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9話 次の試合の組み合わせ

 試合終了のアナウンスの後、結界の修復機能が作動し会場と選手の再生が行われた。

 敗退者は泣く人、落ち込む人、来年こそは!と決意する人など様々であるが勝者となった俺たちは気分よく試合会場を引き上げる。


そして観客席に戻った後、松田を含めた4人で勝利を祝福しあった。


 松田と華柳先輩のテンションが尋常じゃないくらい高かったけどそれも仕方ないことだろうから無難に合わせておいた。


 正直なところ俺たちの勝利を予想していた人は誰もいなかったと思う。中級がいるチーム勝つか、下級の中での上位の選手が3人いるチームが勝つと予測されていたからだ。


 一通り喜んで落ち着いた頃に次の試合が始まった。





 6試合目、勝者は中級が1人に下級が2人となる。

 この勝者3人は1つのチームっぽかった。俺たちの試合を見て、下級が相手だからと言って嘗めてかかってはいけないと思ったらしく、実力のある連中は最初に逃げ回ってる人など確実に勝てる相手から潰していった。初めに打ち合わせでもしたのか、狙う相手がかち合うことなくスムーズに戦っていた。

 そして実力あるチームだけとなった段階で本格的にぶつかり合い最終的には一番チームワークの良いところが勝利した。



 7,8試合目はそもそも中級がいなかったので勝者は合わせて下級6人だ。



 9試合目の勝者は中級2人と下級1人。

 ここも同じチームの3人が勝ち上がった。


 そして最後を飾る10試合目がなんか凄かった!

 中級が5人で残りの25人が下級という試合だったんだけど、5対25で戦っていた。いや、見てる人は俺も含めビックリだったんだけど中級 vs 下級という試合になっていた。

 見た感じ今日初めて会ったと思われる人同士が上手くまとまり、見事に拮抗した試合となっていた。この試合の鍵を握っていたのは下級チームの指揮官の可愛い感じの女の子だ。


 普通なら5対25と人数に差があろうと、広範囲の攻撃方法を持つ中級が勝つのが当たり前だ。

 しかし学生っぽい女指揮官が上手く状況をコントロールし対抗して見せた。


 長い攻防の末、10人の下級の選手が残ったのだ。もちろん女の子も残っていた。そしてこの後は各チームに分かれ戦い最終的には優秀な指揮官のいるチームが勝利した!


 本来は個人戦なのにという突っ込みは置いといて、見事な指揮に会場の観客は惜しみない拍手を送った。

 もちろん俺も心を込めて拍手を送らせてもらったぞ。基本的には個人戦がメインな俺だから指揮のレベルは高くない。


 女の子(美咲ちゃんて名前)は初めて会った人に限定的とはいえチームを組むことを同意させ、さらにはそれらを上手くまとめ中級に打ち勝った。


 団体戦はそれほど得意じゃない俺にとっても学ぶことの多い試合だった!




 以上で2日間かけて行われた予選プログラムは終了したわけだけど勝者をまとめると下記のようになる。




 中級(レベル6) 1人 俺 (公式ではレベル2)


  (レベル4~5) 8人  ドゥークもここだ。


下級 (レベル3) 11人  池田先輩(3の上位)がここ 美咲ちゃんもここ(公式では)


   (レベル2) 7人  松田(2の平均)  華柳(2の上位)


   (レベル1) 3人




 このレベルは基礎能力で判定されるものだから戦いの上手い人や強い魔法式を持ってる人なんかは1、2段上のレベルのやつを倒せたりするけど、まあ それはどうでも良いな。


 問題なのはこの中から世界大会へ出場できるのは15人であり、そのためには次の1対1の試合で勝利しなければならないということだ。


 その試合の組み合わせを決める抽選がこれから行われる。



「やばい、緊張してきた。なんとしてもレベル1の3人の誰かと、百歩譲って同レベルの誰かと当ってほしい!」



 松田は両手を握って祈りまくっている。華柳さんはそれに同意しながら



「あ~確かに。ここから先は味方とかないからな。最悪中級とさえ当たらなきゃ何とかなる。池はどうだ?」


「俺も同じ意見だ。世界大会まで出場できればある程度の面目はたつしな。それに今回みたいに特殊な大会でなければ本選に出場するチャンスなんてなかなか無いしな。」


「例年は上級もいますし、そもそも今回みたいにバトルロイヤル形式なんてそんなにないですしね。1対1のトーナメント形式ならここまで下級が残ることなんてあり得ないですし。本来なら俺や大祐がエリア大会で勝つこと自体有り得ないですからね。……あーーーーーこのチャンスを逃したくなーーーーい!神様~!ヘルプミー!」



 暴走する松田を3人で苦笑しながら見る。


 気持ちはわかる。


 これを逃せば一生本選に出ることなんて無いというのは松田の実力から考えて事実だろうし。



「落ち着け松田。何とかなるさ。最近のお前はなんかついてるし!現にここまで勝ち抜いてるしな!」



 優しい俺が松田に声をかける。



「確かに運は良さげだけど~ってかなんでお前はそんな落ち着いてるんだ?」


「ここまで来たら慌てても仕方ないだろう。お、人が出てきた。そろそろ始まるな。」



 俺の言葉を聞いた3人が同じ方向を見る。主催者とアナウンスをしてたっぽい女の人が出てきた。後ろには箱を抱えたおっさんがいる。


 おそらくあの中にクジが入っているのだろう。


 三人が台に登ると台の後ろに名前の抜けた試合の組み合わせ表の立体映像が大きく浮かぶ。



「予選を勝ち抜いたみなさん、おめでとうございます。」と主催者がうんたらかんたらと述べ、次いで隣の女性が話し始めた。



「みなさん、次の試合の対戦相手を決める抽選を行います。くじを引く順番は予選の試合順となっております。また同試合の方の順番は登録番号順となります。それではさっそく1試合目の勝者三名から順に壇上に上がってください。」



 女性の声に促され並んで壇上に向かう選手たち。次々とくじを引いていくがスクリーン上にはまだ名前が出てこない。最後にまとめてわかるようだ。






 5分後、組み合わせが発表された。


 俺たちの結果は


 俺 VS レベル3の女子学生  荒川 美咲(指揮の上手かった人だ)


 池田 VS レベル3の男子学生 ケン=マクリファス


 松田 VS レベル1の男子学生 奥平 斗夢


 華柳 VS 毎度おなじみ中級のドゥーク・キサント



 となった。

 俺(念のためにそう見えるようにした)、池田先輩、松田もほっとして、特に松田は大喜びをしまくってたが華柳先輩の組み合わせがわかった途端、黙り込んだ。



「あぁぁぁぁぁぁっぁ…ドゥークとだぁ…………」



 4人の中でただ一人中級と戦うことになった華柳先輩はすんごい落ち込みまくっている。さすがの俺も直視できないくらいに落ち込んでる。


 池田先輩も松田もなんて声をかけたらいいかわからないようで黙っている。



「………ぅぅぅううう………松田~変わってくれ~………」


「え、いや~それは無理じゃないですかねぇ…もう決まっちゃいましたし。」


「あん!?てめぇ先輩に対して何だそれは?少しくらい気を使えや、コラ!鼻フックやんぞてめぇ」


 そう叫びながら指を松田の鼻の中に突っ込んだ。


 うわ~近づきたくねぇ。俺はちょっと離れていよう。



「ヤナ。もう決まった以上どうにもならんだろ。てかそんなとこに指突っ込んで汚くないか?」



 池田先輩の声を聴いて落ち着いたのか松田から離れる先輩、そして松田は赤くなった鼻を抑えて涙目になっている。


 微妙な空気が流れる中、次の試合の細かい説明が始まったのでとりあえずはみんなそっちを聞くことにした。






「はぁ…」


 説明が終わり、帰宅しようとしているが約1名がずっと溜め息をつきまくっているので気まずい空気が流れている。


 池田先輩が気を使って俺と松田に先に帰るように言ってくれたので俺たちは喜んで帰宅した。



「いや~先輩は気の毒だけど正直俺はすげぇ嬉しい。相手はレベル1の人だしおそらく本選への出場は確定したようなものだ。」


「確かに。もしかしたら松田は我が校始まって以来の現役での本選出場じゃねぇ?」


「だよねだよね。お前はどうだ?相手はあの可愛い女の子だよね?大丈夫そう?」



 一応聞いてくるもののおそらく松田の中では俺は負けるともっているんだと思う。



「相手はレベル3だけど華柳先輩よりはマシだろう。ドゥークと当ることを考えたら美咲ちゃんだったと思うけどあの娘と戦う方が楽だよ。」


「確かに。先輩尋常じゃなく落ち込んでたし。」



 こんな感じでグダグダ話ながら俺たちは帰宅していった。













 翌日、登校し教室へ入った途端、俺は殴り飛ばされた。いや、あまりにも急で回避しなかった。全力ではないというのも感じてたからとりあえず受け止めた。



「裏切り者~!ずるいぞおまえら~!」



 西川が割と本気めに叫んできた。忘れてるかもしれないが西川は地方大会で敗退したクラスメイトだ。


 周りを見ると松田や他の連中が苦笑してるのがわかる。



「三坂さんが~ボクチンの三坂さんがお前らに汚される!」



 涙目になってるのがちょっとキモかったので無視して自分の席に向かった。



「おっす!」


「おはよう。それとおめでとう!」「おめでとう~」


「ありがとう!でもまだ首都の本選に出場できるかはわからないけどな」


「でも、ここまで行くって凄いって!次の試合は土曜日だろう?俺見に行くから。」


「俺も行く」「私も行きたい。池田先輩も出場するんだよね?」「華柳先輩もでしょ。」「じゃあみんなで行かないか?」「いや、あんたとはいかないけど。うちらは女子で行くし」「なんで?」「だってあんたは・・・・・」



 こんな感じで俺と松田の周りにいろんな人、ギャル系とかオタク系も含めて普段は話さない人も集まってわいわい騒いでいる。



「マジで俺の華麗な活躍を見せたかったね。中級を含めた敵の攻撃を軽やかなステップでかわして「お前は逃げてただけだろ。」おいーーーーそういうことは言うなや!」


「はぁ、松田がここまで行けるならボクチンにも可能性があったのに…はぁ」



 松田の誇張話を訂正したり西川を慰めたりしているとクラスメイトの中でも割とよく話す女のグループが話しかけてきた。



「笹川おめでとう。凄いじゃん!地方大会で終わると思ってたのに予想と全然違う。」



 こいつは寺島 優香。可愛くもなくブスでもなく、スタイルも良くも悪くもない普通のやつだ。

 一般的にどこにでもあるようにうちのクラスにもグループがある。イケてる系、ギャル系、オタク系、真面目系、一匹オオカミ系、そして俺や寺島みたいなどれにもあてはまらない普通系。松田や西川もちょいオタクではあるがもっとディープな連中がいるので普通系だ。

 

 で普通系同士よく話す寺島はニヤニヤしながら話しかけてきた。


「本命は睦美ちゃんだと思ってたけど三坂さんだったんだ。あんた本気で三坂さんと付き合う気だから出場して、愛の力で勝ち残ったんでしょ?」



「いや俺は」



 三坂さんにはそれほど興味ないと言いかけたところで



「大祐~三坂さんと付き合うのは俺だ!そこだけは譲らん。」と松田が割り込んできた。



 それを聞き周りは勝手に盛り上がっている。


 あ~めんどいからしばらくは大人しくしていよう。


 周りの連中と松田はどんどん盛り上がっている。松田のやつ、自分がまだ一度もまともに戦っていないのを完全に忘れているな。あんまり大きなこと言って恥かいても知らんぞ。



「ご、ごめん。ここまで盛り上がるとは。」


「別にいいさ。気にしちゃいないよ。」


 

 珍しく素直に謝る寺島に対し手を振ってこたえる。

 そんなことよりも新しい魔法がなんかできないか端末をいじって試行錯誤しよう!そっちの方が有益な時間だ!、そう思い、鞄をあさる俺に対し寺島がまた話しかけてくる。



「でもあんたホントに三坂さんには興味ないの?」


「ないわけじゃないけど、この大会に出たのは無関係だな。」


「へ~」


「それに今の松田を見ると残念な奴にしか見えなくないか?」


「うん。可哀そうな人だよね。」


「あーはなりたくないし、積極的に付き合いたいとは思わないな。やれるならやるけど。」


「…………」


「ボクチンの三坂さーん」


「うるせぇぞ西川。お前は一人でへこんでろ。」



 知らない人が見れば寺島フラグが立ってるのかと思うかもしれないが、実はこいつは松田が好きなのを俺は、というより俺たちみんな知っている。

 三坂さんに夢中の松田を止めるかどうか悩むが、どうせ松田が本選優勝することはないだろうし、放置しておこう、面白いし。




「寺島寺島、松田には『三坂さんより私を見て』ってはっきり言わないと伝わらないぞ。」


「うるさい。」



 西川が殴られた。余計なこと言わないで正解だな。




 …さってと、担任の睦美ちゃんが来るまであと5分くらいある。


 俺は周りの喧騒を気にせずに静かに端末をいじることにした。


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