではどうにもならないだろう。どんな魔法を持ってるか詳細は知らないがあの感じからして通じないと思う。そしてそれらを数多く撃とうが複合魔法として使おうが結果は変わらない。


 勝つかどうか別にしてまともに戦うならオリジナル魔法でいくか、最大限の強化をしたうえで風雷のエンチャントをして攻めるしかないな。エンチャント抜きで接近戦なんてやったら武器を合わせることさえないできないだろうし。


 ……何をするにしても魔力量の少なさが問題だな。性魔法をフルパワーで使うなら魔力の問題も何とでもなるけどあれは使いたくない。性魔法に頼ると根本的な成長を望めないし。


 何かいい方法がないだろうか?


 そんな感じでこの日は考えまくった結果、1つの作戦を思いついた!













 翌日。



 俺が考えた作戦に必要な魔法式は上級のものだ。


 つまり今はまだ持っていない。


 これからダンジョンに潜って式をとって解析して稼働させるとなると時間的に泣きそうになるが不可能ではない。


 朝飯を食って戦闘服に着替え、ダンジョンに潜る最低限のものを持ちすぐに首都に向かう。


 目的のものは木星のダンジョン、レベル10の『不死鳥祭殿』にあるが、そこに行くための星間転移を行う設備は首都の転送施設の本店だけだ。

 

 ちなみに自力での転移はできない。一度も木星に行ったことがないからだ。



 



 転送屋についたけどかなり混んでるな。


 人が多すぎて嫌になりそう。


 しかし幸いなことに木星行きの場所はすいている。まあ、基本的にダンジョン関係の物しかないからねあの星は。


 そんなことを思いながら係員に話かける。



「すいませ~ん。木星行きたいんですけど。」



 俺に気付いた受付が対応してくれたがこの人も俺の顔を見て、あっ!?というような顔をした。


 今日というより最近、外を歩くとこういう反応される。


 有名人は困りますなぁ~と少し調子にノリながら受付をした。


 地球行きと違い木星は開拓者の所有物なのでパスポートはいらない。すぐに手続きは終わり魔法陣へと移動。


 ピカっと光ればここは既に木星だ。



「お疲れ様でーす。具合の方はどうですか?」といつもの挨拶。


「大丈夫です。」



 そう答えすぐに移動した。


 



 外に出ると青空が見える。周りにはビルや研究施設が立ち並んでいて火星と大して変わらない。


 これはかつての皇帝が作った『生命の種子』が星の核へと入り込み環境を人が済めるように強引に変えているからだ。


 とはいっても人がいられるのは木星全体のほんのわずかだけなんだが…


 


 おっと、そんな説明はどうでも良い。今日は時間がないんだった!


 余計なことは一切せずダンジョンへと向かわねば!そう思い直し、端末に表示されたマップを見ながらダンジョンへと向かった。








 不死鳥祭殿は20年ほど前に作られたダンジョンだ。


 大量の魔法式をごちゃまぜにし適当に変異させてダンジョン内にばらまく。


 すると一部の魔法式が自然環境中の魔力を吸収しモンスターが生まれることがある。このモンスターを倒すことで魔法式を回収できるわけだが、このダンジョンに眠る最深部の魔法式は不死鳥・フェニックスの形をとるらしい。


 だからこそ、このダンジョンは不死鳥祭殿という名前なのだ。


 が、今回俺が求めるのはフェニックスの魔法式ではない。いやフェニックスを手に入れられればありがたいが、やつがいるとされてるのは最深部の地下237階だ。


 時間がない状況でそれは無理だ。


 てなわけで俺の狙いは30階層ごとに出るように調整された『不死鳥の巫女』というレベル9相当のモンスターから得られる魔法式で、今日はこれを手に入れたら帰るつもりだ。


 ちなみにこの巫女は深い階層であればあるほど強くなり質の良い魔法式となるらしい。


 しかし俺が必要なのは30階層のものでも十分だ。この階層の巫女は炎属性だけだしそんなに手こずらないだろう。



 ダンジョンの入り口に到着した俺は入り口近くにある固定端末で探索の受付をする。身分証明を通信で送り、料金を払うと入り口が開いた。覗いた感じこのダンジョンは赤く光る構造のようだ。



 

 すぐには入らず端末で他の利用者の有無を調べたところまだ誰もいないし、予約も入っていないようだった。まあ、上級者はほとんどが新規のダンジョンに行っているからな。最近は誰も来てないらしい。


 続いて探索用ポーチにある薬の確認をする。俺の魔力量なら飲めば全回復する回復薬は5つほどある。傷薬は簡易なものが3つほど。



 うん。今日は一人だし時間も限られている。出し惜しみはしないで行こう!



 そう決めると身体能力強化と雷エンチャントを付与して、一気に内部へ突入した!


 






 バチバチバチッ!と音を立てながら、ものすごいスピードでダンジョン内を駆け抜けていく俺。通った場所の床は若干焦げている。


 途中で、炎の狼、フワフワ浮かぶ目玉のモンスター、足が蜘蛛で上半身が馬のモンスター、3メートルほどの泥でできたゴーレム、上位っぽいゴブリン、鎧をまとった人の身体に猫頭のモンスターなど多数の敵がいたがやつらが反応する前に駆け抜けていく。


 今日はあいつらは標的ではないし、俺のロングソードは魔法式の整理をしたとはいえ標的以外の魔法式は入らないので倒しても意味が無い。


 道の途中で罠があるも、発動する前に駆け抜ける俺様!一人のときじゃないとこんな荒業はできないな。Aは遠距離タイプだから身体能力は高くないし。


 


 そうして下へ降りる道を探しどんどん潜っていく。


 わずか5分で30階層、不死鳥の巫女が出る広間の前についた。





 ここに来るまでと今から飲む分を合わせて2本の魔力回復薬を消費した。


 帰りは探索終了手続きがあるから転移でダンジョン入り口まで戻るので1本は残しておかなければいけない。戦闘で使えるのは2本だな!



「すーーーーーーー。ふぅーーーーーーー。」と大きく深呼吸する。



 呼吸を整え覚悟を決める。


 ドアを開け広間に入った。





 内部はただの広間だ。


 天井も壁も床も赤く発光する材質でできていて、縦横の長さが30メートルくらい、高さは10メートルほどだ。床は完全に水平となっており障害物は何もない。


 ただ中央に全長4メートルほどのモンスターがいるだけだ。






『不死鳥の巫女』

 レベル9相当のモンスター。このダンジョンの中ボス的な奴で、見た目は全身炎の人魚に天使っぽい羽が生えて飛んでいるような奴だ。手には巨大な炎のハルバードを持っている。今は目を閉じているが顔は人間でいうところの美人になるんだろうな。長いウェーブの髪も炎でできていて触ると危険だろう。

 

 一種の芸術のような見た目だが、発せられる気配は中級モンスターの比じゃない。



 


 俺が動くより先に巫女は目を開けて告げる。



「汝、聖域を犯すものよ。命が惜しくば即刻たち去るが良い。」



 忠告を無視して剣を構える俺を見て巫女も臨戦態勢となる。



「愚かものが!死をもって贖え!」



 言葉と同時に口から強烈なブレスを吐き出す!


 が、エンチャント強化をしている俺には当たらない。


 こいつは炎でできているので物理攻撃は効かないがロングソードにも雷を付与させているので問題なく攻撃が通るはず!


 瞬時に近づき巫女の横から思いっきり剣を振り下ろす。さすがに高位モンスターだけあり俺の攻撃に反応しハルバードを動かすが、遅い!


 縦に思いっきり引き裂いた!



「ギィヤアアアア~!!!」



 巫女は叫び声とともに体全体から炎をまき散らす。



「ちっ!」



 回避のために一旦距離を置く。そしてすぐに巫女に視線を戻すとたった今切り裂いたばかりの身体がすでに再生していた。


 これがこいつの特徴である。


 フェニックスほどではないが、それでも凄まじいレベルの再生能力をもつ。再生は魔力がある限り続く。また魔力は自然の中、正確にはこの部屋の中に満ちる魔力を吸収している。しばらく誰も来てないから魔力は十分に満ちている。


 つまりこいつを殺すには魔力がなくなるまで殺すか、魔力の吸収量より体の再生の方が魔力を使うことを利用し瞬時に何十回か殺すしかない。


 おまけに今ので俺の実力を再認識したのか明らかにさっきよりも警戒している。


 めんどくさい。


 思いながらも魔法式から『耐火障壁』を展開、もう一度接近するためのタイミングを計る。



 

 バチッ!バチバチバチバチバチッ!


 雷の音だけが響いている。






……………動かない。


 どうやら巫女はこちらの動きを見ているらしい。


 俺のエンチャントは詠唱によるものだから常に魔力を消費し続けている。


 仕方ない。俺から動くか!


 決めると同時に巫女の後ろに魔法陣を出現させる。


 詠唱破棄で『重力玉』をはなった!

 

 魔法陣から飛び出したスイカほどの大きさの黒い球が巫女を貫く。


 あれは重力を凝集させた玉で、弱めの威力だが防御無視の物理ダメージを与えるものだ。結界だろうが鎧だろうがその上からダメージを与える魔法だ。



「ッ!!」



 言葉にならないうめきを漏らし巫女は体勢を崩す。


 隙を逃さず接近!


 即座に4分割するとまたも炎を飛ばしてくるが障壁が防いでくれる。


 再生。


 斬撃。


 再生。


 斬撃。


 再生。 


 斬撃。



 繰り返すと今までとは違う気配がする。


 炎が凝集している?………マズイ!


 即座に離れる!


 と、同時に巫女は全身から炎のレーザーを一斉に放射する!


 



 ぎりぎりセーフ。


 あれは貫通性を持たせた攻撃だ。逃げなきゃ死んでたな。


 そんなことを考えていると



「おのれ!おのれ!もはや許さぬぞ!」と、再生を終え憤怒の形相をした巫女が形を変えていく。


 身体から吹き晴れる炎を強くなり、腕が6本へと増えた。そして腹と背中からは10数本の触手が出てきている。

 

 俺との近接戦闘に対応したつもりだろうが、スピードは圧倒的に俺の方が早いからな。意味ないと思う。それよりも全方位レーザーの方がヤバイな。上級の出力だけあって俺の結界では防げない。正確に言うと防げるレベルの魔法を使うと魔力を大量に使ってしまう。


 かといって遠距離からチマチマと魔法で戦ってても同じで、あいつを殺しきるために放つ魔法の数を考えると結局魔力消費が多すぎてガス欠になっちまう。下級魔法だとあのレーザーでかき消されるだろうしな。中級以上じゃないとダメだろうし…………






 仕方ない、部屋の魔力が尽きるまでヒットアンドアウェイで行くしかないか。


 戦法を決めた俺は改めて巫女に襲い掛かった。














 十数分後


 

「ちっくしょう。これで帰還用の回復薬しかなくなっちまった!」



 思わず声に出してしまった。もうめんどくさい。


 ひたすらにヒットアンドアウェイを繰り返していたが予測以上にしぶとい!


 攻撃は一度も食らっていないのだがいつまで経っても死ぬ気配がない。


 俺が攻撃するたびにレーザーだったり、爆発であったり、切り裂く火の粉をまき散らしたりしてきたが、すべて回避または魔法で受け流すことができた。


 何度か広間全体を攻撃対象とする技を使ってきたがその時はエンチャントを解き全力で防御することで乗り切った。




 そうして圧倒的なスピードを持って30回以上殺したはずだが、まだ再生する。


 ついに自由に使える最後の魔法薬を飲んでしまったから次に魔力が切れたら撤退するしかなくなる。


 何かいい手はないもの――――――うぉーーーい!


 レーザーを慌てて回避する。


 危ない、集中が乱れてきた!意識を切り替え回避に集中。


 同時に魔法の検索。


 接近戦ではこっちの方が持久力で負ける。


 何か使える魔法はないか!


 一発当たって消滅する魔法ではだめだ。長く効果が持続するもので、できれば魔力を奪うようなもの!






 そんな都合のいいものは―――――――――――――――――― あった!






 忘れてた………最近ほぼ自然系の魔法しか使ってなかったからな。例外はロンギヌスと重力玉くらいだし。






 巫女の攻撃を回避するために動き回りながらも思いついた魔法の詠唱を開始する。


 逃げるだけの俺を見て好機だと考えたのか、巫女の攻撃頻度や激しさが増す。


 しかしそのおかげで大ぶりの攻撃も増えて回避がしやすい。


 これならイケる!



「―――――――我が魔力を苗床に冥府の淵より這い出でよ。血涙の灯、三途の呻き、死者の腕。汝、恨み狂いし黄泉咲く花よ。死への道連れ生者を呪え!」



 巫女の足元に半径5メートルほどの黒紫の魔法陣が浮かぶ。



「くらえ!呪怨大樹!」



 魔法陣から突如、白く太い樹が生えてきた。


 それはそのまま巫女に巻き付こうとするが回避される。


 しかし幹から枝が分離し“腕で”巫女を掴む!




 そう、この樹は無数の骨が寄り集まってできている。枝に見えるものは人の腕の白骨だ。


 逃れるためにレーザーで枝を破壊するもそのころには別の5つの腕が巫女をとらえていた。


 そして新たに魔法陣から湧き出した大樹が巫女に巻き付き、その枝や新たに湧き出た大樹が次々と巻き付いていく!






 この樹はただ摑まえるだけではなく魔力を吸収する効果もある。性魔法と違って俺が自分のものにすることはできないんだがな。


 吸った魔力を養分にして種を生成、種を俺の近くに飛ばして呪いの花を咲かせる。そしてその花の実を――――ってそれは良いか。



 今回はそこまで使う気はなく魔力を吸い取ってくれれば良いし。



 


 突如、閃光が視界を染め轟音が聞こえた。骨を壊そうと頑張ってるみたいだが次々と新しい樹が来るし壊れた骨は吸った魔力で再生するしで意味が無い。




 オリジナルの上級相当の魔法 『呪怨大樹』

 この魔法の発動は今の俺の魔力の6割ほどでよく、あとは敵から吸収する。吸収した分だけ強力になる魔法で一見凄いと思われがちだが1つ致命的な弱点があるんだよな。


 まあ、骨だし、いかにも闇とか邪っぽい魔法だから弱点はわかりやすいと思うけど。




 


 しかし改めてこの魔法の存在を忘れてた。試合で使うのは自然系魔法ばかりだったから。


 でも逆に考えれば相手に知られていないからな。


 そこはメリットでもある。


 サーマレイス戦では霊系、闇系、重力系を使うことも考慮しよう。











 3分ほどして魔力を全て吸われた巫女は消滅し、魔法式が出てきた。


 こんなにあっさりとケリがつくなら最初に使えば良かったな……時間も節約できただろうし。


 そんなことを思いながら俺は大樹を消して式を回収する。


 ひとまず目標達成!



 よし!時間的にも何とかなりそうだな!


 ほんと休む間もないがさっさと帰ろう。








 魔法薬を飲み魔力を回復させた後は転移で離脱。


 受付で探索終了の処理をしてすぐに転移施設へと向かう。


 家に帰れば回復薬があるはずだから、規制ギリギリのスピードで駆け抜けていくと学生っぽい集団がちらほら見える。


 この星にいるってことは上級か将来性のあると判断されたやつなんだろうなーと思い、通り過ぎていく。




「ダッシュ、ダッシュ、ダッーーーーシュ!」



 周囲に誰もいなくなったのをいいことに叫びながら走っている。知らない人が見たらキモイ奴にしか見えないだろうな……








 こんな感じで昼過ぎには帰宅することに成功した!


 あとはこの魔法式を解析し使うだけ!


 何とか間に合いそうだ!


 そう考えた俺は休むこともせず早速、魔法式を取り出し作業に取り掛かった。


 明日の試合はこの作業にかかっているぞ!


 今回のダンジョンはレベル10なのにあっさり目標達成できたのは浅い層だからです。雑魚モンスターも浅い層の方が深いとこに比べて弱いです。そして今の主人公では最深部の不死鳥そのものには勝てません。

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