6話
私は、討伐モンスターを収納した魔法袋を、素材買取場に持っていく。同時に、振込先のキャッシュカードと探索者証を提出する。
どういう仕組みなのか、魔法袋の中身を持ち出し時と比較して、犯罪が行われていないかどうかのチェックと、収納されているモンスターのチェックが行われるらしい。そして、それに伴って報酬が支払われる仕組みになっていた。また、そのまま中身のモンスター素材も回収されるので、モンスターの死体を一般人が何かに利用することはできない。モンスターの素材から武器や防具を作る場合は、WIOから素材を購入する必要があるようだ。まぁ私たちにはあまり関係の無い話だ。
暫く待つと、一緒に提出したキャッシュカードが出てくる。取引明細書を発行して中身を見てみると、報酬として約320万円が振り込まれていた。初めて見る金額に、キャッシュカードを持つ手が震える。
続いて探索者証を見ると、討伐スコアから7級まで一気に上がっていた。また、6級からは試験が必要なので、その試験の案内も同封されている。こういう所はペーパーの案内が来る辺りが、なんとも日本らしいという感じだ。
私はそれらを持ち、誰にも盗まれないようにこっそり魔法を使いながらアリサたちに合流する。
「いやー、めちゃくちゃ稼げたみたい」
そう言って取引明細書を見せると、三人はギョッとした。服や武器で日本円の感覚をなんとなく叩き込んだ三人には、それが如何に高額か理解できたらしい。
「う、嘘でしょ⋯⋯?あんな雑魚を倒したくらいでこんなに⋯⋯?」
「強さ的には下級魔物くらいでしたよね⋯⋯?元の世界なら、多分日本円で良くて2万円とかが適正価格のような⋯⋯」
「こっちの冒険者ギルドは羽振りが良いねぇ〜」
「まぁお金はあるに越したこと無いよね。悪いんだけど100万円はパーティの経費として買いたいのがあるから、残りを4等分して、50万円ずつくらいにしよう」
幾らかはパーティの資金として残しておき、残りを4等分する。といっても、まだ他3人の口座が無いので、いったん現金手渡しだ。
私以外の3人分⋯⋯150万円を手にした私は、その厚みに手が震えた。ひゃくまんえん、しゅごい⋯⋯こわい⋯⋯。
アリサたちは、1万円札をまじまじと眺め、首を傾げる。
「こんな紙切れがお金なんて、なんだか不思議だねぇ」
「偽物作り放題じゃない?」
「これ1枚で銀貨10枚分というのは、なんだか違和感ありますね」
「この紙束が金貨5枚分⋯⋯⋯⋯」
異世界は貨幣しか無く、紙幣は無かった。紙幣をお金として担保できる技術力と世界観じゃなかったからね。
要らない説明だが、異世界では、銅貨が10円くらい、銀貨が1000円くらい、金貨が10万円くらいの価値だ。だからアリサは、50枚の1万円札を持ってわなわなと震えているのだ。
私たちはその金を持って武器と防具を購入する。現代用の装備を持っておかないと、今後の活動に著しく支障が出るためである。
まずはアリサだ。
黒の上下防護服に、黒のプレートキャリアを装備。腰には念の為のハンドガンを1丁と、1本10万円するミドルクラスのロングソードに、同じく10万円のシールドを購入。グローブとブーツも、耐久性と機能性に優れた黒いものを購入し、装備は真っ黒な特殊部隊みたいな感じだ。シールドとロングソードだけが逆に違和感あって印象に残る。カッコイイ。
次にサーシャだ。
こちらも黒の上下防護服に、肘や膝などにプロテクターを装備。ヘルメットと盾に予算の殆どを支払い、後は自動小銃1丁とハンドガンを2丁。見た目は完全に警察の機動隊だ。サーシャはポジション的にもスキル的にも、近接戦闘させる訳にはいかないので、防御に専念しながら銃で牽制などしてもらう予定だ。万が一私たちに誤射したとしても、かすり傷すら付かないので問題ない。
セリナは、袖のない黒のレザーアーマーを装備。下半身も太ももまでしか裾のないものを選んでいる。肩、腹、脚が見える少しセクシーな装いだ。テーマとしては、「当たらなければどうということはない」だろうか。こんな装備が売ってることも中々信じ難い事実であるが。
防具が安かった分、ダガーナイフは良いものを購入した。セリナが値切ってみたところ、30万円で6本購入していた。1本8万はしたはずなんだが、どうしたんだろうか⋯⋯。
私は結局魔法使いから槍使いにジョブチェンジすることを決めた。セリナ同様、丈の短い防具をチョイスし——動きやすいからだ。肌を見せたいという気持ちは1ミリも無い——、槍は15万円する良い奴を購入した。後で全員の装備に、サーシャのバフ魔法をかけてもらうとしよう。
そんなこんなで私たちは、装備とAIドローンカメラを購入した。こうして準備が整った私たちは、遂に配信活動を開始することになる。




