1話 悩んでるオレ
ここは火星、つまり地球のお隣さん。地球で魔法技術が見つかったのは結構昔で、後の火星にできる国、そこの初代皇帝となる日本人が、人類初めて火星に到着したのも昔のことだ。
んで初代皇帝が作ったその国、誰も呼ばない正式名称『新陽皇国』、通称『開拓者』で生まれた俺は十五貴族の家系でもなければ、どっかの裕福な企業のボンボンでもなく、ごく一般的な家庭に生まれた。
しかし普通な俺の周りには美形な幼馴染だったり美形な兄妹だったり普通じゃないやつらがいたがここでは関係ないから忘れよう。
…トラウマだったし…そんな感じでイケメンじゃない俺は中学では1番でも高校では中の下くらい、っていうレベルの学力で、魔法や探索、戦闘も普通なレベルだったから当然彼女はなし。
切ない人生を送っていた。
そんな日常の中でいろいろフニャフニャしてモゴモゴして引きこもってウラーっ!てやってたら、運命の日が来た!思えばあれが俺の運命を大きく変える最初の分岐点だったんだろう。そう、異世界への旅立ちである。
現在、魔法と科学が大きく進歩している開拓者では異世界の存在を確認している。
ただこれは本当に異次元にあるのか別の惑星へ物理的な距離をワープしてるのかはわかっていない。
………え~~~~わかりにくいか?んじゃ簡単に言うと宇宙船で時間さえあればたどり着けるのか、宇宙船では絶対にたどり着けないのか、どっちなのかはまだ不明ってことだ。
話は戻って俺とA,B,C,D,Xは異世界へと旅立った。
そしてそこで魔王とその眷属になった。半端なく強くなった俺たちは初めて手にしたその強大な力に溺れて、やりたい放題にやった!
具体的な話はここでは割愛しよう。いつか機会があれば語る日も来るだろう。
ただ俺たちは本能の赴くままに犯って、殺って、やりまくった!
そして1500年ほど過ごしたあと、開拓者へと帰還した、『力を持たない状態』で。
なぜか?それは異世界への旅立ちには2つのパターンがあることに起因する。
1つは『ゲートアウト』と呼ばれる魂のみが異世界に行くパターンである。
これは面白いことに肉体は開拓者に残っていて異世界では全く同じスペックの肉体が新たに用意されそこに魂が宿り異世界探索を行うことになる。
その後異世界で時間切れ、もしくは死亡すると魂が開拓者に戻ってきて元の肉体に入る。そしてこの場合は異世界で数年の時を過ごしたとしても開拓者では数時間しか時間がたっておらずまた普段の日常生活に戻るのである。
ちなみに異世界での膨大な経験や知識などで元の肉体に戻った時に性格が変わるだろう、精神が変質するだろうと初期のころは予測されていたが、実際は変化がほとんどない。
体験者曰く本とか動画、伝聞で経験したような感じ?だそうだ。俺たちも何となく違うがそんな感じだった。
もう1つのパターンは『ワールドアウト』、肉体ごと異世界に旅立つパターンだ。
この場合は異世界と開拓者でともに時間は流れ異世界で数年過ごして帰ってきたら開拓者も数年のときが過ぎているのである。おまけに異世界で死んだらそのまま死んでしまい開拓者には戻ってこない。
これらのことは起きる現象をわかっていても原因はさっぱりわからんらしい。俺自身はいくつかの仮説を立ててるけど証拠はない。ま、名前と現象だけわかってればいいだろう。
ゲートにしろワールドにしろいつ起きるかわからんしな。人生で複数回経験するやつもいれば人生で1度も起きないやつもいる。てか99.99999999%の人間は遭遇することはないしな。俺たちは遭遇したけど…
また話がそれたな。異世界で1000年以上過ごしてるのに学生な時点でわかるだろうが俺たちはゲートだった。つまり魂だけ。
その世界の神っぽいやつは魔王がなくならないように魔王を倒したものがその返り血を浴びることで新たな魔王になるという在り来たりなシステムをつくっていた。
魔王の力は肉体に力が宿るもので、だから当然元の体に戻った俺たちには魔王の力はない。
それでも俺やA,D,Xはその戦闘経験を、魔法知識その他もろもろを利用し訓練してゲートアウト前とは比べものにならない位強くなったが(それでも魔王や眷属だったころの足元にも及ばない)、BとCはいまだ過去の栄光が忘れられず訓練も馬鹿らしいと拒否している。
いっそ見捨てようと思うこともあるが1000年以上を共に過ごした仲間と思うとちょっと複雑である。
ただ俺も他のゲート経験者同様性格は異世界訪問前とそんなに変わってないので正直うざくなってるのは否定できん。
…あ?B,Cは性格変わってんじゃないかって?あいつらはもともと引きずるタイプの人間だよ。
…ホントこれからどうしよう。
自室のベッドで今日の放課後のことを思い返す。
「ほらいつまでも愚図ってないで訓練しに行くぞ。身体能力は昔よりがっくり下がってるけど戦闘経験はたっぷりあるんだし、ちゃんと修行すればそれなりに強くなれるって。」
「俺らに訓練なんて必要ないし!」
訓練を拒みまくるB君です。男には気が長くない俺はちょっとイラついてきた。
「んなこと言ってるといつまで経っても良い女をゲットできないぞ!切ないチェリーのままだぞ!」
「うっさい。俺は童貞じゃないし!」
マジ切れなB君です。
「この世界で、今の体は童貞だろ…」
今日初めてXが発言した。あいつはシモの話にだけ食いつくなぁ~。
おっと、BのやつはXに食って掛かってる。今のうちにCを誘ってみるか。
「おいC 「俺も訓練しない」…そうですか」
「ジョニーはなんでそんなに訓練したくないんだよ?強くなれば上の研究室に行けるし、そうしたら十五貴族の本家は無理でも分家の分家の分家の女くらいなら知り合えるかもしれないぞ。十五貴族の人間は分家だろうとみんな美形だし良いじゃんか。」
Dがメガネをクイッとしながらジョニー(通称ジョニー、本名 本庄 瞬 俺だけはCって呼んでる)に話しかける。
俺も全く同意見だな。強い=強力な魔法が使える=頭がいい はほぼ必ず成り立つからな。一部では知識とかすっ飛ばして感覚で魔法を使える奴もいるけどそんなのは超レアキャラだ。
強い力を持つ十五貴族の人間とは上位に上がれば必然的に知り合えることになる。貴族の人間は美形ばかりだからな。特に御剣、華月、七浄の次期当主の女はスタイルも良いし俺の好みのストライクだ。
「この身体じゃ努力したって十五貴族に敵うはずない!仮に行けたとしても俺たちの顔じゃ相手にされるはずねえし!」
瞬間シーンとなる部屋。自分たちの外見について触れるなんて!やろうはとんでもない地雷を踏みやがった!
あとはもういつも通りだった。俺とA,D,Xは訓練に、BとCは2人でどっかへ行った。最近はこんな感じで2つのグループになりつつあるなぁ…どうしよう。一応俺がリーダーだし何とかしなきゃなぁとは思うんだけどね。やる気がね…
最後の方に言ってた Cの言葉を思い出す。
「今俺たちがやんなきゃいけないのは訓練じゃなく元の力を取り戻す方法を考えることだろ!?それなら俺だって喜んでやるよ!」
このセリフに対してDは無理だとか、過去のことはどうだとか言い返していた。そしてそのまま喧嘩別れみたい感じになって訓練して家に帰宅というわけだ。
「ハァー…」
溜め息ばっかりついてる俺。なんでこんなに悩んでいるのか?
実は魔王の力を取り戻す方法を『知っているから』だ。