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11話 三坂さんとの初会話 (フラグは立ちません)

今日はエリア大会決勝の日だ。


 決勝と言っても勝者は一人じゃないし、1試合やって勝てばそれで次の大会に行けるんだ。華柳さん以外はみんなリラックスした状態で試合が来るのを待っていた。



「今日の応援はどれくらい来てくれるかな?三坂さんが来るならいいとこ見せなきゃな。」



 松田がニヤニヤしながら言えば池田先輩も



「俺の相手はレベル3だからな。接戦になると思う。だからこそ見てて面白い試合になるだろうし三坂さんのためにも負けられない。」


「2人ともホント、三坂さんのことでいっぱいですね。確かに綺麗でスタイル良くて、性格も良いらしいですけど。そういえば松田は一目惚れって言ってたけど、池田先輩はどういうとこに惹かれたんですか?」



 俺の質問に困った顔をする先輩。


 しかしすこし悩んだ後に話し始めてくれた。



「最初はちょっと良いな程度だったんだけどな。自分で言うのも何だけど俺はあまり女に困ることってなくてさ。だからいつものように声をかけたんだけど拒絶されてさ。ま、そんな人もたまにいるから方法を変えて口説いてみたんだけどそれでもダメでさ。」


「さすが三坂さん。俺の嫁。」



 松田の言葉は意図的に聞き流し俺と池田先輩は話を続ける。



「何をしても、どうしてもOKが貰えなくてさ。それでムキになって何としても口説き落としてやるって思って話しかけてるうちに人柄とか、性格っていうのかな。そういう部分に惹かれちゃっていつの間にか本気になってたよ。」



 照れてるのか鼻の頭をかきながら先輩は言う。



「へぇ…失礼なことですけど外見で判断してヤリたがってるだけだと思ってました。」



 ホントに失礼な言葉を聞いても怒らず苦笑いして



「まぁ、最初はそうだったから何とも言えないけどね。今は違うよ!外見が優れてる女ならいくらでもいるからね。俺たちの学年にも倉山っていうのがいるし。」


「知ってます。綺麗ですよね!遊んでるらしいですけど。」「そうそうそれで………」


「ちょっと俺も仲間に入れてくださいよ。てか大祐!お前は女に興味ないみたいこと言ってるけど睦美ちゃんにいいとこ見せたくないのか?」


「お、あの噂ホントなの!?三上先生が笹川とできてるって!」


「そんな噂あるんですか?知らなかった。」


「お前、あんな堂々と手を繋い歩いてたら噂になるに決まってるだろ。」


「手繋いで歩いてるのか!?松田、その話をもっと詳しく!」「言っときますけど俺は別に……」「笹川は黙ってろ。良いですか池田先輩実は………」



 こんな感じでずっと落ち着いた状態で会話をしていた。1人を除いて。






 今、俺たちがいるのは試合会場の選手の集合場所だ。昨日もされたが改めて今日の予定を話すために集められている。


 観客よりも早い時間に集合するように指示されたために、全校応援でどのくらいの人が来るのかは不明だ。

女子に人気の2人の先輩がいるために女の子はそこそこ来ると思われる。ただもしかしたら今日で華柳先輩のファンはいなくなるかもしれないけど。試合の勝ち負けよりも今の華柳さんのテンションがやばいからね…男らしくないというかなんというか…思ってた以上にメンタルが弱いらしい。


 あと、俺と同じクラスの連中はみんな来ると言っていた。なんせ俺と松田と2人も出場するからな。正直めんどそうなのもいたけど全員で行こうという流れには逆らえないだろう。


 睦美ちゃんも来るだろうけどしばらくちょっかい出すのはやめとこう。まさか他の学年でも噂になってるとは。

 




 …お、係員が入ってきた。また説明が始まるな。


 どうせ昨日と同じことを言うだけなんだろうに大変だなぁ…



 昨日聞かされた今日の予定やルールについてだが、今日は1対1の試合が15組分ある。バトルロイヤルのときは会場丸ごと使ってたが今日は結界の範囲を調整することで戦闘範囲を狭くするそうだ。1試合につき最大30分で、地球標準時で9時30分開始だから17時までだな。


 試合の組み合わせは既に決めてある。うちの学校の人はみんな昼からだ。


 松田が13時開始で、華柳さんが13時30分、俺が14時30分で池田先輩が15時30分だ。




 予想通り昨日と同じ解説があった後、俺たちは客席にいった。


 今日は休日で決勝戦という扱いなので今までよりかなりの人がいる。ところどころ大量の空席があるがそこはうちの学校のように団体での予約席なのだと思われる。



「うわ~すげぇ人がいるな。なんか緊張するかも。」


 

 あたりを見渡しながら松田が言う。



「確かに。予想以上の人だ。ドキドキしてきた。」


「こんなたくさんの人の前で俺は負けるのか…ハァ…」



 華柳先輩の言葉に対して俺たちは互いの顔を見合わせ無視することを確認し合った。


 池田先輩がこの日まで何とかして立ち直らせようとしたけど結局落ち込んだままだったそうだ。あまり強く言うと逆ギレするそうだし…そんなわけでムシムシっと。





 試合までは時間があるし暇だからどっかに俺好みの女の子がいないかな~と観察してると知ってる顔が何人かいた。

 


「あ、あそこ見てください!校長とか先生が何人かいませんか?」


「ホントだ。向こうもこっちに気付いたみたいだな。行ってみるか。」


「それなら荷物も持って行った方がよくないですか?たぶんあっちに座れとか言われると思いますし。」


「そうだな。じゃあ移動しよう。」





 鞄を持って先生たちのところへ向かってるけど、これが意外と遠い。大きな会場だから仕方ないんだけど。人も多いからすばやく移動できないしな。



 5分くらいかけてようやく目的地に到着っと。


 先生方に挨拶をして、体調とかを聞かれた後は池田先輩が代表して先生方と話している。睦美ちゃんとかはまだいないみたいだな。

 池田先輩が他の人について聞いてみると学生の引率で昼から来るそうだ。


 俺や松田と関わりのある先生はみんな引率側みたいなので俺たちは2人で少し離れて席に着いた。



「しっかし露骨に池田先輩贔屓なとこあるよな。」



 松田の視線の先には池田さんを囲んで話す先生方がいる。


「まあ、仕方ないさ。我が校は元々進学校とは名ばかりのところだったから。その分期待も大きいんだろ。なんたって池田さんは久しぶりの大器だし。」


「そうだけどね…」



 言いつつもちょっと不満そうな松田。



「それに俺たちにかけてくれた言葉も適当なものではなかったし良いじゃないか。あとは自分で結果を出して見せつけるしかないだろ。それに華柳先輩よりはマシだろ。」


「確かに。先生たちもなんて声をかけたらいいかわからない感じだったもんな。」


「そうだよ。そんなめんどいこと考えるよりことより可愛い女の子探そうぜ。視力強化してみろよ。あそこの可愛い女の子のパンツ見えてんぞ。あれ、たぶん紐だな。」


「マジで!?どこどこ?」



 さっきまでのことは簡単に忘れてパンツウォッチングに励む松田。第一試合はあと10分ほどで始まるからそれまで俺も一緒にスカートの中を観察することにした。







 やがて時間となり試合が始まる。


 第1試合、第2試合と順調に進んでいくが特筆すべきことはないな。今までと違って1対1だから下級が中級に勝つことなどなく、個人の実力がそのまま勝敗へとつながっている。


 中には派手に血が噴出する試合もあるが観客で具合の悪くなる人とかはいない。これは試合会場の結界によるものである。


 試合で用いられている結界はホントに優秀で、以前言ったように試合で傷ついたり死んだ人でさえも再生することができる。これが選手のための効果で、観客に対しては見る人に合わせてモザイクのようなものがかかるらしい。らしいというのは俺自身は視覚を阻害されたことがないからわからないんだ。

 

 観客の中には血を見るのがダメな人や中には幼い子供を連れてくる人もいる。そんな人が首を切断される場面を見たら大変なことになるだろうが、結界がその個人個人に合わせてモザイクをかけたり、あるいは完全に中の試合を見えなくしてしまうらしい。


 ホント凄い結界なんだ。なんとかして結界の解析をやってみたいな。





 結界に対する考察、試合観戦、スカートの中の確認、やるべきことは多く、充実した時間はあっという間に過ぎていく。基本的には松田と話していたが、時折先生方や先輩とも会話をしつつ時間は経つ。


 11時を過ぎたあたりから松田は緊張し始めたらしくソワソワし出した。


 そして現在は12時。


 昼休みは勝手にとれということで、試合は関係なく行われている。


 松田がついにスカート鑑賞にも熱が入らないくらい緊張し始めたころに学校の連中が来た。




 多い!めっちゃ多い!予想では半分くらい来ればいいかな程度だったがほとんど欠席なしの状態らしい。松田なんてもう泣きそうだ。


 クラスメイトの連中とあいさつをした後、西川と相談の上で寺島に松田を連れて行くよう頼んだ。寺島は最初、またからかうつもりかと勘繰ってきたけど松田の緊張っぷりを見て状況を悟ってくれたらしく、連れてってくれた。



「大祐大祐、あいつ大丈夫かな。死にそうなくらい緊張してたけど。」と、心配そうな顔をして西川が言う。



「寺島に頼んだから大丈夫だろう。恋愛感情抜きにしてもあいつは面倒見がいいしきっと落ち着かせてくれるさ。」



 本音としてはあいつらを二人きりにするのが面白いってだけなんだがな。


 西川もそこはわかってるらしくニヤリと笑った後は特に何も言わなかった。



「笹川~」と誰かが俺を呼んでいる。誰だろう?と思い振り向くと同じクラスのイケメングループの連中がいる。こいつらとは悪い仲じゃない。男同士ならどのグループとも割と話せるんだ俺は。



「どうしたマイク?」


「松田と華柳さんはやばい顔してたけどお前は大丈夫か?」



 こいつは室田マイク。日系と白人のハーフだ。イケメンだ。


 どうやら心配してくれたらしい。後ろのイケメンたちも心配そうな顔をしている。


 顔も良いし、性格も良いしでなんなんだこいつらは?だからモテるのか?なんて考えつつ心配してくれた友達に返事をする。



「俺は大丈夫。あの2人が心配で自分が落ち込むどころじゃないしな。」


「なら良いんだけどよ。松田はともかくあの華柳さんがあーなるくらいだからプレッシャーとかすごいのかと思って。」


「池田さんもそうだけどあの2人は三坂さん目当てだからな、本人の前で戦うとなるとビビるんじゃないか?俺は三坂さんを狙ってないし。」


「いや、でもお前は睦美ちゃん目当てだろ?」とマイクは言う。



 やっぱり本気で狙ってると思われてるのか。ちょっと自重しようと心に決めた。そしてこの話題をそらそうと



「そういえば睦美ちゃんは見たけど三坂さんは来てるのか?まだ見てないけど。あの人がいないなら2人もプレッシャーが減るだろうし。」 


「三坂さんならあそこにいるぞ。」



 マイクがさした方を見るとそこには三坂さんを中心に5人ほどの女子がいた。



「やっぱ三坂さんは断トツでカワイイな。は~ボクチンも運が良ければ今頃この大会の選手だったのに」


「周りの女も可愛いんだけどな。三坂さんはその中でも特別だな。」


「俺的には巨乳なのがポイントだ。」



 順番に西川、マイク、俺のセリフだ。俺の言葉を聞き何か引っかかったのかマイクが聞いてきた。



「あれ、笹川は睦美ちゃん派で三坂さん派じゃないだろ?」


「んー???????? なにその睦美ちゃん派って?」


「室田、こいつは睦美ちゃん派のことを知らないよ。てか睦美ちゃん派の人はこいつの前で睦美ちゃんの話あんまりしないから。」


「あ、そうか」とマイクは頷いた。


 俺も何となく話の展開は読めるけど…



「もしかして睦美ちゃんて俺が思っている以上にそんな人気あるの?」



 この質問には二人がしっかりと答えてくれた。


 男子学生の5割が三坂さん派。3割が睦美ちゃん。残りはその他。

 俺がちょっかいかけまっくてることを知らない人はいない。

 他の男子が睦美ちゃんにちょっかいかけたら本人に凄い怒られた。

 なので俺は睦美ちゃん派から相当妬まれている。

 教師の中でも睦美ちゃん狙いはそこそこいて俺は嫌われている。




 どんなラブコメだよ!と思い、俺は本気じゃないんだよと説明しようとしたとき、「すいませーん。ちょっといいですか~?」と声がした。


 今度は誰だよッたく!そう思い振り返ると三坂さんたちがいた。話しかけてきたのは三坂さんの友達だけど。


 マジでなんなのこの流れ?メンドイなぁ…



 話しかけてきた理由の要点をまとめると以下の感じだ。


 睦美ちゃん派の俺の大会出場動機は三坂さんと関係ないだろうからノーマークだったのに今の会話で三坂さんの名前が出てたから気になった。


 三坂さん的には誰とも付き合う気がない。先輩がしつこいから絶対無理だろう条件を出したのに勝ち残ってる人が4人もいる。ヤバい。


 なので俺に三坂さん狙いなのか優しい友達が確認した。


 という流れらしい。表情を観察していると、三坂さんは本気で恋愛そのものに興味がないというよりは、近寄ってくる男が煩わしいようだ。昔から男が寄ってくるからうれしいと思うより鬱陶しいんだろうな。

 そんな三坂さんを助けるため周りの女の子はなんとかしようとしているように見えて実は2人の先輩目当てで何とか引き離そうって考えのやつがいるな。


 三坂さんは頭も良い。どうやらそれらの裏もわかってるみたいだ。


 女の付き合いは大変だなぁっと思いながら適当に話してると西川とマイクが場を盛り上げて会場内のレストランで昼ご飯を一緒にすることになったらしい。

 明らかに三坂さん目当てだ。こういうやつらがいるから恋愛をしたくないんだろうきっと。


 ちなみに俺は三坂さんのことはどうでもいいと説明済みだ。

 

「俺は試合の準備があるからいいや。みんなで楽しんできて。」そう言うと、男の数が減り嬉しいんだろう西川とマイクは「そっか。頑張れよ!」と機嫌よさそうに言う。女子もイケメンで気の利く『マイク』と一緒で楽しいんだろうテンション高めだ。


 みんなでぞろぞろと移動した。




 ふぅ、やっと静かになったぞ。


 だいたいもう12時過ぎてるんだ。今からレストランなんて行ったら松田の試合が始まってしまう。


 俺は鞄からコンビニで買ったパンを取り出し食べることにした。


 俺の周りだが、みんな食事や買い物で出かけてるのか人が少ない。弁当を持ってきてる人もいるが普段俺が話す友達はここにはいないようだ。睦美ちゃんはいるけど女子と一緒に食べてるみたいだな。近づいたら仲間に入れてくれるだろうけど噂の話を聞いた今は自重中。



 そんなわけで一人でモグモグ昼食を食ってると“三坂さん”が隣に座ってきた。


 三坂さんが西川たちの視線を嫌がってたのに気づいてたんで何となくこうなる気がした俺は黙って三坂さんを見た、パンをモグモグしながら。


俺「(モグモグモグ)」


三坂「………」


俺「(モグモグ、ゴクン。ズズー)←牛乳をストローで吸ってる」


三坂「じーーーー」


俺「(ズズーー、ゴクン。) ふぅ~」


三坂「じーーーーー」



 見つめあう二人に対し周りの好奇と嫉妬の視線が痛くなってきたので聞いてみた。



「嫌がらせ?」


「そんなつもりないよ。」


「でも周りの視線がやばいよ。嫌がらせ?」


「そんなことないよ~」


 ニコッと可愛い顔で言うこの人を見て思う。


 結構“いい性格”してるなこいつ。



「ただね、西川君と室田君だっけ?露骨な視線が嫌で。その点笹川君はそういうのを感じなかったんで。それに今レストランに行ってたら同校の応援もできなくなるしね。」


「え?じゃあ何。俺もいやらしい視線で見たら立ち去ってくれる?」



 言って、制服の上からでもはっきりわかる胸部のふくらみをガン見する。



「今日のブラは赤だね。勝負下着でしょ?」


「残念違います。それよりそんな露骨に嫌がられると傷つくんだけど。」


「周りの視線を見てよ。泣きそうなんだけど。」



 客席に戻ってきた人もこっちを見てるのがわかる。俺の周りは人がいないからなおさら目立つんだろうなぁ…先生たちもこっち見てるし、睦美ちゃんたちも見てるし。池田先輩や松田たちがいないのが幸いだ。



「わかった?俺はひどい嫌がらせにあってるの。どっか行って。」


「拒否します。どこに座ろうと自由なはずです。それに仲良い人はみんなご飯に行ってるもの。」


「一人でいればいいでしょ。俺もさっきまでそうしてた。」


「一人でいたら下心丸出しの男が寄ってくる。」


「俺も下心丸出しだから。」


「わたしは昔から男に変な目で見られてたから、絶対とは言わないけどある程度下心あるかないかくらいわかります。」


「ホントだってエッチさせてくれるなら喜んでするよ。付き合いたいとは思わないけど。」


「うわ!?」



 汚いものを見るような目でこっちを見てくる。だったらさっさと離れろよな。



「さっさと離れろよな。」



 口に出して言ってみました。



「今のセクハラ発言はなかったことにしてあげる。優しいでしょわたし?お礼に少し話し相手になってもらうね。」


「なかったことにしなくていいから違うとこ行ってください。」


「そんなことよりさ、今日はいい天気だね。」



 そう言って空を見上げる。天井部分は現在開放されてるため雲一つない空がよく見える。



「なんで?なんで急に天気なの?この会話の流れで。もうめんどくせー。三坂めんどくせ。」



 こんなやつは、さん付けやめて呼び捨てにしてやる。



「まあまあ良いじゃない。もうすぐ松田君だっけ?の試合始まったら誰も気にしなくなるよ。ね?」



 可愛い顔で微笑みながら言う三坂に毒気を抜かれた俺はため息をついてもう諦めた。


 そんなわけで無視して携帯端末を開いた。横でごちゃごちゃ言ってるのを適当に受け答えし、他の会場の戦績を見てみる。

 どうやら他のエリアで戦ってるAもDもエロ太も無事世界大会本選へと出場できるらしい。

 情報ページの横にメール画面を開き3人にお祝いメッセージを書いてると



「あ、これうちのクラスの佐々門君だよね。勝ち上がったんだ。」



 俺の端末を覗き込みながら微妙にテンションが下がった顔をして言う三坂。顔を近づけないでほしい。視線がさらに痛いから。



「三坂はあいつと同じクラスだったか。でもなんでテンション下がってんの?あと顔が近いんですけど。」



 メールを打ちながら聞いてみた。



「だってあの人もなんか厭らしい感じで見てくるし。クラスの男子たちと話してて『俺は貧乳が好きだ』って言ってたのに運動のときとか私の胸見てくるし。私目当てで出場してるんだったら嫌だもん。あ、今の発言は他の人に言わないでよ。自分でも上から目線っぽくてダメかなって思うし。」


「あ~あいつは口ではなんだかんだ言うけど実際は可愛い子なら何でもイケる男だからな。あと顔が近いんですけど。」



 メール送信完了っと。



「ホントどうして男って胸ばっかり見るの?顔とかで判断するの?おかしいと思わない?」


「俺も巨乳が好きだぞ。E~Gカップが好みだ。巨乳なら性格は気にしない。顔が良ければ大丈夫。CやDカップの女の場合はその人次第だな。性格とかも判断材料になる。あと顔が近いんですけど。」



「ふーん」と言いながらジト目で見てくる。てか顔近いんですけど。この距離感で話されちゃ女に免疫ない奴はコロッと言っちゃうかもな。



「もてない男の簡単に惚れちゃう現象ってわかる?」


「何それ?」



 三坂はかわいらしく首をかしげて聞き返す。外見がいいのは得だよな。何をしてもよく見える。これがブスだったらとっくに殺意を覚えてるんだろうな。



「もてない男、特に童貞はね、ちょっと優しくされたりすると簡単に惚れちゃうの。普段女に相手にされない分、ちょっと優しくされたり必要以上に近い距離で会話しちゃうと惚れちゃうの。ひどい奴だと、『この女は僕が好きなのかも』って勘違いしちゃうの。女の子にとっては社交辞令やただのクセであっても勘違いしちゃうの。わかった?わかったら顔を離してください。」


「大丈夫だよ。私も処女だから。」


「違う!そこじゃない!俺の話聞いてた?どこに食いついてんの!?さっきからだけど初めて会話する人と話す内容じゃねぇよこれ~」



 おかしくね?前半しか聞いてなくね?あと、俺は童貞じゃないし。異世界でやりまくったもの!……………まあ、この世界では童貞だけど………





 なんか話に聞いてた『三坂さん』とここにいる『三坂』は違う。噂は当てにならん。



「冗談は置いといて、笹川君は私が近づいても自然体でしょ?だから大丈夫だよ。」


「それは俺が女慣れしてるからです。」



 なんせ魔王だった時は何人もの美女を常に侍らせてたからな。たとえどんな美女だろうと今さら緊張したり舞い上がったりすることなんて無いさ。


 しっかし試合前なのに精神的に疲れ切ってしまった。もうこれ以上は抵抗しないで気の済むようにさせてやろう。松田の試合もあと15分で始まるし。


 そんなわけでそこからは無駄な抵抗はやめて三坂に話を合わせておいた。その過程で三坂の名前が京子であることが判明し、以後京子と呼んでも良いそうだ。


 なお、お互いに恋愛感情はないことを明記しておく(俺の性欲は別です。)。

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