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20話 歴史のお勉強と西川の戦い



 今日は平日。


 バトルロイヤルが終了してトーナメントの組み合わせが決まり、今日からその1回戦が始まっている。


 全校応援は俺、松田、エロ太の試合があるときだけだが今日はない。


 3人とも試合は明日だ。


 なので普通に授業があるが俺たち3人は大会に行って試合を見るのなら学校を休んでもいいとなっている。


 俺は敵の情報収集はエロ太にまかせて学校に来た。


 松田は寺島といたいから学校に来ている。


 そんなわけで普通に授業を受けているのだ。




 今の時間は歴史。


 この火星に人が生きるようになった歴史を中年のおっさん教師が話しているのだが、初等部から中等部、高等部と何回も学んだことなので飽きている。


 周りを見ればかなりの数の学生が寝ている。



「ふわ~ぁぅ。」



 思いっきりあくびをした。


 口元は手で隠してたがおっさんに見つかってしまった。



「なんだ笹川、眠そうだな。体調管理はしっかりしないといけないぞ。」


「他の試合の録画したのを見てたらなかなか寝れなくて。」



 堂々とウソをついた。


 

「そうか。熱心なのはいいけど無理はしないようにな。一つ上の池田が敗退したし残るのはお前らだけなんだからな。」



 この先生はうちの学校の学生が活躍するのを喜んでる人なんで俺に対して割と好意的だ。


 中には学生が活躍するのをよく思わないやつもいるから(睦美ちゃんのことも関係してると思われるけど)、この先生の対応はありがたい。


 素直に気を付けますというと、おっさんは授業に戻った。


 俺もちょっとだけ授業に集中することにした。













 それは人類がまだ地球にしかいなかった時代の話。


 世界大戦が終結して数十年後のある日、のちに魔法式と呼ばれるものが見つかった。


 これは今までの化学、物理法則とは大きく異なる現象を引き起こす未知の物であると発表される。


 当初はウソの類と思われ一部でしか研究が行われていなかった。


 しかし研究が進み、やがて人類が夢物語だと思っていた魔法のような現象が現実に存在する技術になったとき、世界中で競って研究されることとなる。生物の中に流れるエネルギー(魔力)もこの過程で見つかった。


 そんな時代、日本に一人の男が現れる。


 のちに初代皇帝と呼ばれるようになる男は魔法学における真の天才であった。


 魔法式を組み合わせ魔法陣を作る技術、魔法式をものに組み込み物質を強化するなどのエンチャントの技術、さらにはそこから魔法式を用いないで魔力のみで魔法陣を作り出す技術など今では当たり前のものだがその基礎を彼は作り出した。


 他にもさまざまなものを生み出したがその中の1つに魔法によって石油を産生するというものがあった。


 当時、付き合っていた女性の一人に財閥の御令嬢がいた。


 その女性の紹介で財閥トップの彼女の父親と会談。


 結果として財政、人材など大きなバックアップを得た彼は石油を人工的に産生する施設を開発。巨大な資金を手に入れた。


 余談ではあるがこの財閥御令嬢の子供はのちの十五貴族の一つとなる。そして日本の財閥は令嬢の弟が継ぐこととなる。





 話は戻ってその得た資金を元手に優秀な人材を集めさらなる研究を進める。このときのチーム名が『開拓者』だ。


 数年後、『開拓者』は火星への進出を表明した。


 彼が石油を開発したこと、また魔法式に関する基礎技術を確立させたことなどで世界的にその名声は広がっていたが今回の声明は多くのものが「失敗する」「焦り過ぎ」「調子に乗り過ぎ」このように受け止めた。


 大部分のものが失敗すると考え、止めることもしない中で彼らはあっさりと火星に到着。


 そして現在も火星の中心となっている首都の巨大な建造物


 『始原の塔』を設立する。


 この塔が持つ機能の一つである環境改変により人の住める環境へと変えられた。


 このときになって他国は大慌てになったが時すでに遅い。


 火星に行き来する技術は魔法を使用するものであり開拓者のみが持っている。ロケットを利用し火星まで行けなくもなかったが始原の塔より展開される結界が火星への侵入を阻むこととなる。



 あっという間に火星は開拓者のものとなり国がつくられはじめた。


 もちろんこれは開拓者だけではなく日本やその友好国、企業の援助の元ではあるが。



 当然納得しない大国の中には戦争を仕掛けてくるものもあった(この時矛先はまず日本である)。が、これらの国はすべて敗北することとなる。


 人類の戦争に用いられる武器が剣や槍、弓から銃へと変わりやがては戦車や戦闘機と移り変わったように、この時は初めて魔法が用いられた。


 開拓者の人間は宣戦布告をした国々と正面から戦わず、空間転移を用いて直接敵の主要機関の親玉を捕獲。そのまま自陣へ持ち帰り痛めつけた後にメディアの前に連行、敗北宣言をさせた。


 こうして戦争は軍人や自衛隊が戦うまでもなく終わったのである。

 

 これが1年戦争ならぬ『1日戦争』と呼ばれた戦争である。



 中にはリーダーが捕らわれたため副リーダーが後継者となり戦おうとした国もあったがこの場合、捕えた元リーダーは殺して次のリーダーを捕獲→敗北宣言。これを繰り返してるうちにあっさりと戦おうとする国はなくなった。


 この敗北は魔法技術の差だと気付いた国々は爆弾などの軍事兵器から魔法技術を用いた研究にシフトしたが地球にいる限り開拓者には追いつけるはずもなく意味のないものである。(このことについてはまた別の機会にでも触れるかな。覚えていたらだけど)



 時は流れ開拓者のリーダーは皇帝に即位し火星の単一国家が誕生したのである。




 と一般的には教えられている。


 しかし実際のところこれが真実なのかはわからない。何せ数百年前のことだ。


 戦争に勝ったのが開拓者である以上いくらでも情報操作はできただろうしな。


 話自体もどこか嘘くさい感じがするし。


 まあ、生まれた時からこの国にいる一般的な人間にとってそんな大昔のことはどうでもいいのかもしれない。 


 今では地球も認める火星の単一国家だから領土の問題とか起きることもないしな。 







「以上で今日の講義の内容は大体終わりだが質問ある人はいるか?」



 おっさんが聞くがほとんどが寝てるんで意味ないな。


 それにこの講義の内容は初等部から聞かされることだからわかってることだし。


 クラスの様子を見ても顔色一つ変えないおっさんはもうこの状態に慣れているんだろうな。


 特に注意もせず教室を出て行った。






 俺の方からいくつか補足をするとだ、始原の塔の機能である環境改変だとか惑星一つを丸ごと包む結界とかいくつかの機能は実際に存在するものだがいまだにどのように行われているかは不明だ。


 ただ環境改変の方は先代か先々代の皇帝が似たような機能を持つ『生命の種子』と呼ばれるものを開発したことで木星にも生身で人が入れるようになったってことはあるけど。


 しかし生命の種子も作成者の皇帝以外には今現在作れていないんだけどな。


 魔王として長い時を生きてる俺でさえ不明な技術。まさに天才と呼ばれる所以だ。


 当然、初代が生きていた時代の連中に太刀打ちできるはずもなかったわけだな。







 あ~ちなみに皇帝は世襲ではないぞ。詳しくは今度政治の話をするときにでも言うと思うが。


 先代がなくなってからもう50年ほど。それから現在まで皇帝不在で、総帥と呼ばれるものが政治を取り仕切っている。


 ま、この辺はまたの機会だな。










「ふぅ~疲れた」


「お前ずっと寝てただろ西川。」



 起きていきなり疲れたと言い出す男にツッコミを入れる。



「そんなことよりも次は選択授業だぞ。やだなー俺絶対に安田にいびられるし。」



 近くにいる松田が憂鬱そうな顔で言う。


 松田の選択授業は戦闘系である。


 講師の安田は歴史のおっさんと違って学生が勝ち残ってることにあまりいい顔しないみたいだ。


 俺の方が安田より強いから廊下で会っても俺に何か言うことはないけど松田は実際にはレベル2だからな。


「本選参加者がこんなこともできないのか。」とか嫌味ったらしいことを言うやつなんだ。



「まあ、そこは仕方ない、耐えるんだ松田!あとで寺島に癒やしてもらえ。」


「松田は寺島がいるから良いけどさ、俺はどうすればいいんだ?」



 机にへばりつきながら西川が言う。



「どうすればって?西川は本選関係ないじゃん。てかボクチンやめたのか。」


「ボクチンはやめだ。」



 言いながら体を起こす。



「そんなことよりだ。安田のやつ俺とか橋本とかロイワードとか地方大会で敗退した奴に対しては「こんなこともできないから地方大会どまりなんだな。よくこれで出場しようと考えたもんだ」とか言ってくんの!もうマジむかつくんだよ!」



 それは確かにムカつくかも。仕方ないから寺島に頼むか。



「寺島~」


「なに?」



 松田に話しかけるためこっちに来てたみたいだ。ちょうど良い。



「次の選択でこいつら安田に苛められるらしいから終わったら癒してあげて。あ、虎川原はどうする?」


「よろしくお願いします!」



 空気を読む虎川原。


 しかし寺島はこちらには全く反応せず松田の頭を撫でながら二人の世界に入り込んだ。



「クッソ―!松田だけ彼女がいてズルい!あいつは裏切り者だ。大祐、虎っち!俺たちも彼女作ろうぜ。」


「そうだな。俺もいい加減、桃(池田ファンとなった幼馴染)のやつよりいい女見つけて幸せになるべきだよな。」


「そ、そうか。頑張れ。」



 言えねぇ…京子との関係は言えねぇ………



「おいーーー!何その反応?おかしくない?悔しくないわけ松田だけ幸せで。」


「いや、俺は今は大会優先だから女とか言ってる場合じゃないし。」



 視線を感じるのでそっちを見ると、松田がニヤニヤしながら俺を見てた。


 てめ!余計なこと言うんじゃないぞ! 


 思いを込めた視線を魔力と共に松田へ叩き付けたら大人しくなった。



「松田がどうかしたのか?」


「何でもない。気にするな。」



 危ない、虎川原のやつ何気に鋭い。意識を逸らそう。


 俺はちょっと離れたところでイケメングループとイケてる女グループで集まっているマイクを呼びかけた。なんだ?と聞き返すマイクに対して率直に言った。



「西川と虎川原に女紹介してやってくんない?彼女欲しいんだって。」


「良いけどどんな女がいいんだ?」


「「カワイイ女!」」



 2人はためらうことなく即答する。



「それなら大祐に三坂さんを紹介してもらえ。」とマイクが言えば


「そうだけどそろそろ俺たちも現実を見てもう少しレベルを下げようと思ってさ。な、大祐、虎?三坂さんほどでなくても良い。」とかなり上から目線発言の西川。



 傍で聞いてた女たちは不快に感じたようでストレートに言ってきた。



「自分のレベル考えて言いなよ。鏡見ろっつーの。」



 当然、西川は反論し女子グループとバトルとなった。



「何の取り柄も無いくせに可愛い女と付き合いたいだとか身の程知らずでウザい。」


「誰もてめぇみたいなヤリマンは求めてねぇよ。」


「ハァ!?誰がヤリマンだ!」


「お前だお前!前の男と別れて1週間もしないうちに次の男と付き合ってんだろうが!このユルユル女が!」





 急速にヒートアップするバトルに俺やマイクはついていけてない。


 虎川原は最初は静観してたが、「笹川君は中級だから別として、あんたや虎川原みたいに顔も才能もない奴が可愛い女と付き合えるわけないじゃん!」の言葉を聞き戦場へと向かっていった。



「ごめんマイクとみんな。」



 イケメングループの男友達に謝罪する。女はみんな戦場だ。



「いや、大祐のせいじゃないよ。どうにもならんさ。」



 そして現在は松田や寺島も含めてみんなで観戦している。


 女たちの主張は、『可愛い彼女を作りたいなら顔か実力(勉強、運動何でもいいけど)がないとダメだ。今の状態で彼女が欲しいなら相手の顔とかに注文付けるな』というもので西川たちは『可愛い女と付き合いたいと思うのは普通なことで、今の俺たちが可愛い女じゃなきゃ付き合わないというのはおかしくない』というものだ。



 うん、状況にもよるけど早く彼女を作りたいというなら女の子の主張が正しいよね。



 しかし西川が「大祐、お前は俺たちの言い分がわかるよな!?」と聞いてくる。


 困った俺はマイクに話を振った。マイクも困ってたけどいつの間にかまた戦争に戻っていた。



「正直なところ女子の意見が正しいよね」と松田が言うとギャラリーはみな同意した。


「早く彼女が欲しいならね。いつまでも待ちますっていうなら別に可愛い子以外とは付き合いませんでも良いと思うけど。」と寺島も補足する。



 ていうかそろそろ授業の移動をしなきゃまずいんだけどどうしよう。



「お、なんか凄いことになってるね!?」


「京子か、どうした?」



 いつの間にかうちのクラスの仲に京子が入ってきてた。俺の質問に答える前に京子がマイクや松田たちに挨拶すると、松田が微妙に見惚れていた。


 それを寺島が後ろから殴っている。



「仲良いんですね。」



 笑いながら京子が言うと寺島は松田の腕を掴み照れながら言う。



「いや、そういうんじゃないんですよ。こいつバカだから。」


「松田は完全に尻に敷かれてるな~」「うんうん。」「仲よしカップルなんだね。羨ましい。」



 マイク、俺、京子のセリフだ。


 からかわれてさらに赤くなった寺島は松田を連れて教室を出て行った。


 それを微笑んで見送った後、いつの間にかバトルをやめて近くに来ていた西川たちに京子が挨拶し、そこで俺は改めて用件を聞いた。


 どうやら次の授業のお誘いに来たようだ。


 俺は戦闘系の選択授業を取ってないから次の時間は魔法式研究の方だ。


 戦闘系は1学年まとめて、研究系は研究内容によってもさらにいくつかに分かれるが俺は京子と同じく大部分の人がとる『物質へのエンチャント』と『マジックアイテムの作成』の授業を選んでる。


 もちろん必修の戦闘系や研究は別枠であるぞ。


 ちなみに選択授業では学年の男の7割は戦闘系をとり、女子は2割くらいが戦闘系だ。





 てなわけで同じ授業を受けるから一緒に座ろうということらしい(席は自由だ)


「なんで急に?」と問うと「大祐、今やってるところとかもう全部わかるでしょう?わからないところあったら教えてもらえるし。」


 成績優秀な京子に必要ないだろうと思ったら廊下に京子の友達もいた。


 あまり成績がよろしくない子たちもいる。



「わかった。」


「ありがと!」



 微笑みながら俺の腕に抱きつく京子。


 ヤバイ!みんなヤバいけど特に西川と虎川原がヤバイ!



「あの京子さん。」


「なに?」


「胸が当たってるんですけど。」


「大丈夫だよ。わたしは気にして無いから。それよりもそろそろ遅刻しそうだから早く行こう。」



 ずるずると引きずられる俺の後ろで女子たちが「ほら、顔はあんたたちと同じくらいでも実力があれば三坂さんとだって仲良くなれるけどあんたたちじゃ無理だよね。」という声と西川たちの悲しみの声が聞こえた。



 顔のことを言われた俺も少し悲しかった。

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