18話 今大会のバトルロイヤル終了
「試合終了です。勝者は8人。三柳 竜也、東 山彦、佐々門 風太、笹川大祐、松田 騎士、――――――となります。」
試合終了のアナウンスと同時に歓声が響く。
松田は客席の寺島の方へ手を振っている。他の連中も似たようなものだ。
『いやーいきなりすごい試合でしたね。吉宗さん。まさか上級のBMがここで敗退するなど。それにあの学ランの笹川選手が使った魔法、あれはいったいなんだったのでしょうか?』
『あれは自力型の魔法ですね。笹川選手はどうやら魔法式を利用して無いようでした。詠唱による魔法を使いこなし、さらに下位のものだと詠唱破棄までしてましたからね。彼は間違いなくこの大会の台風の目となるでしょう。』
『なるほど。次以降の試合が楽しみですね。………………しかし彼は途中で女の選手にキスをしてましたがあれはいったいどういうことでしょう?』
実況の久留間のやつが余計な話題を出してきやがった。
「大祐、あれ完全にお前のこと言ってない?」
さっきまでみんな観客席に手を振ってたくせにこっちを見てニヤニヤし始めた。いつもどおり無視しよう。
黙る俺に松田が近づいてきて肩をたたく。
「約束通り、三坂さんとのことは西川たちに黙っておくけどさ。キスしたことで三坂さんとけんかするなよ?結局西川たちにばれることになるぞ?ちゃんと弁解しとけよ。」
どや顔がうざかったから顔に1発入れといた。
このあとは前回と同じくわーきゃワーキャーだったから詳細は飛ばすとしよう。
ざっくりとだけ言うと
うっさい校長たちの話を軽やかに流して、試合についてのことは適当に話しておいた。
遅刻については友達の家で寝坊ということにしておいた。
制服なのは昨日学校帰りにまっすぐ行ったため、武器もそこに忘れたと。
俺が学校外にも親しい友達がいるということはAやDを見て理解したらしく、今後気をつけるようにと言われただけだった。
ちなみにこのとき西川たちも近くにいて説明を聞いてたからこの後で特に突っ込まれることはなかった(松田は懲りずにニヤついてたけど)。
「三坂さんも遅刻しそうだったんだぜ。」と西川に言われたときはちょっとドキッとしたが問題なく話は終わった。
個人的には他の選手にキスしたことも突っ込まれるかと思ったけどそこは何も言われなかった。
昼の時間となりご飯を食べに移動した。
全校応援の学生たちは制服だから俺は観客の中では目立っていない。
あくまで試合に学ランだったから目立っただけだ。
俺と松田がいきなり試合だったためなんか終わった感があるんだけどまだ、イケメンの試合が残っている。イケメンは3試合目で午後の2時過ぎ開始の予定だからまだ2時間以上の時間がある。
「もうぶっちゃけ帰りたくない?松田と大祐の試合終わったからもう良いじゃん。」
俺と、西川、虎川原の3人で飯を食ってると西川がいきなり言い出した。
「確かに~俺ももう帰りたい。池田なんてどうでも良いしさ。」と虎川原も同意する。
「虎川原は桃ちゃん(虎川原の元カノ兼幼馴染)のことがあるからな。」
「おい、それは言うなや!泣くぞ俺。」
「そうだぞ大祐。それは言っちゃいけないことだ。」
珍しく西川が虎川原の味方になった。いつもなら俺と一緒にからかうのに。
「虎川原の傷ついた心を癒やすためにも三坂さんを呼んで来い。」
「賛成。それ賛成。そしたら今の失礼な発言は許してやる。」
……………そういうことか。
今俺たちがいるのは会場施設にあるレストランの1つだ。
他の客もいっぱいいるから席はほとんどあいてない。
京子とは試合が終わった後に少し話したが周りの目もあるしそれほどゆっくりと話していない。
「京子を呼ぶのは無理だな。俺、あいつの端末の番号わからないし。」
エロいことやっといてなんだけど番号はまだ聞いてなかった。
「大丈夫。あそこにいる。」
ホラと西川が示す方向には席待ちの客の列だ。その中に京子が二人の友達といるのがわかる。
珍しいな、いつもはもっと大人数でいるのに。
「人数もちょうどいいしさっさと呼んで来い。」
俺たちの席は6人掛けだから確かに3つあいている。
ちなみに俺と西川が奥の席で虎川原が通路側だ。
「いや、無理。俺さっき生理始まったから動けない。おなか痛い。」
「なんでだよ。おかしいだろいろいろと。」
「実はさ、他の連中には黙ってたけどロンギヌス使うと生理になって妊娠するんだよね。」
「マジで!?じゃあ三坂さんに出産の手伝い頼んで来いよ!」
「ハァ…………三坂三坂ってねぇ。本気で口説く気あるんなら自分で行かないと。もう何回か会話してるんだからお前らが話しかけても別に大丈夫だろ?学校の廊下で会ったときとか挨拶してんじゃん。」
「いや、本気で口説く気はないんだよ。それは無理だろうから…でもせめて目の保養をしたいわけで。」
俺なんかじゃあ…と落ち込み始めた西川。虎川原が視線で非難してくる。
「そんなことないよ。頑張れよ!」とは言えない。昨日までは言えたけど京子とやっちゃった今はもう言えない。
ホントもう酒は飲まないぞ。
あるいはちゃんと魔法でコントロールしてから飲むとしよう!
「……わかったわかった。行けばいいんだろ。」
抵抗をあきらめて呼びに行く俺。
後ろで西川たちが「作戦成功」「ボクチンは演技派なのだ」とか言ってたけど聞かなかったことにした。
廊下で席が空くのを待ってる京子たちに声をかけると、3人とも喜んでついてきた。
他の待ってる客の目が痛かったけど気にしないようにしてました。
席に着いてから他の友達はどうしたの?と聞くとどうやら池田先輩のとこに行ってるらしい。
さっそく女たちが注文した後、西虎コンビは京子に話しかけまくっていた。
他の女の子はいつものことだろうし、彼氏がいるし、西虎はイケメンじゃないしということで別に気にしてないようだった。
けど何も話しかけないのもあれなんで俺が対応しておいた。
試合でド派手にやらかしたこともあって結構会話が弾む。
一方で京子はもうウンザリなんだろう。ほどほどに話を合わせながらもこっちの会話に入ろうとしたり周りから見えないように足で蹴ってきたりした。
段々と蹴りの威力が増してきたからみんなが飯を食い終わったところで席を他の人に譲るために店を出ることを提案。
女の子3人が承諾したので男2人もしぶしぶ承諾。会計に向かいました。
俺の分は勝利祝いということで男2人がおごってくれました!
京子の家にロングソードを置きっぱなしということもあり一回ゆっくり話さんといかんのだがどうしようか。
次の池田の試合まであと30分くらいだからどこかの店に入るのも微妙だし…とウジウジしてたら京子の方からストレートに「話あるからちょっと来て」と言われました。
直球だったんで西川たちも割って入ってくる様子もなく連れ去られる俺を見送ってくれました。
誰もいないところということであまり使われていない選手控室の方へ行き、その中の空き部屋に入り込んだ。
京子が先に部屋に入ったので俺に背を向けている状態であるが気にせず話しかけた。
「ちょうどよかった。ロングソードを京子の部屋に置きっぱなしだからさ。あとで取りに行きたいって連絡しようと思ってたんだけど端末の番号は知らないし、みんなの前で言うわけにもいかないしで困ってたんだ。」
俺が話しかけたことで振り返る京子。
その顔は明らかに怒ってます!という表情だった。
「そんなことよりさっきの試合のあれは何?」
「あれってどれ?」
「選手の女の子とキスしてたでしょう!?」
あ~そのことか。誰も聞いてこなかったから半分忘れてた。
「京子って一夫一妻主義?」と聞いてみた。
火星では婚姻関係に年齢制限はあるが人数の制限はない。本人たちの合意と子どもに対する責任、社会に対する責任を果たせれば特に問題ないとされる。
ただ子供やその他に悪影響があると判断された場合は厳しい罰則が与えられる。そのための各家庭へ介入する機関の権限は強い。
現実的には一夫一妻を好む人も少なくないため、貴族などの実力者の男性が多くの妻を持つ、あるいは女性が多くの夫を持つというパターンが多い。一般人の中にもハーレムを築いてるゲームの主人公みたいのもいることはいるけどね。
夫も複数、妻も複数というパターンも昔はあったがほぼ全てでトラブル発生となり公的機関の介入によって罰則が与えられるということが続いたらしく現在は表向きにそういう家庭はない。
また一夫一妻の国民も他の人がハーレムを築くこと自体に嫌悪感や忌避感はない。
例えば俺や西川のようなモテない男が妻を5人もつハーレム野郎を見た場合、「マジむかつくわ、あのハーレム野郎」と嫉妬はするけどもハーレムであること自体に嫌悪感はないのだ。
いろいろ言ったけど要約すると、法的にも国民の考え方的にも『責任取れる範囲なら結婚人数は自由だよ』ということだ。
まぁ、ごく一部では一夫一妻を義務にしろという集団(一夫一妻主義者)もいるんだけど我が国開拓者の場合、初代皇帝が15人も妻を持っていてその子供たちが現在の十五貴族となっているわけだからね。いろいろとね。
そんなわけで京子に質問してみたら、
「違うよ。けどちょっと前にわ、わ、わたしとあんなことしたあとなのに…さすがに腹が立つよ!」
「あんなことって?」
「………………」
「イタっ!?ちょっと痛いんですけど。」
無言で蹴られました。怒らせるのも怖いんで素直に説明することにした。
「あれは魔力の回復をしてたんだよ。」
「…………」
無言でジ~っと見てくる。
「俺が上級BMをぶちのめすのに使ったロンギヌスの魔法は魔力全部使うからね。そのための処置だよ。」
そう言って、何か言い返そうとする京子の手を握って説明を続ける。
「今、手から京子の魔力を吸ってるのわかる?」
手を振りほどこうとした京子が動きを止めしばし手の感覚に集中する。
「なんとなくわかる。」と答えてくれた。
「そう。京子から吸い取ってる魔力を2だとしたら俺が自分のものにできるのは0.4くらいなんだ。」
無言で話を聞く京子にキスをする。
「ちょっ!?んーーーー……何するン~~~~~。」
暴れる京子をさえつけて思いっきり舌を入れて京子の舌を絡めとる。
ピチャピチャ音を立てながら激しくキスをする。
これと同時に唾液を介して魔力を吸い上げている。
程なくして京子も自分の魔力がガンガン吸われてるのがわかったのだろう、大人しくなった。
せっかくの機会だから少し楽しもうと魔力の吸収をやめて普通にキスを楽しんだ。
5分くらいしてようやく口を離す。
文句を言われそうだったんで抱きしめてそのまま解説を続けた。
「今のは、はっきりわかったと思うけど、手を握った時より魔力がたくさん吸収されたでしょう?手で吸収するときが2だとしたらキスだと200の魔力を京子から吸い上げることができて130を俺の魔力に出来るんだ。手で奪うより断然効率がいいんだよね。」
しばらく抱きしめられたままで呼吸を整えていた京子は顔を上げて言う。
「それはわかった。けどそれならあの女の子たちじゃなくても良いでしょ?」
「やだ、男となんてキスしたくない。」
「……………」
「……………」
至近距離で静かににらみ合う俺たち。
「………理由はわかったよ。少し不満だけど納得はした。……………それでどこで覚えたのこんな魔法?大祐が自分で作ったの?」
「これはサキュバスとかの夢魔あるいは淫魔が使う技術の応用で、淫術、催淫魔法、吸精魔法とかいろんな呼び方があったけど俺は性魔法って呼んでる。ただ本来魔法と呼んでいいのか微妙なんだけどね。」
「どうして?」
「魔方陣を介して無いでしょ?自力型、魔法式型ともに普通の魔法は必ず空中なり対象になり武器の内部であったりと魔法陣が現れる。けど性魔法の場合は魔法陣を介さず発動するから魔法って呼んでいいのかわからないんだよな。」
「そうなんだ。どこでおぼ――――」
また思いっきりキスをする。
どこで覚えたと言おうとしたんだろうけど異世界へ行ったことを説明するのは長くなる。
もうそろそろ池田の試合が始まるし戻らなきゃいけないから強引に話を終わらせてしまおう。
しばらくしてキスした後に睨んでくる京子の手を取り部屋を出た。
「私の顔大丈夫?みんなに変に思われないかな。」
「あーん…別に普通にかわいいと思うぞ。お前元々そんな化粧してないし変になってるとかもないぞ。」
「そうじゃなくて顔色だってば。赤くなってない?」
「そっちか。ちょっと赤いけど大丈夫だろ。走ってきたことにすりゃいだろ。」
廊下の途中で手をほどき二人で観客席に向かう。
到着してからはそれぞれ自分の友達の元へ行った。
そしていよいよ池田君のバトルが始まった。
が、結果は予想通りというかなんというか………
さすがにこのレベルで勝ち抜くことはできずに試合序盤で敗退していました。
池田を直接ブッ飛ばした相手は中級です。魔法で吹っ飛ばされていました。
もうホントビックリするくらいあっさり負けたんで、観客席に戻ってきた本人も不完全燃焼ですって感じが丸出しだったけど負けは負けです。
おもしろいことに華柳と違ってまだ京子を諦め切れないらしく先生方と話したあとに話しかけていました。
俺は離れてたんで何を話したかはわからないけど。
まあ、この後剣を取りにあいつの家に行くんでその時にでも教えてくれるだろう。
こうして本日の日程はすべて終了し現地で解散となった。
東心峰で勝ち残ったのは3人。
俺、松田、エロ太だ。
明日はバトロイの後半戦があるがうちの学校からは誰も出ないのでここには来ない。
トーナメントの組み合わせは明日の試合が終わり次第、ネットに出るから家でわかるしな。
そんなわけで俺は西川たちと帰宅した。
明日からしばらく出かけるので執筆ができなくなります。
次の更新は来週の金曜日を予定しています。