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蝶氷花_番外編

『大好き』

作者: 朝桜 雪
掲載日:2026/10/09

「ノア!」


 急に後ろから抱きつかれる。


「祭李!?急に飛びつくのは……!」


 背後から突然抱きついてきた祭李に驚きつつ、なんとかバランスを崩さないように耐える。


「へへ……ノアが見えたから」


 そう言って笑う祭李は、まるで子どものようだ。


「でも祭李、急に飛びつくのは危ないよ」

「渚莎まで……」


 渚莎は軽く注意する程度で祭李に話しかける。すると少し落ち込んだかと思えばまたすぐいつもの調子に戻る。


「でもちゃんとノアが転ばないようにした!」

「それとこれとは話が別だよ」


 俺は思わずそう言ってしまう。


「うん、それは別」


 肯定するように、渚莎が呟く。すると祭李は、尚も俺に抱きついたまま声を上げて驚く。


「……渚莎、貴方の弟でしょう?」


 助けを求めるように言ってみる。しかしすぐ横にいた渚莎も。


「そうだけど、僕ももう祭李に捕まってるし……」


 諦めたかのように言う渚莎を知ってか知らずか、祭李が口を開く。


「へへー……オレ、二人とも大好き」

「「!」」


 突然の言葉に少しだけ驚いて。


「……うん、僕も祭李のこと大好きだよ。……もちろん、ノアのことも」


 渚莎は柔らかく笑ってそう返す。


「ノアは?」


 祭李にそう聞かれて、少し考えてから。


「……俺も、祭李と渚莎のこと大好きですよ」

「やった」


 俺と渚莎の返事を聞いて、祭李は嬉しそうにする。


「祭李嬉しそう」

「大好きって言ったら大好きって返ってきたから!」


 あまりにも無邪気に言う祭李に、流石に少しだけ恥ずかしくなってくる。


「……ならいいけど」


 渚莎は慣れているのか、あまり照れたような様子はない。


「ノア照れてる?」

「……見ないでください」


 そう言って顔を背ける。


「えぇー見たい!」


 そう言って頑張って見ようとしてくる祭李に少し困っていると。


「祭李、ノアを困らせない」


 渚莎がそう言うと、ようやく俺達から離れた祭李。

 ただその表情はどこか少し不満そうで、でも納得しているようにも見えて。


「んー……なら、しかたない……」


 そう言って顔を上げた祭李は、その言葉とは裏腹にどこか楽しそうだった。


「……楽しそうだね、祭李」

「だってオレ、二人といられて本当に楽しいから」


 渚莎の言葉にそう返す祭李は笑顔で。

 その表情を見て、俺も渚莎もつられるように笑いあった。

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