プロローグ
「オッス!おら魔王!いっちょ頑張るか!」
「死ね」
…あまりにひどいこの言葉。淀みまくった空気がドアの外まで感じられたから精一杯明るい感じを作って入室したのに…
「ちょっとひどくねぇ?俺はさぁ この切ない空気を「今ふざけてる場合じゃないのはわかるだろ」 あん!?てめっ誰に口聞いてんだ?」
「ストップ!いきなり喧嘩すんな。和也は少し落ち着いて。大祐も切ない空気を感じたなら冗談は控えてくれ」
A が生意気にも俺に言ってきやがった。もう一人注意された和也ことB はふてくされた顔をしている。
仕方ないな、大人な俺が合わせてやろう。
「んで、今日は何があったんだ?」
慈愛にあふれた笑顔でA にとりあえず聞いてみた。
「キモ! 実はジョニーがさ、いつもの連中に絡まれたみたいで」
「いや、絡まれたっつうか絡んだっつうか…」
Dが複雑そうな顔をして話しに入ってきたから、失礼なA をぶん殴ってからDに詳細を聞いてみた。
まとめるとC (通称ジョニー、本名 本庄 瞬)が曲がり角から出てきた奴とぶつかって切れて襲い掛かり返り討ちにされたと。
アホじゃねえか?
「アホじゃねえか?」
「アホじゃねえよ!この俺にぶつかってきたんだぞ!マジありえねえよ!本当ならぶっ殺してやるとこだぞ!」
近い近い顔が近い。C のやつ興奮してるからつばが飛んでるし。B もその時のこと思い出してんのかゆがんだ顔をしている。
「はぁ、んでぶっ殺そうとして返り討ちにあったんだべさ~。もうアホなことはやめようぜ。何回同じ事すれば気がすむんだ?」
ホント、こいつらは懲りないねぇ…これで6回目だぞ。いい加減現実を見ればいいのに。
「うるせえよ!なんで人間ごときに道を譲らなきゃなんねぇだ?本当の力があればあんな連中どうとでもできるのに」
「そうだ。俺たちから見れば弱すぎる連中に頭を下げるなんて御免だ」
Cが叫べばBもそれに続く。面倒な二人組っすよこいつらはホントに。AとDも溜め息をついてるし、Xも………Xはエロ本を読んでた(二次元的な女の子の)
仕方ない、ここは俺ががっつり言ってやるか。
「俺たちが魔王や魔人だったのは昔のことで今はもうただの人なんだぞ。いい加減過去の栄光的なものにすがるのはやめろって。現実を見なさいって」
途端に静かになりつつも不貞腐れた顔をするBとCを見てもう一つ溜め息を突く俺。
そう、ここにいるのはかつて魔王と呼ばれ世界を好き放題にしまくった俺こと、笹川 大祐。
そしてその眷属、一般に魔人と呼ばれた、Aたちなのである。
しかし悲しいかな現在はその力の大半を失った悲しい一般人な俺たちなのである。