17話 上級魔法は半端ねぇ
『さていよいよ今年の世界大会、第一試合が始まります。実況はわたくし久留間、解説は十五貴族が1つ『吉宗』の分家筋にあたります吉宗明でお送りいたします。さて吉宗さん、今年度の参加者についてどのように思いますか?』
『そうですね。今年は例年と違い上級者がいないため、いつになく下級の人も多く出場しています。そのため―――――――――――――― だと思います。』
出場選手に関する全体の批評を述べる吉宗さん。
『なるほど。あ、選手が全員そろったようですね。そろそろ結界が作動します。
この試合は下級が半分、中級が半分で上級は地球から参戦の1人だけとなっております。
勝者は8名までとなっておりますが、吉宗さん誰が上がってくるでしょうか?』
久留間の質問を受けて吉宗はまた長々と語る。
『――――――というわけで誰にでもチャンスはあると思います。日ごろの努力、
他の選手への対策、そして何より運が大きなファクターでしょう。』
しかし「結論としてはわからねぇ。運次第だ」と吉宗は語る。
『わかりました。ありがとうございます。選手の方ですが――――――1人だけ学生服の人がいますね。あれはどうしてなんでしょうか?魔法媒介も持っているようには見えませんが――――』
「大祐、今完全にお前のこと話してるよね、実況で。」
「うっさい黙れ!」
100人の選手の中から公式レベル2の俺をピンポイントで狙うか普通?優勝候補について話すだろ。
「いや、百人の中に1人だけ学ランがいたら注目するのも無理はないだろ。せめて上だけでも脱げばいいのに。」
誰も俺の味方をしてくれない。
会場の観客も実況を聞き俺に注目しているんだろうなぁ…泣きそう…
うちの学校の席では西川とかが爆笑しているのがわかる。
京子の家にお泊りしたと知らないからなんだろうけど。
「大祐の服装は置いておいて、上級をどうやって倒す気だ?」
Dが聞いてきた。
「さっきから観察してたけど、やつの魔力を見る限りのんびりしてたらやられることもありうる。だから試合開始と同時に『ロンギヌス』を使う」
はぁ~!?という顔をする部下たちと、よくわかっていない松田。
「なんだそれ?」「上級のオリジナルだろ?使えないはずじゃなかったか?」「マジか?」
「なんで君たちはいつも一斉に喋るかね。ちゃんと説明するから落ち着いて聞けよ。
時間もないし一気にいうから1度で覚えるように!」
『ロンギヌス』とは
1.俺が作った魔法で上級レベルの効果(オリジナルだから公式に上級と設定されてはいない)。当然、“宝具”の聖槍ロンギヌスとは全くの別物。名前が格好いいから使っただけ。
2.『今の俺』の魔力量ではほとんどの上級魔法が使えないが転移を始め一部使えるものはある(ただし魔力の大部分を使う。)
なぜこの試合で使うかは
1.上級相手に下級や中級魔法を使っても魔法障壁で防がれる可能性が高い。
2.複合魔法(魔法を融合させ別の魔法を作り出す)や多重魔法(複数の魔法を同時に使う)で
いけなくもないが相手にダメージを与えるには何度も使わなければいけなく時間はかかるし、結果としてロンギヌスと同じくらいの魔力量を使う。
3.ロンギヌスは詠唱に時間がかかるため1人では使えない。よってこの試合以外では使う
場面がない。複合や多重魔法は下級や中級の組み合わせなので詠唱破棄が可能。
よって他の試合でも使え、手札を晒したくない。
「以上です。OK?」
「「「「OK!!!!」」」」
「具体的な行動は、開始とともに俺は詠唱する。Dは女集め。
他は俺の護衛だ。OK?」
「「「OK!!!」」」「女集めってなんだ?」
松田だけ疑問を浮かべた。
『ではそろそろ時間ですね。』
久留間の声が聞こえる。
もう時間無いな。
「時間がないから詳しくは言えない。とにかく松田は護衛すればいいんだ。
それに集中!」
「わかった。」
松田が頷くと同時に久留間の声と
『今年最初の試合が―――』
試合のアナウンスの声が
「それでは、第一試合を始めたいと思います。準備はよろしいでしょうか。それでは行きます。――――――試合開始!!!」
『今始まりました!』
高らかに始まりを告げた。
試合が始まると俺はすぐに詠唱を開始した。
同時に俺の前方に魔法陣が地面と垂直になって現れる。
数は3つ、それぞれが重なり合うようにして存在している。
一方で他の参加者たちはどうしてるかというと俺たちから離れたところではさすが上級というべきか、ド派手にぶちかましまくっている!
後衛タイプなのであろう立派な装飾のついた杖からは強い魔力を感じる。
上級を先に潰そうと襲い掛かる連中を強力な魔法で吹っ飛ばす!
魔法使用後の隙をついて切りかかってくるやつと接近戦で対等にやりあう体術は
なかなかのものだ。
俺たちとは50メートルは離れているのでしばらくは大丈夫だと思うが、こっちはこっちで他の中級や下級に襲われている。
詠唱中の俺は完全に動けないのでただの的だが部下たちが上手く防いでくれている。
また松田に対処できそうな敵は松田の方に受け流し、メンドイ中級を自分に引き付けるようにAとXは戦っているようだ。
詠唱にかかる時間は約1分。
その間全く動けないので一人のときは使えないが今は仲間がいる。ありがたいことだ。
俺たちや上級の周り以外でも戦いが起きてるのでその流れ弾みたいのも結構飛んでくるがそれはエロ太が防いでくれている。
よく見るとDが遠くにいる。女集めに奔走しているようだ。
迫りくる攻撃をうまくかわし、俺好みの女に接近する。
そして弱い麻痺を付加させた双剣ツインファングで下級の女を切り付け麻痺させている。
もっとも中級や上級相手だとレジストされる麻痺だろうけど。
そして動けなくなった女を担いでこっちに戻ってきた。
詠唱もあと20秒ほど。3つの魔法陣が純白に輝いている。
上級のヤローは既に20人はぶっ飛ばしている。それも全部中級だ。
俺たちは下級を3人、中級を2人倒したところ。
そして今も俺の周りで5人ほどを相手にして戦っている。あ、今はDもここで敵と戦っている。
敵の5人は1つのチームみたいで敵同士には攻撃せず俺たちだけを攻撃してくる。
なのでDとエロ太が前衛をAと松田が後衛という形で戦っている。
迫る敵を前衛二人が受け止めその隙に松田が魔法を飛ばす!
敵から放たれる魔法は俺に届く前にAが対処してくれているようだ。
Dは下級のそこそこ可愛い女3人を摑まえ拘束しここに持ってきた。だからその仲間たちがこっちに向かってきている。
半分ほどは途中で違う敵に戦いを挑まれ足止めされていうが残りはこっちへもうすぐ来る。
が、俺ももうすぐ詠唱が終わる。間に合いそうだ。
「――貫くは闇、滅するは罪。汝聖者を裁きし槍よ、我が意を受けここある場所に具現せよ。」
同時に3つの魔法陣が1つになる。その中央からは魔法陣と同様に純白の槍が現れた。
槍から放たれる巨大な魔力に戦場の全員が動きを止めこちらを見る。
松田を含む誰もが驚愕している中、もともとこの魔法を知っている部下たちは
近くの敵が動きを止めた瞬間、倒してしまっている。
あとは俺の出す結果を見守るように動きを止めた。
上級は周りと同じく一瞬だけ動きを止め驚いたようだが、俺の視線と槍の穂先が自分を向いていることに気付いたのだろう。回避のために身体強化、防御のためにかなり強力な障壁を展開した。
さすがというべき切り替えの早さだった。
魔法陣と俺を中心に吹き荒れる凄まじい風、それに飛ばされないように松田が食いしばっているのがわかるが俺は無視してさらに魔力を込める。
徐々に強く発光する聖槍。
準備は完了した。
フィールドの端にいる俺と中央にいる敵はおよそ50メートルほど離れている。
そしてフィールドを囲む観客席では誰も声を発していない。いや、客席だけではなく実況や選手たちも動きを止めて静まり返っていた。
俺のほぼ全魔力が注がれひときわ強く槍が輝いた瞬間
「貫け!ロンギヌス!」
純白の聖槍が放たれる!
そのスピードと地面からは1メートル以上離れているのもかかわらず、その溢れる魔力だけで会場を抉り焼き焦がしているのを見て上級は『回避は不可能』と強化された知覚で認識。
結界をさらに5重に展開。
魔力を注ぐと同時に聖槍が直撃した!
「ぐおおおおおおああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
一瞬で結界すべてが壊され純白の輝きが迫る。
上級BM、マック=マックは即座に結界を再生する。
ロンギヌスの威力を上方修正し魔力の温存を考えればすぐにやられると判断。
手を突出し全魔力を結界に注入した。
しかし聖槍は止まらない。
全魔力を注入した結界は壊されはしないが徐々に押されている。
最初いたフィールドの中央からは押し出され30メートルは移動させられている。
「チィイ…クぅぅぅぅーーーーー…」
ついに会場の端にまで追い詰められた。足と背中は会場の結界に当たっておりそれに
支えられているような形だ。
未だにロンギヌスの威力は変わらない。対して徐々に魔力がなくなるマック=マック。
数秒の拮抗ののち結界にひびが入る。
1秒ごとにひびは増え大きくなる。
そしてパリィィィンという音とともに結界は消え去り、聖槍の輝きがマック=マックを消滅させ、そのまま会場を包む大結界に激突した。
「まっぶし~~~!でもこれで上級はやったなリーダー!ってさっそくお楽しみ中かよ。」
大結界に衝突した影響で聖槍は白く輝く大爆発を起こした。
そんな中、俺は捕えた女たちにキスをし性魔法で魔力を吸い上げている。
3人目の魔力をいただこうとしたとき、光が収まった。
「ぅぅ~まさかここまでとは……俺は大祐をなめてたぜって……何してんのお前!?」
女の子にキスしてる俺を見て松田が叫ぶ!
周りのやつはまだ光とロンギヌスの魔力にあてられて動けそうにない。
「性魔法で魔力をまきあげてる。サキュバスはセックスで精気を吸い取るっていうだろ?それの応用だ。」
ぐったりする女の子の口に舌を入れて口内を犯しながらモゴモゴ解説する。
「いやだからってなんで―――」
「掌で触れるだけでも吸い取れるんだけど効率が悪い。粘液接触が一番効率よく回収できる」
ホントは実際にエロい事するのが一番なんだけどな。さすがにここでやるわけにもいかないし。
なおも何か言おうとする松田にエロ太が話しかける。
「松田、そのくらいにしておけ!そろそろ周りが動くぞ!」
見るとどのチームも回復したようだ。
遠く離れたところでは今の隙に襲い掛かっているところもある。
そしてそれに気づいて慌てて応戦する人もいる。
ただし、俺たちの付近は俺の行動を見て動きを止めている。
その間に魔力を回収し、俺の魔力が半分ほど回復したところで女の子の魔力が尽きた。
そしてそのまま体を離すと行動不能とみなされた女の子は大結界から分離した膜に包まれ、結果外に運ばれた。
死ぬ以外にも行動不能とみなされれば途中でこのように負け扱いとなる。
死んだやつは会場内にそのままだが生きてる場合は結果外に運ばれて再生ののち帰ることになる。
「うっし、魔力は半分くらい回復した。そろそろやるぞ。」
呼びかけると同時に詠唱破棄で下級魔法アイスニードルをぶっ放す。
ボ~っとこっちを見てた5人に刺さり敗退だ。
「護衛はもういらないから好きにやれ。」
「「「了解」」」答えると同時に3人は周りでボケ~っとしてる連中に襲い掛かる。
「松田はついてこい。俺が前衛やるからお前は後衛をやって」
「お、おうわかった。」
俺は魔力消費を考慮し弱めに風のエンチャントを自分にかけ準備を整えると二人で近くの奴に襲い掛かった。