『大好き』
「ノア!」
急に後ろから抱きつかれる。
「祭李!?急に飛びつくのは……!」
背後から突然抱きついてきた祭李に驚きつつ、なんとかバランスを崩さないように耐える。
「へへ……ノアが見えたから」
そう言って笑う祭李は、まるで子どものようだ。
「でも祭李、急に飛びつくのは危ないよ」
「渚莎まで……」
渚莎は軽く注意する程度で祭李に話しかける。すると少し落ち込んだかと思えばまたすぐいつもの調子に戻る。
「でもちゃんとノアが転ばないようにした!」
「それとこれとは話が別だよ」
俺は思わずそう言ってしまう。
「うん、それは別」
肯定するように、渚莎が呟く。すると祭李は、尚も俺に抱きついたまま声を上げて驚く。
「……渚莎、貴方の弟でしょう?」
助けを求めるように言ってみる。しかしすぐ横にいた渚莎も。
「そうだけど、僕ももう祭李に捕まってるし……」
諦めたかのように言う渚莎を知ってか知らずか、祭李が口を開く。
「へへー……オレ、二人とも大好き」
「「!」」
突然の言葉に少しだけ驚いて。
「……うん、僕も祭李のこと大好きだよ。……もちろん、ノアのことも」
渚莎は柔らかく笑ってそう返す。
「ノアは?」
祭李にそう聞かれて、少し考えてから。
「……俺も、祭李と渚莎のこと大好きですよ」
「やった」
俺と渚莎の返事を聞いて、祭李は嬉しそうにする。
「祭李嬉しそう」
「大好きって言ったら大好きって返ってきたから!」
あまりにも無邪気に言う祭李に、流石に少しだけ恥ずかしくなってくる。
「……ならいいけど」
渚莎は慣れているのか、あまり照れたような様子はない。
「ノア照れてる?」
「……見ないでください」
そう言って顔を背ける。
「えぇー見たい!」
そう言って頑張って見ようとしてくる祭李に少し困っていると。
「祭李、ノアを困らせない」
渚莎がそう言うと、ようやく俺達から離れた祭李。
ただその表情はどこか少し不満そうで、でも納得しているようにも見えて。
「んー……なら、しかたない……」
そう言って顔を上げた祭李は、その言葉とは裏腹にどこか楽しそうだった。
「……楽しそうだね、祭李」
「だってオレ、二人といられて本当に楽しいから」
渚莎の言葉にそう返す祭李は笑顔で。
その表情を見て、俺も渚莎もつられるように笑いあった。




