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3話

 私たちは、役所の最寄り駅に併設されたショッピングモールに入った。


 ショッピングモールで、簡単に日本円の感覚を彼女たちに叩き込む。日用品の値段、化粧品の値段、服の値段など。そのどれもが異世界基準では破格の値段であることに、彼女たちは驚く。

 たとえば、異世界ではしっかりした作りの服は3ヶ月分の食費くらいは平気でする。日本円にすると10万円くらいか。だが、日本では数千円で買える。そういった感じで驚いているのだ。


「本当に別の世界なんですね⋯⋯こんなドレスみたいな服が、眠る羊亭の日替わり定食10回分で買えるなんて⋯⋯」

「今はお金無いから、この服買うのもやっとだけどね⋯⋯」


 何着か試着した結果、それぞれ気に入った服装を購入し、その服装に全員着替えた。


 結果的に、私たちは沢山の視線を浴びている。それはアリサ、サーシャ、セリナの異世界三人娘のビジュアルが良すぎることが原因だろう。現実離れした見目の良さに加え、地球のどの国籍にも無い、形容しがたい世界的なビジュアルを備えた彼女たちの姿は、見る者の目を奪ってしまうのだ。


 まず、視線を一番集めているのはアリサだ。腰まで伸びた赤いストレートの髪はそれだけで目を引く。白いオーバーサイズのシャツをラフに羽織り、その下には黒のクロップド丈のトップスを着ているため、全女性の憧れと言っても過言では無い、美しい腹筋が顕になっていた。さらにダークグリーンのカーゴパンツをゆるく履きこなしていて、全体のシルエットは無造作なのに、不思議と隙がない。歩き方ひとつとっても堂々としていて、まるでこの街全部が自分の庭みたいな顔をしているのだから、目立たないはずがない。


 その隣では、サーシャが少し控えめに歩いている。パステルパープルのボブヘアがふわりと揺れて、柔らかい雰囲気がそのまま形になったみたいだった。ベージュのゆるいニットカーディガンに、白いレースのブラウス、アイボリーのロングスカート。色合いもシルエットも全部が優しくて、見ているだけで安心する。本人もその通りの性格だから、余計に違和感がない。清楚が服を着て歩いている。


 反対側では、セリナが落ち着きなくきょろきょろしている。金髪をハーフアップにしているせいか、動くたびに毛先が軽く跳ねて、見ているこっちまで元気になる。薄水色のクロップドパーカーに黒のショートパンツ、白いニーハイソックスにスニーカー。いかにも動きやすそうな格好で、今にも走り出しそうな雰囲気だ。実際、気を抜くとすぐどこかへ行こうとするから油断できない。


 ⋯⋯で、私。


 白のフリルブラウスに黒のプリーツスカート、その上から薄手のパーカーを羽織る。足元はローファー。鏡で見たときは「普通に今どき(体感五年前だけど)の服だな」って思ったけど、三人と並ぶと、なんというか⋯⋯一番“現実側”にいる感じがする。実際、私はただの一般日本人だから仕方ないか。


 そう思いながら、私は少しだけ歩幅を揃えて、三人の隣に並んだ。


 次に武器屋や防具屋を見に行く。ダンジョン発生以降、ダンジョンの調査と内部のモンスター狩りを行う『探索者』用として、日本にも武器屋やら防具屋なんかが出来たのだ。私は産まれた時からダンジョンが当たり前にあったので、そこまで物珍しい感じはしないけど、大人の人は未だに物珍しそうに武器屋を見る人もいる。


「この鉄の棒?みたいなのはなんですか?」

「それは銃だね。結構強いし、一番ポピュラーな武器じゃないかな」


 武器屋には、剣や銃などの武器が飾られている。だいたいどこの武器屋でも、一番売れているのは自動小銃(アサルトライフル)だ。特に頑丈で整備性の高いやつが人気らしい。自動小銃(アサルトライフル)は取り扱いやすいし、火力も高い。銃弾が消耗品なのと、相性の良いスキル持ちが少ないので、強いモンスター相手には効きづらいのが玉に瑕である。

 武器は工場で大量生産出来るものはそこそこ安い。もちろん服よりは高いが、一つ一つ鍛冶師によって手造りされていた異世界産よりは安い。


 たとえば日本の武器メーカー大手のロングソードは1本5万円で買うことが出来る。2万円くらいのモデルもあるにはあるが、安すぎると怖いのでみんな5万円くらいのやつを買う。

 自動小銃(アサルトライフル)は販売できるモデルが限られているのもあるが、だいたい15万円〜30万円くらいだ。ただ銃弾が30発マガジンで5000円くらいはするので、バカみたいに撃っていると大赤字になる。厳しい世の中だ。

 後は日本刀も人気の高い武器だ。アニメみたいに使いこなしたいと、購入者も多い。のだが、実際は取り扱いが難しすぎて殆どの人が使いこなせない。切れ味の劣化が激しく継戦能力が低いことや、刀の振り方が悪く足を斬る人も割と多い。初心者は買わない方が身のためだ。その点、ロングソードは切れ味そこそこのデカい鈍器であることがままあるため、ロングソードの方がよっぽど使いやすいと言えるだろう。


 ちなみに勇者パーティのロールでいうと、私は勇者だが攻撃系魔法使いだ。アリサは、大盾とロングソードを使った近接アタッカー兼タンク。サーシャは補助魔法特化の魔法使いで、バッファー兼デバッファー兼ヒーラーである。セリナは二本のダガーナイフを持つ斥候役であり、守るより避ける方が適している相手の時は、アリサと交代して回避タンクを受け持つこともある。

 必然的に、アリサは盾とロングソード、鎧など。セリナはダガーナイフや軽そうな装備などを見ている。魔法の無いこの世界では、魔法使いの武器である杖や魔導書なんかは売っていない。せいぜいローブっぽいものが売ってるくらいだが、防具というより防寒具程度の力しか持たない。そのため、サーシャは武器屋防具屋では暇をしてしまうのが約束されていた。


  ま、何を買うにもまずはお金が必要だ。一旦家に帰り身支度を済ませ、早速ダンジョン探索へと洒落こもう。

 私たちは、再び人々の注目を集めながら、一度帰路へと着いた。

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